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第一章 女王と五人の王子たち

5:第一王子アダム②女王の想い

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アダムの部屋を退室したその足で、アシュリーはエリザベスへ報告に行った。

「アシュリー、どうだった?」

エリザベスは、珍しく少しソワソワした様子が見られる。

「まだ気怠そうにされていました」

「ええ、いつも一度体調を崩すと長引くのよ……。それで、アダムについて思ったことを何でも教えてちょうだい」

母の顔と女王の顔が入り混じっているのを、アシュリーは感じた。

「アダム第一王子殿下は、陛下のことを大切に思われているのがとても伝わって来ました。私のような立場の下の者にも丁寧な対応をして下さり、優しい言葉まで掛けて下さって……。とても優しい方だと思いました」

「そう……そうなのよ。本当に優しい子なの。頭も良いの。……ただ身体が弱くて武術はまったくなの。体力もまったくないのよ」

エリザベスの苦笑いから、残念がっているのがとても伝わって来る。

「……誠実そうな方だとも感じました」

「ええ、そうなの……。当たりよ、アシュリー。アダムは本当に良い子なの。決断力もある。全体を見る力もある。冷静な判断も出来る」

エリザベスは話しながら、頭を抱えて下を向いた。
そのままアダムを褒め続けるのを、アシュリーはただ聞いていた。

「……身体さえ弱くなければ……」

そしてそう言って、エリザベスの言葉が止まる。
その言葉に全てが詰まっていると、アシュリーは思った。

(身体さえ弱くなければ第一王子殿下を国王にしたいと、陛下はそう考えていらっしゃるのね……)

アシュリーはエリザベスの本当の気持ちを感じたが、口に出すことはしなかった。
口に出してもアダムの身体が強くなることはない。
無責任に『体が弱くても良いではないですか』などと言うことも出来ない。

(陛下はきっと、本当はもう次期国王を決めているのではないかしら……? ただ、最期の”詰め”として……または他の目的で、私はきっと呼ばれたのね)

アシュリーはふとそう思う。
エリザベスが迷走しているとは、とても思えなかったのだ。
エリザベスの性格上、大事なことを他人に任せたり託したりするとも思えない。
ましてや、付き合いは長いとはいえ年に数回会うだけのアシュリーに。

(陛下にも考えがおありのはず。邪推せずに、私は私の出来ることをしよう)

アシュリーは改めてそう思いながら、エリザベスを見つめていた。
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