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第一章 女王と五人の王子たち

14:第四王子エイダン&第五王子オーウェン④

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その夜アシュリーは、エイダンとオーウェンとのことをエリザベスに報告した。


「まあ、そんなことがあったのね! 偶然立て続けに二人と会うなんて! やはりアシュリーは私たち家族と縁があるのね!」

書斎で自分の席についているエリザベスは、いつもの穏やかな笑顔で言う。
アシュリーもいつもの机を挟んだ前に直立し、真顔で報告した。

「それで、二人のことをどう思ったかしら?」

「はい、エイダン第四王子殿下は人見知りなようですが、心根は優しい方なのではないかと感じました。私に親切に犬の主人を教えてくれましたし、犬にも好かれておりました」

アシュリーのその返答に、エリザベスは少し驚いた顔をしたあとで、ホッと笑みをこぼす。

「ふふっ、ありがとう。嬉しいわ。エイダンは人見知りがあったり変わったところがあって、他人に理解され難いの。影で悪く言われることもよくあるわ……。けれどアシュリーの言う通り、心根はとても優しいのよ! 何を作っているのかはよくわからないけれど、実験に打ち込んでいるの」

「打ち込める物があるのは素敵ですね」

アシュリーは心からそう思って言ったが、エリザベスはやや苦笑いを浮かべる。

「そうなのだけれど、危険なのがたまに傷なのよ……。実験はしても良いから安全確保をきちんとするようにと、何度も言っているのだけれどね。せめて、実験をする前に側近に申し出るようにと」

「そうなのですね……」

(自分の世界が強い方なのかしら?)

アシュリーは、決して目が合うことはなかったエイダンを思い浮かべながらそう思った。

「家族や幼い頃から知っている人とは普通に関われるのだけれど、言うことは聞いてくれないのよ」

そう言うエリザベスは、完全に母の顔だった。

(母親とはいえ女王陛下の命令は絶対なはずだけれど、それも聞かないとは……)

子どもは一人一人それぞれが全く違う人間であるということ、それでも皆、親にとってはかけがえのない大切な子どもだということを、アシュリーは改めて感じたのだった。

(女王陛下も母親でいらっしゃるのよね……)

アシュリーがそのようなことを考えていると、エリザベスが口を開いた。

「オーウェンはどうだった?」

「はい。明るく元気な少年でした。天真爛漫というイメージです」

「ふふっ。そうでしょう。とにかく明るくて、いつも笑って走り回っているのよ」

「けれど、慌ただしく立ち去ったにも関わらず、陛下のことを心配する言葉は忘れませんでした。とてもハキハキしており芯がありそうで、これからが楽しみだと感じました」

真顔で淡々と言うアシュリーに、エリザベスはうなずく。

「ええ、私も同じ意見よ。少しアダムと似ているところがあるとも思うの。優しくて人当たりもとてもいいわ。でもさすが末っ子、周りをよく見ているの。甘え上手だしね」

エリザベスは楽しそうに言う。


(陛下はいつも、とても嬉しそうに王子殿下たちの話をされるわね。本当に愛していらっしゃることが、とてもよく伝わってくるわ)

エリザベスは自分の知らない王子たちのことを知りたいと思ったからこそ、アシュリーを城に呼んだのだ。
勿論、次期国王を選ぶ時期だというのは本当だろう。
そのために、王子たちの本当の姿を知りたいのも本当だろう。
女王としての視点ではそうに違いない。

しかし親としての視点でも、自分の子どものことを知りたいのではないだろかとアシュリーは思った。

(少しでも女王陛下のお役に立てれば良いな……)

「アシュリー、ありがとう。短い時間にも関わらず、ちゃんと王子たちのことを見てくれて。やっぱりアシュリーに頼んで正解だったよ」

エリザベスのその言葉に、アシュリーも決意を新たにする。

(全員の王子殿下と会ったわ。いよいよ、これからが本番ね……!)

 



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