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25:当たり前のこと

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ローラと会った午後、リリーをベッドへ寝かせてフリージアと遊んでいると、マストが訪室して来た。

「フリージアとリリーに変わりはないか?」

「ぱぱー!」

フリージアはマストに飛び付いた。

「はい、旦那様。フリージア様もリリー様もおかわりありません」

「そうか」

マストはマリーの方を見ずに言い、フリージアと遊び出した。
マストがフリージアと遊んでいる間は、マリーは少し離れた所からリリーとフリージアの様子を見守るのがいつもの事である。

今日もマリーは、微笑ましい親子3人の様子を疎外感を感じない様に無心で眺めていた。

しかし今日は、邪推が邪魔をした。

「どうかしたのか?」

難しい顔で見守っているマリーに気付いたマストが、マリーに声を掛ける。

「……あっ、いえ、何もございません」

「そうか」

マストは再びフリージアに笑顔を向けた。

ただの侍女であるマリーは、何も言う事は出来ないのだ。

(婚約者様は素敵な方ですね。フリージア様やリリー様にも興味を示して下さいましたよ)

マリーはマストの側頭部を見つめながら、そう心の中でつぶやいた。

今後何が起きても、"マリーは見守る事しか出来ない"ということを、変化の中でマリーは改めて実感したのだった。

(私には何も言う権利がないのよね……)

マリーは再び胸がギュッと締め付けられるのを感じる。

離婚する時は、子どもたちの側にいる事が出来たらそれだけで良いと思っていた。
しかし、どんどん無力さや疎外感を感じる機会が最近増えている事もまた、事実なのである……





「マリー、旦那様と婚約者様は"妊娠をすれば結婚する"という話になっているそうよ。大奥様は、離婚よりも婚約解消の方が簡単で効率的で良いとお考えになったみたい」

マリーはアリスからそう聞いた時、"チクッ"と胸が少し痛んだ事には気付かないフリをした。

"マリーと離婚したマストは次の女性との関係を育む"

ただそれだけの、何も珍しいことではない。

(当たり前の、分かりきっていたことではないの……)

マリーは胸のモヤモヤが、昨日の夜からどんどん大きくなるのを感じる。

(私には何も出来ないのよ!)

マリーは、アリスへ「体調が悪いため早く休む」と伝えて自室へ戻ったのだった。
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