転生令嬢は騎士からの愛に気付かない

第二章

(23)※

　顔を上げたときには、再びぎらぎらとした獣のような目で見つめられて。
　アシュリーは、ぶつけられる熱情をすべて正面から受け止めることになった。

「ゃっ……まっ、て、ヴィルヘルムさまっ……両方だめ、だからぁ……っ」

　腰を揺らされると、湧き上がる体温に翻弄される。
　それだけでなく、無防備な花芽を指で撫でられ、内側と外側両方からもたらされる刺激に、アシュリーは悲鳴を上げた。
　首を左右に振り、しがみついていた腕を解いてヴィルヘルムの体を突き放そうとする。
　だが、離れるどころかヴィルヘルムはしっかりとアシュリーの足を掴むと、追い詰めるように抽送を早めた。

「あっあ、ぁ……っ、も……だめぇっ」
「……ああ、駄目になったあなたを、俺に見せて」
「っぁ……や……あ、ぁんん──っ」

　至近距離で囁かれ、奥を穿たれるのと同時に花芽を押し潰されて、堪え切れない快楽にアシュリーは達した。
　視界が真っ白に塗り潰され、体がびくびくと震える。

「く……っ」

　胎内を突き上げる雄芯を不可抗力で締め付けてしまい、ヴィルヘルムが苦しそうに低い声で唸る。
　そのまま何度か腰を揺らすと、ヴィルヘルムは吐精する直前で雄芯を引き抜き、アシュリーの腹の上に熱を吐き出した。
　お互いの荒い呼吸が、静かな室内に響く。
　一足早く息が落ち着き始めたヴィルヘルムが足を掴んでいた手を外すと、彼は目の前に広がる光景に生唾を飲み込んだ。
　そして奥歯を噛み締めてそっと視線を逸らすと、一先ずシーツの汚れていない場所で、アシュリーの肌を汚している白濁を拭き取り始めた。
　だが達したばかりで敏感になったアシュリーの体は、それを快感として変換させてしまう。

「……ふ、ぁ……や、ぁ……っ」
「っすまない、我慢してくれ」

　そう口にするヴィルヘルムの方が苦しそうに見えて、アシュリーは必死に声を押し殺す。
　腹部を辿り、胸元をシーツが滑る。首元まで汚した白濁を拭い取られ、他意はないとわかっていても体が震えた。
　一通り彼女の肌を綺麗にしたヴィルヘルムが、大きく息を吐く。
　彼は優しい手つきでアシュリーの額に張り付いた髪を払うと、そのまま輪郭をなぞり、頬を撫でた。
　労わるようにくちびるが触れて、くっつくだけの口付けをされる。
　体は疲労感を訴えているし、腰から下には何とも言えない違和感が残っているけれど、抱き締められて感じる体温がひどく心地よく、そして触れ合わせた口付けの気持ち良さに、アシュリーはヴィルヘルムに自らもくちびるを寄せた。
　唾液が絡み合う水音が、お互いの鼓膜を揺らす。

「……ヴィルヘルムさま、にキスされるの……好きです。気持ち、いい」

　戯れのように触れるだけのキスを重ねながら、アシュリーはふわふわとした頭に浮かんだ言葉をそのまま口にした。
　──初めてを好きな人に捧げることができて、強引なところもあったけれど優しくしてもらえて、その上こんなにも甘やかしてもらえている。
　こんなに幸せなことは、きっともうないだろう。
　そう思うと胸がきゅう、と締め付けられるように苦しくなって、目を逸らすために、アシュリーはヴィルヘルムに体を擦り寄せた。

「え……？」

　すると、腹のあたりに何やら硬くて……熱いものが触れる感覚がする。ヴィルヘルムを見つめると、彼は目尻を赤らめ、気まずそうに視線を外した。

「……っあ、あの、えーと……！」

　それが先ほどまで自身の中を掻き混ぜていたモノだとアシュリーが気付くのに、そう時間はかからなかった。