ほどけるくらい、愛して

上原緒弥

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本編

後編(01)※

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 玄関で散々その甘いくちびるを堪能して、彩瑛の思考力を奪ってからギルベルトは彼女をベッドへと運んだ。その細身の体からは想像できなかったが、彼は軽々と彩瑛を運んでしまう。
 優しく彩瑛をベッドに横たえると、その上に覆い被さり、ギルベルトは彩瑛に口付けた。
 何度も、触れるだけの口付けを繰り返す。
 先ほど舌を絡めるようにキスをしたときはひどく厭らしい顔をしていたのに、啄むように優しく口付けると、彩瑛は嬉しそうな顔をする。もしかしたら無意識なのかもしれないが、強請るような素振りすらされて、その期待に応えたくなってしまう。
 お仕置きを兼ねるつもりだったのに、却ってギルベルトの方が煽られていた。

「……僕の理性をこんなに壊すのは、サエだけだよ」
「ぁ、ん」

 囁いて、ギルベルトは露わになっている彩瑛の首筋に口付けた。彩瑛の口から甘い吐息が零れて、暗い室内に溶けていく。
 手のひらを彩瑛の体のラインに沿って這わせ、お腹のあたりでその手を止めると、引っかかった布地にギルベルトは指をかける。そのまま裾を捲り上げ、晒された白い肌に、そっと指先を滑らせた。
 そして胸元を覆っているそれに指を掛けようとしたとき、彩瑛が我に返り、その行動を止めようとする。

「っギ、ルベルトさま、待って……! 汗、掻いてるから、お風呂──」
「待てないし、お風呂ならあとで一緒に入ってあげる」

 彩瑛の言葉を一蹴して、ギルベルトは躊躇なく胸を隠している下着に手をかける。上に引っ張ると、柔らかなふくらみが零れ出た。
 その片方に顔を寄せ、優しく口付ける。そしてもう一方のふくらみに手のひらを這わせると、そっと手のひらに力を入れた。

「ぁ……ん、あっ」

 快楽から逃げようとする彩瑛を押さえつけながら真っ白い乳房を愛撫していると、先端で色づいている突起がだんだんと固くなってくる。彼女が目を閉じてしまったのをいいことに、ギルベルトはそこにくちびるを寄せ、吸い付いた。

「ひっ……ぁ……や、ぁあ……!」

 もう片方のふくらみの先端は指先で戯れのように触れながら、ギルベルトは視線だけを上に向けた。
 明かりは落とされていても、カーテンから入り込む月の光で彩瑛の表情が見える。
 上気した頬、潤んだ瞳、僅かに開いた口からは淫らな吐息が零れ出ている。
 抵抗しようと伸ばされた彩瑛の腕をベッドに縫いつけて、ギルベルトは指先での愛撫は続けながら、彼女のくちびるを己のそれで塞いだ。

「ん……ふ、ぁ……んん」

 快楽から逃げ出そうとしても、ベッドに押さえつけられていて、彩瑛は動けない。ギルベルトの細い指先が乳房を愛撫するたびに、その淫靡さに熱が増していくばかりだ。

「サエ……」

 吐息混じりの気怠げな声がたまらなく艶っぽい。
 それだけでも体は反応してしまうというのに。

 ──ギルベルト様のスーツ姿なんて、卑怯すぎるからぁ……!

 ギルベルトからの愛撫に翻弄されながら、彩瑛は視界の端に映る彼の格好に胸を高鳴らせた。
 彩瑛が知るギルベルトは、基本的にはいつも黒い外衣を着て、顔をあまり見せないようにしていた。けれど今の彼は、この世界にいるのにおかしくない、スーツ姿だ。しかも顔を隠すフードはなく、素顔を晒している。
 しかもその表情はいつもよりも熱を帯び、その目は獲物を狙う肉食獣のように彩瑛を見つめていた。前髪が乱れて両目ともしっかりと見え──そこには劣情が孕んでいて、彩瑛のお腹の奥がずくりと疼く。

「……そんなに僕の顔、好き?」
「ちがっ……ぁんんっ……!」

 反射的に否定してしまったら、指先が触れている胸の突起を爪の先で引っかかれる。背筋がぞくぞくと震えた。

「いいよ、隠さなくても。確か、サエの好きなげーむ? の登場人物に似てるんだっけ」
「ぇ、な、なんで……」
「あれから僕以外の男の前で、お酒は飲んでないよね?」
「飲んでない、ですけど……っもし、かして」

 まだあちらの世界にいたとき、一度だけふたりで夕食を取ったことがある。
 そのときにお酒も一緒に飲んだのだが、実は彩瑛にはそのときの記憶があやふやだった。後日ギルベルトに謝罪と、変なことを口走っていないか確認したが、彼は「何もなかった」と首を横に振っただけだった。
 だがどうやらギルベルトの口振りだと、そのときに口を滑らせて、言ってしまったらしい。彩瑛がプレイしていたゲームの好きなキャラクターに彼が似ていたことを。もしかしたら、異世界から来たということもそのときに口走ってしまったのかもしれない。

「ならこれからも、僕以外の前では飲んだらだめだよ。嗜み程度ならいいけど、それ以上飲んだら……お仕置きね」
「んっ……」

 胸元に口付けられたかと思えば、ちくっとした痛みが走る。困惑した目でギルベルトを見れば、「サエが僕のものだっていう印だよ」と胸元を撫でられた。
 そのままくちびるを奪われて、その気持ちよさに気が緩んだ隙にギルベルトの舌が彩瑛の口内に入り込み、舌が触れ合う。お互いの唾液が混じり、室内に水音が響いた。
 くちびるが離れると、銀色の糸がふたりを繋いだ。

「用意ができたらちゃんと求婚するから、それまでの虫除け」
「むし、よけ……?」
「ん、でもその話はまた今度」

 するりとストッキング越しに太股を撫でられ、持ち上げられる。身動ぎしたときにスカートが捲り上がってしまったらしく、膝丈だったそれは太股の半ばぐらいまで上がっていた。
 口付けで蕩けた思考でも直さなければと思えるのに、体は言うことを聞いてくれない。頭上で纏められていた腕の拘束は、いつの間にか解かれている。
 太股を撫でていたギルベルトの手が足の付け根に入り込んでくる。

「や……っ」

 声を上げたけれど、ギルベルトの動きは止まらない。指先が割れ目をそっとなぞる。そこは彩瑛自身も気付くぐらい、溢れた蜜で濡れていた。

「……ごめん、サエ。この生地破るよ」

 彩瑛が反応する間もなく、ギルベルトはストッキングに爪を立てて傷を付ける。裂けるような音がして、それから素肌に彼の手が触れた。
 次いで、薄い生地のなくなった足の付け根を指先が撫でる。下着越しとは言え、先ほどよりも鮮明に濡れていることを知られてしまい、彩瑛はギルベルトの顔が見られない。
 足の間の割れ目に触れられるたびに、お腹の奥の疼きが増していく。生理的な涙が目尻を流れ、シーツに落ちていった。ギルベルトは、彩瑛の溢れた涙をくちびるで吸い取って、宥めるように目尻にキスを落とす。

「ギルベルト、さま」
「ギルでいいよ。サエにはそう、呼んで欲しい」
「……ギル」
「ん。……続けていい?」
「は、い」

 彩瑛の返事にギルベルトは僅かに表情を緩めた。
 そしてギルベルトは裂いたストッキングの間から指先を侵入させると、下着のクロッチの部分から指を差し入れ、直にその場所に触れた。

「あ、んんっ」

 入り口を撫でられているだけなのに、くちゅり、と淫靡な水音がする。撫でられるたびに溢れる蜜が増し、下腹部の熱も引くどころか増していくばかりだ。

「っギ、ル、そこ、だめぇっ……」

 あわいを撫でていたギルベルトの指先が花芽に触れ、彩瑛は思わず声を上げた。擦られると何とも言えない感覚がせり上がってくる。
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