14 / 51
14:義母ローレルの怒り
しおりを挟むマリーの父であるブラックが、事業に失敗をし大損害を被ったそうだ。
「マリー! あなたの父親を信じた私が馬鹿だったわ! 大金よ! どうしてくれるの!!!」
ローレルは、マリーがリリーを寝かしつけているにも関わらず急に部屋へ入って来たかと思うと、大声で怒鳴り上げた。
フリージアは驚いてマリーの後ろに隠れ、マリーにしがみついている。
「お義母様、やっと今リリーが寝ついたところなのです。もう少し声を小さくしては下さいませんか? フリージアも怖がっています」
マリーは困った顔で立ち上がり、リリーを揺らしてあやしながら言った。
リリーは今にも起きそうで、顔を少ししかめている。
「そんなの知った事ですか! どうしてくれるのよ! あなたが代わりに全額返しなさい!」
「おぎゃーーーーー!!!」
寝ついたばかりで起こされ、リリーは不満気に大声で泣き喚いた。
「ああ、五月蝿いわね! 黙らせなさい! これだから女は! 男の子を産まないから、ろくな事がないじゃないの!」
ローレルの滅茶苦茶な言い分に呆れながら、マリーは言う。
「お義母様……私が結婚時にして下さった融資で私の父が事業を成功をし、お義母様もかなり稼がれたと聞いております。それを、今回は損をしたから返せと言うのはあんまりです。この様な事が起こり得る事は、わかった上で融資をされた筈です」
珍しく口答えをしたマリーに、ローレルは目くじらを立てて噛みついた。
「調子に乗るんじゃないわよ! 今回はあなたの父親が全て悪いのよ! 男を産めない娘なんかを嫁に来させる父親は、やはり信用ならなかったわね!!!」
呆れ果てたマリーはもう何も言わずに、冷たい視線をローレルにただ送る。
「おぎゃーーー!! おぎゃーーー!!!」
一瞬の間、二人の間にはリリーの泣き声だけが響き渡った。
「……マリー、あなたの父親を信じて大金を預けたという意味では私にも過失はあるかもしれないわね。しかし今回は、全面的にあなたの父親が悪いの。絶対に許さないから。全額返金しない限りは貴方の顔ももう二度と見たくはないわ!」
ローレルは急に"スンッ"と冷静になった。
そして、冷淡に、心の底から軽蔑と憎悪が溢れる冷たい目でマリーを見て、そう言い放つ。
少しボリュームの落ちたリリーの鳴き声に負けないように、はっきりと大きな声で……
(私と旦那様を結婚させた時と変わらず、お義母様の関心事は金儲けと後継ぎの事だけなのね……)
ローレルに負けない軽蔑の眼差しでジッと見ながら、マリーはそう思う。
ローレルは真っ直ぐにマリーを睨み付けながら佇まいを直し、口を開いた。
「貴方の様な嫁はタングール伯爵家には必要ありません。出て行きなさい。離婚です」
マリーは目を見開いた。
開いた口が塞がらなかった。
「そんな……子供達は……」
「置いていきなさい。女でもタングール伯爵家の血を継ぐ者です。今後何か役に立つことがあるかもしれませんからね」
マリーは頭にカッと血が上るのを感じた。
(子供達のことを一体何だと思っているの……!?)
怒りに満ち溢れマリーが何も言えずにいると、ローレルはそれ以上何も言わずに子供達には目もくれずに部屋を出て行く。
ローレルが本気だという事は、マリーには十分に伝わってきた。
マストとマリーの結婚の時には、ブラックとローレルは多額の利益を得ている。
今回もローレルが大金を融資したがブラックが損害を出してしまい、ローレルへの返済が滞っているのであろうと、マリーはそう考えていた。
しかし、数日後の知らせにより真実を知ったマリーは、顔面蒼白で立ちすくむこととなる……
「マリー! 今知らせが来た。プルドー男爵が自害をしたそうだ!!!」
1
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
ふたりは片想い 〜騎士団長と司書の恋のゆくえ〜
長岡更紗
恋愛
王立図書館の司書として働いているミシェルが好きになったのは、騎士団長のスタンリー。
幼い頃に助けてもらった時から、スタンリーはミシェルのヒーローだった。
そんなずっと憧れていた人と、18歳で再会し、恋心を募らせながらミシェルはスタンリーと仲良くなっていく。
けれどお互いにお互いの気持ちを勘違いしまくりで……?!
元気いっぱいミシェルと、大人な魅力のスタンリー。そんな二人の恋の行方は。
他サイトにも投稿しています。
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※1/1アメリアとシャーロックの長女ルイーズの恋物語「【R18】犬猿の仲の幼馴染は嘘の婚約者」が完結しましたので、ルイーズ誕生のエピソードを追加しています。
※R18版はムーンライトノベルス様にございます。本作品は、同名作品からR18箇所をR15表現に抑え、加筆修正したものになります。R15に※、ムーンライト様にはR18後日談2話あり。
元は令嬢だったが、現在はお針子として働くアメリア。彼女はある日突然、公爵家の三男シャーロックに求婚される。ナイトの称号を持つ元軍人の彼は、社交界で浮名を流す有名な人物だ。
破産寸前だった父は、彼の申し出を二つ返事で受け入れてしまい、アメリアはシャーロックと婚約することに。
だが、シャーロック本人からは、愛があって求婚したわけではないと言われてしまう。とは言え、なんだかんだで優しくて溺愛してくる彼に、だんだんと心惹かれていくアメリア。
初夜以外では手をつけられずに悩んでいたある時、自分とよく似た女性マーガレットとシャーロックが仲睦まじく映る写真を見つけてしまい――?
「私は彼女の代わりなの――? それとも――」
昔失くした恋人を忘れられない青年と、元気と健康が取り柄の元令嬢が、契約結婚を通して愛を育んでいく物語。
※全13話(1話を2〜4分割して投稿)
【完結】美人な姉と間違って求婚されまして ~望まれない花嫁が愛されて幸せになるまで~
Rohdea
恋愛
───私は美しい姉と間違って求婚されて花嫁となりました。
美しく華やかな姉の影となり、誰からも愛されずに生きて来た伯爵令嬢のルチア。
そんなルチアの元に、社交界でも話題の次期公爵、ユリウスから求婚の手紙が届く。
それは、これまで用意された縁談が全て流れてしまっていた“ルチア”に届いた初めての求婚の手紙だった!
更に相手は超大物!
この機会を逃してなるものかと父親は結婚を即快諾し、あれよあれよとルチアは彼の元に嫁ぐ事に。
しかし……
「……君は誰だ?」
嫁ぎ先で初めて顔を合わせたユリウスに開口一番にそう言われてしまったルチア。
旦那様となったユリウスが結婚相手に望んでいたのは、
実はルチアではなく美しくも華やかな姉……リデルだった───
五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
最初から勘違いだった~愛人管理か離縁のはずが、なぜか公爵に溺愛されまして~
猪本夜
恋愛
前世で兄のストーカーに殺されてしまったアリス。
現世でも兄のいいように扱われ、兄の指示で愛人がいるという公爵に嫁ぐことに。
現世で死にかけたことで、前世の記憶を思い出したアリスは、
嫁ぎ先の公爵家で、美味しいものを食し、モフモフを愛で、
足技を磨きながら、意外と幸せな日々を楽しむ。
愛人のいる公爵とは、いずれは愛人管理、もしくは離縁が待っている。
できれば離縁は免れたいために、公爵とは友達夫婦を目指していたのだが、
ある日から愛人がいるはずの公爵がなぜか甘くなっていき――。
この公爵の溺愛は止まりません。
最初から勘違いばかりだった、こじれた夫婦が、本当の夫婦になるまで。
中将閣下は御下賜品となった令嬢を溺愛する
cyaru
恋愛
幼い頃から仲睦まじいと言われてきた侯爵令息クラウドと侯爵令嬢のセレティア。
18歳となりそろそろ婚約かと思われていたが、長引く隣国との戦争に少年兵士としてクラウドが徴兵されてしまった。
帰りを待ち続けるが、22歳になったある日クラウドの戦死が告げられた。
泣き崩れるセレティアだったが、ほどなくして戦争が終わる。敗戦したのである。
戦勝国の国王は好色王としても有名で王女を差し出せと通達があったが王女は逃げた所を衛兵に斬り殺されてしまう。仕方なく高位貴族の令嬢があてがわれる事になったが次々に純潔を婚約者や、急遽婚約者を立ててしまう他の貴族たち。選ばれてしまったセレティアは貢物として隣国へ送られた。
奴隷のような扱いを受けるのだろうと思っていたが、豪華な部屋に通され、好色王と言われた王には一途に愛する王妃がいた。
セレティアは武功を挙げた将兵に下賜されるために呼ばれたのだった。
そしてその将兵は‥‥。
※作品の都合上、うわぁと思うような残酷なシーンがございます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※頑張って更新します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる