5 / 164
第一章 森の魔女
第4話 今日はダラダラするって決めてたから!
しおりを挟む
「師匠、今日は仕事に行きましょうね」
師匠が二杯目の紅茶を飲み終えたタイミングを見計らい、僕はそう切り出しました。
「…………」
「師匠?」
一体どうしたというのでしょうか。師匠は、マグカップをじっと見つめながら固まってしまいました。数秒後、ゆっくり顔を上げたかと思うと、ぎこちない笑顔を僕に向けます。
「いやー。弟子君の入れてくれた紅茶、おいしかったよ。さすがだね」
「ああ、どうも。それで、仕事についてなんですが」
「今日はいい天気だね。お散歩日和だ」
窓の外に視線をやりながらそう告げる師匠。
…………何となく察しました。
「今日の仕事は」
「あ、でも、あえて二度寝をするのもいいなあ」
「…………」
「…………」
「仕事に行きますよ」
「やだ!」
そう叫びながら、師匠は、バンッと両手でテーブルを叩きました。ですが、相当勢いよく叩いたせいでしょう。次の瞬間には、両手をテーブルから離し、痛そうにヒラヒラと振り始めました。
「どうしてですか!?」
「今日はダラダラするって決めてたから!」
「ええ……」
師匠と出会って、呆れるということを何度経験してきたでしょうか。軽く百は超えているように思います。
「もう! そう言っていつも仕事さぼるじゃないですか。今日こそ行きますよ」
「やーだー」
「昨日の夜、役所から催促の手紙も来てるんです」
「それでもやだ」
顔を膨らませてプイッと横を向いてしまう師匠。なかなか折れてくれそうにありません。
…………はあ。
僕は、心の中で溜息をつきながら、ゆっくりと椅子から立ち上がりました。テーブルに片手をつきながら、自分の顔を、師匠の耳元に近づけます。師匠の花のように甘い香りが、僕の鼻腔をくすぐりました。
「師匠」
師匠にそっと耳打ちする僕。
「今回は、かなりの報酬が出るらしいですよ」
「よしやろう!」
そう宣言しながら、師匠はバッと立ち上がりました。僕に向けるその笑顔は、百点満点、いや、百二十点満点と評しても差し支えないでしょう。
そんな師匠を見ながら、僕はこう思うのでした。
ふっ、ちょろいですね。
師匠が二杯目の紅茶を飲み終えたタイミングを見計らい、僕はそう切り出しました。
「…………」
「師匠?」
一体どうしたというのでしょうか。師匠は、マグカップをじっと見つめながら固まってしまいました。数秒後、ゆっくり顔を上げたかと思うと、ぎこちない笑顔を僕に向けます。
「いやー。弟子君の入れてくれた紅茶、おいしかったよ。さすがだね」
「ああ、どうも。それで、仕事についてなんですが」
「今日はいい天気だね。お散歩日和だ」
窓の外に視線をやりながらそう告げる師匠。
…………何となく察しました。
「今日の仕事は」
「あ、でも、あえて二度寝をするのもいいなあ」
「…………」
「…………」
「仕事に行きますよ」
「やだ!」
そう叫びながら、師匠は、バンッと両手でテーブルを叩きました。ですが、相当勢いよく叩いたせいでしょう。次の瞬間には、両手をテーブルから離し、痛そうにヒラヒラと振り始めました。
「どうしてですか!?」
「今日はダラダラするって決めてたから!」
「ええ……」
師匠と出会って、呆れるということを何度経験してきたでしょうか。軽く百は超えているように思います。
「もう! そう言っていつも仕事さぼるじゃないですか。今日こそ行きますよ」
「やーだー」
「昨日の夜、役所から催促の手紙も来てるんです」
「それでもやだ」
顔を膨らませてプイッと横を向いてしまう師匠。なかなか折れてくれそうにありません。
…………はあ。
僕は、心の中で溜息をつきながら、ゆっくりと椅子から立ち上がりました。テーブルに片手をつきながら、自分の顔を、師匠の耳元に近づけます。師匠の花のように甘い香りが、僕の鼻腔をくすぐりました。
「師匠」
師匠にそっと耳打ちする僕。
「今回は、かなりの報酬が出るらしいですよ」
「よしやろう!」
そう宣言しながら、師匠はバッと立ち上がりました。僕に向けるその笑顔は、百点満点、いや、百二十点満点と評しても差し支えないでしょう。
そんな師匠を見ながら、僕はこう思うのでした。
ふっ、ちょろいですね。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる