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第二章
(20)※
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内壁を擦り上げられて、アシュリーに感じたことのないものが生まれ始めてくる。
お腹の奥が熱く、苦しくて、どこかむず痒いような感覚。
「やっ……あっぁあ!」
ヴィルヘルムの指が、内側を撫でる。それだけではなく蜜を纏わせた親指で花芽を押し潰されると、アシュリーは腰を震わせた。
新たな蜜が溢れて、内側を擦られるたびにくちゅくちゅと止まない水音が響き渡る。
「ん……ぁん、ん……っ」
いつの間にか一本だけだった指が二本、三本と増やされて、狭い中を広げるように慣らされる。
弱まるどころか襲ってくる愉悦は増すばかりで、ヴィルヘルムも攻めの手を緩めるつもりはないらしい。
「あ……ぁ……っだ、め……っ頭のなか、溶けちゃうからぁ……っ」
内側を撫でる動きに、違和感以外のものを感じてしまう。強弱をつけて擦られた花芽から快楽を拾い、アシュリーは思わず悲鳴を上げた。
「……そのまま溶けて、俺のことだけ感じて、俺がいなければだめになってしまえばいい」
熱烈な言葉に、上目遣いに向けられる熱い視線に、アシュリーの胸がどくんと高鳴る。
──こんな気持ちは知りたくなかった。一夜だけでなくて、ずっとこの人に愛されたいなんて、こんな気持ちは、知らない方が良かった。
想いを寄せていた人に抱かれる幸せと、今夜が過ぎたら終わってしまう関係に対する悲しさが綯い交ぜになった涙が新たに零れ落ちる。
涙を零したアシュリーを見て目を見開いたヴィルヘルムに、腕を伸ばす。
「好き、です。ずっと、好きでした、ヴィルヘルム、さま」
「……ッ」
──わたしは今、きちんと笑えているだろうか。
偽りの姿だったとしても、彼にとってはたった一夜の戯れなのだとしても……せめて今が幸せなのだと言うことは、きちんと伝えたかった。
「あ……や、んんっ」
言いたいことを伝えて少しだけ満足したアシュリーとは反対に、ヴィルヘルムは表情を険しくする。そして彼女の中に収めていた指を引き抜いた。
喪失感に声を漏らしたアシュリーだったが、直後に伸びてきた逞しい腕の温もりにはっと息を飲んだ。
「そんな顔で好きだと……言わないでくれ。俺はそんな顔が見たいわけじゃない」
「ぁ……ご、ごめんなさい、わたし……」
耳元に落ちた囁きは僅かに震えていた。その声に、アシュリーは少しだけ理性を取り戻す。
自分から強請ってこの状況に持ち込んだ。泣きながら好きだと言うなんて、一夜で終わらせない、面倒くさい女だと言っているようなものではないか。
未練を明日には残してはいけない。この夜が終われば、《シェリー》はいなくなり、《アシュリー》とヴィルヘルムの関係は、図書館司書と騎士団副団長という元のものに戻るだけだ。
くちびるをそっと噛む。アシュリーはなるべく明るい声を装って、口を開いた。
「……ごめんなさい、ヴィルヘルム様。わたくしの言葉はすべて、今だけの言葉だと流してください。明日にはもう、あなたの前には現れませ──っ」
言葉を遮るようにヴィルヘルムにくちびるを塞がれ、アシュリーは目を見開いた。
触れるだけの口付けのあと、深い紫色の瞳と目が合い、悲しそうに歪んだその目にアシュリーの胸がちくりと痛んだ。
「あなたに、そんな悲しい顔をさせたかったわけじゃない。──俺は、自分らしくないことをするぐらいには、あなたのことを……想っている」
どくん、と胸が高鳴る。
「だが……すまない。あなたが望んでも、俺はあなたを離すつもりはない。今夜だけになど、させない」
上半身を起こしたヴィルヘルムが獰猛な雄の色を浮かべて、アシュリーを見つめてくる。向けられた瞳の熱に下腹部が疼いた。
「あなたが欲しい」
真っ直ぐな視線がアシュリーを射抜く。
掠れた声で告げられた言葉に、彼女は迷うことなく頷いた。
お腹の奥が熱く、苦しくて、どこかむず痒いような感覚。
「やっ……あっぁあ!」
ヴィルヘルムの指が、内側を撫でる。それだけではなく蜜を纏わせた親指で花芽を押し潰されると、アシュリーは腰を震わせた。
新たな蜜が溢れて、内側を擦られるたびにくちゅくちゅと止まない水音が響き渡る。
「ん……ぁん、ん……っ」
いつの間にか一本だけだった指が二本、三本と増やされて、狭い中を広げるように慣らされる。
弱まるどころか襲ってくる愉悦は増すばかりで、ヴィルヘルムも攻めの手を緩めるつもりはないらしい。
「あ……ぁ……っだ、め……っ頭のなか、溶けちゃうからぁ……っ」
内側を撫でる動きに、違和感以外のものを感じてしまう。強弱をつけて擦られた花芽から快楽を拾い、アシュリーは思わず悲鳴を上げた。
「……そのまま溶けて、俺のことだけ感じて、俺がいなければだめになってしまえばいい」
熱烈な言葉に、上目遣いに向けられる熱い視線に、アシュリーの胸がどくんと高鳴る。
──こんな気持ちは知りたくなかった。一夜だけでなくて、ずっとこの人に愛されたいなんて、こんな気持ちは、知らない方が良かった。
想いを寄せていた人に抱かれる幸せと、今夜が過ぎたら終わってしまう関係に対する悲しさが綯い交ぜになった涙が新たに零れ落ちる。
涙を零したアシュリーを見て目を見開いたヴィルヘルムに、腕を伸ばす。
「好き、です。ずっと、好きでした、ヴィルヘルム、さま」
「……ッ」
──わたしは今、きちんと笑えているだろうか。
偽りの姿だったとしても、彼にとってはたった一夜の戯れなのだとしても……せめて今が幸せなのだと言うことは、きちんと伝えたかった。
「あ……や、んんっ」
言いたいことを伝えて少しだけ満足したアシュリーとは反対に、ヴィルヘルムは表情を険しくする。そして彼女の中に収めていた指を引き抜いた。
喪失感に声を漏らしたアシュリーだったが、直後に伸びてきた逞しい腕の温もりにはっと息を飲んだ。
「そんな顔で好きだと……言わないでくれ。俺はそんな顔が見たいわけじゃない」
「ぁ……ご、ごめんなさい、わたし……」
耳元に落ちた囁きは僅かに震えていた。その声に、アシュリーは少しだけ理性を取り戻す。
自分から強請ってこの状況に持ち込んだ。泣きながら好きだと言うなんて、一夜で終わらせない、面倒くさい女だと言っているようなものではないか。
未練を明日には残してはいけない。この夜が終われば、《シェリー》はいなくなり、《アシュリー》とヴィルヘルムの関係は、図書館司書と騎士団副団長という元のものに戻るだけだ。
くちびるをそっと噛む。アシュリーはなるべく明るい声を装って、口を開いた。
「……ごめんなさい、ヴィルヘルム様。わたくしの言葉はすべて、今だけの言葉だと流してください。明日にはもう、あなたの前には現れませ──っ」
言葉を遮るようにヴィルヘルムにくちびるを塞がれ、アシュリーは目を見開いた。
触れるだけの口付けのあと、深い紫色の瞳と目が合い、悲しそうに歪んだその目にアシュリーの胸がちくりと痛んだ。
「あなたに、そんな悲しい顔をさせたかったわけじゃない。──俺は、自分らしくないことをするぐらいには、あなたのことを……想っている」
どくん、と胸が高鳴る。
「だが……すまない。あなたが望んでも、俺はあなたを離すつもりはない。今夜だけになど、させない」
上半身を起こしたヴィルヘルムが獰猛な雄の色を浮かべて、アシュリーを見つめてくる。向けられた瞳の熱に下腹部が疼いた。
「あなたが欲しい」
真っ直ぐな視線がアシュリーを射抜く。
掠れた声で告げられた言葉に、彼女は迷うことなく頷いた。
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