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第五章 弟子

第138話 今の状況、もしかして……

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「お礼、ですか?」

 思いもよらない言葉に、僕は師匠の方に顔を向けます。長い白銀色の髪をタラリと垂らし、ルビーのように綺麗な赤い瞳でこちらを見つめる師匠がそこにいました。

「今日、私のこと守ってくれたよね」

「……あ」

 脳裏によみがえる記憶。男性に背後から襲われそうになる師匠。師匠を抱きしめながら、師匠の杖で魔法を放つ僕。男性が気絶して……その後……その後……。

 なんと言いますか……うん……いろいろと危なかったですね。ハハハ。

「もし弟子君が守ってくれなかったら、私、殺されちゃってたかも」

「そう……なんですかね。師匠のことだから、返り討ちにできてたんじゃないですか?」

「ううん。あの時は、私も気が緩んじゃってたから。弟子君がいてくれて、守ってくれて、本当に嬉しかった」

 暗い部屋の中。ですが、師匠の笑顔は、はっきりと僕の目に映っています。思わず抱きしめたいと思ってしまうほどの輝きと美しさがそこにはありました。

「弟子君」

「はい」

「今日は、本当にありがとう」

「……はい」

 師匠の言葉に、僕はゆっくりと頷きます。自分は師匠を守ることができた。その事実に、今にも飛び上がってしまいそうです。もちろん、師匠と対等の存在になれたなんて思っているわけではありません。ですが、ほんの少し。ほんの少しだけ、僕は師匠に近づくことができたんじゃないか。そう思います。

 あれ?

 今の状況、もしかして……。

 告白のチャンスなのでは?
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