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八章
45話 一行、南下する
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45話 一行、南下する
「カインさん、あの……」
先に客室(キャビン)に戻っていたカインにジャスティスは少し戸惑いつつ声をかけた。
「ああ悪いな、二人とも」
バツ悪そうに苦笑いを浮かべるカイン。
「いえ。少しびっくりはしましたけど」
ジャスティスもまたホッとしたように苦笑いとなるが、
「えっと。カインさんはマーベラスってところに行くの嫌なんですか?」
ジャスティスはハンモックに横たわるカインに首を傾げて聞いてみた。
「『嫌』と言うか……」
天井を見つつ呟くカイン。
「まあ俺は仮にも『賊』だからな。あまり大きな都市には近寄りたくないんだよ」
と、身体を起こし簡素な椅子に腰掛けるジャスティスの頭を少し乱暴に撫でた。
「そう、だったんですね。『マーベラス』って、四大基礎術を考案した国ですよね?」
「ほう? お前よく知ってるなぁ」
「まあ一応騎士学校にいたので……」
カインが意外そうな表情を見せると、ジャスティスは照れたのか少し視線を逸らして俯いたが、
「でもマーベラスってどこにあるんですか?」
次には、顔に疑問符を浮かべて首を傾げた。
「……お前なぁ~……」
そんなジャスティスを見てカインは溜息混じりに小さく呟いて薄く笑った。
「マーベラスは、タータルネークから南東に位置する『天帝国ドゥラコーン』を領土とする天帝国家(てんていこっか)マーベラスの事だ」
ジャスティスの疑問に答えたのは隣に座るウルーガだった。
「ウルーガお前、行った事あるのか?」
それに食い入るように片眉を少しあげるカイン。
ウルーガは小さく頷いて、
「小さい頃。まだ十(とお)にも満たないとき両親と一緒に行ったきりだ」
「へえ、そうなんですね」
ジャスティスが感心したように頷き、
「あそこは、マーベラスは四神青龍(ししんせいりゅう)が守護神としているからな」
カインがそう言うとジャスティスはまた首を傾げて、
「『四神青龍』?」
と、カインの言葉をおうむ返しする。
そのあどけない様子のジャスティスを見たカインとウルーガは互いの顔を見て吹き出したように笑った。
「え、え? 僕、おかしな事言いましたか?」
きょとんとするジャスティスは自分だけ何も分かってないみたいで、少し拗ねたように唇を尖らせる。
「四大基礎術の事は知っていて、なんで世界地理学のことは知らないんだよお前」
と、ジャスティスの頭を乱暴に撫でるカイン。
「え。だって僕別のことに興味あったから……」
「まあいい。よく聞けよ」
バカにされたと思ったジャスティスが本格的に拗ねる前に、カインはジャスティスとウルーガの向かいにテーブルを挟んで座り、地図を広げた。
「いいかジャスティス。お前がいた国は世界地図の真北にあるタータルネークだ」
言いつつ、地図の真上である北の国を指すカイン。
「はい」
ジャスティスは気を取り直し、カインに説明されるまま地図を見て頷く。
「そこから右側の国が隣国ファルガイアですよね?」
と、カインが指し示す国の右側にある国を指すジャスティス。
「そうだ。この客船が向かうはずだった国だな」
カインもまたジャスティスの言葉に短く頷いた。そしてカインの続きを受け継いだのはウルーガで、
「ファルガイアにはいけなくなった。だから、この南東にある天帝国ドゥラコーンに航路を変えた」
言いつつ、タータルネークがある大陸の南東に位置し、陸の上部が大きな湾になっている大陸を指した。
「カインさん、あの……」
先に客室(キャビン)に戻っていたカインにジャスティスは少し戸惑いつつ声をかけた。
「ああ悪いな、二人とも」
バツ悪そうに苦笑いを浮かべるカイン。
「いえ。少しびっくりはしましたけど」
ジャスティスもまたホッとしたように苦笑いとなるが、
「えっと。カインさんはマーベラスってところに行くの嫌なんですか?」
ジャスティスはハンモックに横たわるカインに首を傾げて聞いてみた。
「『嫌』と言うか……」
天井を見つつ呟くカイン。
「まあ俺は仮にも『賊』だからな。あまり大きな都市には近寄りたくないんだよ」
と、身体を起こし簡素な椅子に腰掛けるジャスティスの頭を少し乱暴に撫でた。
「そう、だったんですね。『マーベラス』って、四大基礎術を考案した国ですよね?」
「ほう? お前よく知ってるなぁ」
「まあ一応騎士学校にいたので……」
カインが意外そうな表情を見せると、ジャスティスは照れたのか少し視線を逸らして俯いたが、
「でもマーベラスってどこにあるんですか?」
次には、顔に疑問符を浮かべて首を傾げた。
「……お前なぁ~……」
そんなジャスティスを見てカインは溜息混じりに小さく呟いて薄く笑った。
「マーベラスは、タータルネークから南東に位置する『天帝国ドゥラコーン』を領土とする天帝国家(てんていこっか)マーベラスの事だ」
ジャスティスの疑問に答えたのは隣に座るウルーガだった。
「ウルーガお前、行った事あるのか?」
それに食い入るように片眉を少しあげるカイン。
ウルーガは小さく頷いて、
「小さい頃。まだ十(とお)にも満たないとき両親と一緒に行ったきりだ」
「へえ、そうなんですね」
ジャスティスが感心したように頷き、
「あそこは、マーベラスは四神青龍(ししんせいりゅう)が守護神としているからな」
カインがそう言うとジャスティスはまた首を傾げて、
「『四神青龍』?」
と、カインの言葉をおうむ返しする。
そのあどけない様子のジャスティスを見たカインとウルーガは互いの顔を見て吹き出したように笑った。
「え、え? 僕、おかしな事言いましたか?」
きょとんとするジャスティスは自分だけ何も分かってないみたいで、少し拗ねたように唇を尖らせる。
「四大基礎術の事は知っていて、なんで世界地理学のことは知らないんだよお前」
と、ジャスティスの頭を乱暴に撫でるカイン。
「え。だって僕別のことに興味あったから……」
「まあいい。よく聞けよ」
バカにされたと思ったジャスティスが本格的に拗ねる前に、カインはジャスティスとウルーガの向かいにテーブルを挟んで座り、地図を広げた。
「いいかジャスティス。お前がいた国は世界地図の真北にあるタータルネークだ」
言いつつ、地図の真上である北の国を指すカイン。
「はい」
ジャスティスは気を取り直し、カインに説明されるまま地図を見て頷く。
「そこから右側の国が隣国ファルガイアですよね?」
と、カインが指し示す国の右側にある国を指すジャスティス。
「そうだ。この客船が向かうはずだった国だな」
カインもまたジャスティスの言葉に短く頷いた。そしてカインの続きを受け継いだのはウルーガで、
「ファルガイアにはいけなくなった。だから、この南東にある天帝国ドゥラコーンに航路を変えた」
言いつつ、タータルネークがある大陸の南東に位置し、陸の上部が大きな湾になっている大陸を指した。
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