それからの日々は絶望?

ふら(鳥羽風来)

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2.混沌

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家には、冷蔵庫の中に食料は残っている。インスタントのラーメンや缶詰めもある。しかし、長くもって四日で尽きてしまうだろう。それまでに何とかしないといけない。

 まずは、近くのコンビニへ行った。買えるものが無かったので、その次に近いスーパーへ行った。そのあと、スーパーやコンビニやドラッグストアを十件以上回ったけれど、食料は手に入らない。弁当を作っている工場があるので、そこへもダメ元で行ってみた。結果は本当にダメだった。

 翌日は仕事があったが、仕事などしている場合じゃない。家族の命がかかっている。けれど、何か有益な情報が手に入るかも知れないから、職場へは行ってみた。いつもの十分の一くらいの人が出勤していた。ほとんど来ていなかった。何も役にたつ情報が入手できないと分かると、仕事はせず、そのまま職場を出た。

 どこに行ったら、食べ物はあるのか。幼い頃から「お店で買う」以外に、食料調達の方法は学んでない。どうしたらいいのか。
 食料があるところに「分けて下さい」と頼みに行きたいが、どこにあるのか分からない。当てもなく歩いていたら、道路脇に屈強な男たちが三人いた。そこには、野菜が並べてある。
 本当に野菜なのか、目を疑ったが、間違いない。少し怪しい感じがするし、少し恐いけど、背に腹は代えられない。頼んでみよう。

「これ、分けてくれませんか?」
「どれが欲しい?」
「この大根一本と、さつまいもを六個くらい貰えれば、有難いのですが」
「じゃあ、大根が二千円、いもが六個で五千円。合わせて七千円ね」

 高過ぎる。でも、七千円払えば、大根とさつまいもが手に入る。家で待っている子どもたちは、今すぐにでも食べたいはずだ。大介は、七千円と引き換えに、食べ物を手に入れた。
 帰る途中、ひったくられそうになったり、大勢で取り囲まれそうになったりしたけれど、得意の逃げ足を生かして、何とか家にたどり着いた。

 ニュースを点けたら、法外な値段で食料を販売する闇市のことをやっていた。今日行ったような所が、他にも沢山ある事を知った。また、街中で暴行や恐喝が急増していることも知った。妻や子どもを危なくて家の外に出せない。腕力のある自分が、外で食べ物を調達しなければいけない。

 しばらくすると、食べ物が食べられず、栄養失調による死者が出たというニュースが伝えられた。時間が経つに連れて、その死者の数は増えていった。テレビでコメンテーターが次のように言っていた。
「私が前から主張しているように、自然界はバランスを取るように出来ている。物を押せば反発力が働くし、慣性の法則もそうである。人間は自然を壊し過ぎた。そして今、自然が人間を減らそうとしている」
 本当にどうでもいいと思った。自然界とか言う大きな話より、今は目の前の食べ物。このコメンテーターは、食べ物に困ってないのだろうか。だとしたら、それは何故? 分からない。

 やがて、スーパーやコンビニは閉店した。売上が上がらないこともあるだろうが、自分と同じように、店員たちも仕事に行かず、店を開けられないという事情もあるのだろう。テレビは番組が映らなくなった。ネットは、情報が更新されなくなった。恐ろしいことに、110番しても、電話が通じなくなった。誰もが働いていない。

 闇市で食料を買い続けたら、お金が続かないので、隣の人に食べ物を分けてもらうように頼んだ。隣家の様子を見ていると、普通に生活している。みな元気だ。うちは、今日食べるものもない。
「うちだって、そんなにある訳じゃないのよ」
「分かってます。本当にすいません。でもうちは、今日の分がないのです」
「あげてしまったら、うちが残り過ごせる日が少なくなるのよ。申し訳ないけど、ご免なさい」
 ドアをバタンと閉められた。とても良い人だったのに。でも、気持ちは分かる。

 大介は山へ出かけることにした。木の実がなっていたらもぎ取るし、イノシシがいたら戦うつもりだった。それまで、山にはほとんど来なかったので、どこに木の実があるか分からない。野生のイノシシなど、なかなかいない。収穫はなかった。山道を歩き続けて、疲れただけだった。

 疲労と絶望を身にまとい、帰途についた。疲労がピークに達し、何も考えられなくなった頃、公園に多くの人が群がっているのが見えた。
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