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第二章 郵便屋さん
第52話 バレた?
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「ん。ここは?」
あれから数時間後。不意に聞こえた小さな声に、僕は読んでいた本から顔を上げます。ベッドの上では、郵便屋さんがキョロキョロと視線をさまよわせていました。
「おはようございます」
「あ、弟子ちゃん。おはよう」
「おはようといっても、もう夜ですけどね」
僕は、窓の外に視線を映しました。日はすっかり落ち、空には月が昇っています。夜の闇を照らす月の光は、いつもよりも弱々しく見えました。
「夜……って、仕事!」
そう叫んで体を起こそうとする郵便屋さん。ですが、すぐに異変に気が付いたのでしょう。「あれ?」という間抜けな声が、部屋の中に小さく響きました。
「えっと……ボクの体、動かないんだけど」
「そりゃ、疲労回復の魔法を多用してたらそうなりますよ」
「……あ」
郵便屋さんは、ばつが悪そうに目をそらしました。口をモゴモゴと動かした後、誤魔化すように口角を上げます。
「バレた?」
「バレました」
師匠はこう語っていました。郵便屋さんは、疲労抑制の魔法を今日だけで四回使っていたと。そして、昨日や一昨日、それより前も連続して使用していたと。あまりに何度も使用していたせいで、一度魔法を使っただけでは、効果が感じられない体になってしまっていたと。
「弟子ちゃん、ごめんね」
「…………」
「本当に、ごめん」
「謝るのは、会社の人たちが先です」
つい一時間前、会社の職員さんが、大勢ここにやって来たのです。職員さんたちは、郵便屋さんに頼りすぎてしまっていたこと、そして、郵便屋さんが倒れる寸前であると気づけなかったことをとても後悔していました。中でも後輩さんは、よほど辛かったのか、涙をポロポロと流していました。
「郵便屋さんが酷使され続けてたっていうのは問題ですけど、自分の体をごまかしてまで仕事しちゃだめですよ。結局、いろんな人に心配かけちゃうんですから」
僕の言葉に、郵便屋さんの顔がグニャリと歪みます。そして、数秒後。三度目の「ごめん」がその口から飛び出したのでした。
あれから数時間後。不意に聞こえた小さな声に、僕は読んでいた本から顔を上げます。ベッドの上では、郵便屋さんがキョロキョロと視線をさまよわせていました。
「おはようございます」
「あ、弟子ちゃん。おはよう」
「おはようといっても、もう夜ですけどね」
僕は、窓の外に視線を映しました。日はすっかり落ち、空には月が昇っています。夜の闇を照らす月の光は、いつもよりも弱々しく見えました。
「夜……って、仕事!」
そう叫んで体を起こそうとする郵便屋さん。ですが、すぐに異変に気が付いたのでしょう。「あれ?」という間抜けな声が、部屋の中に小さく響きました。
「えっと……ボクの体、動かないんだけど」
「そりゃ、疲労回復の魔法を多用してたらそうなりますよ」
「……あ」
郵便屋さんは、ばつが悪そうに目をそらしました。口をモゴモゴと動かした後、誤魔化すように口角を上げます。
「バレた?」
「バレました」
師匠はこう語っていました。郵便屋さんは、疲労抑制の魔法を今日だけで四回使っていたと。そして、昨日や一昨日、それより前も連続して使用していたと。あまりに何度も使用していたせいで、一度魔法を使っただけでは、効果が感じられない体になってしまっていたと。
「弟子ちゃん、ごめんね」
「…………」
「本当に、ごめん」
「謝るのは、会社の人たちが先です」
つい一時間前、会社の職員さんが、大勢ここにやって来たのです。職員さんたちは、郵便屋さんに頼りすぎてしまっていたこと、そして、郵便屋さんが倒れる寸前であると気づけなかったことをとても後悔していました。中でも後輩さんは、よほど辛かったのか、涙をポロポロと流していました。
「郵便屋さんが酷使され続けてたっていうのは問題ですけど、自分の体をごまかしてまで仕事しちゃだめですよ。結局、いろんな人に心配かけちゃうんですから」
僕の言葉に、郵便屋さんの顔がグニャリと歪みます。そして、数秒後。三度目の「ごめん」がその口から飛び出したのでした。
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