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第七章 すれ違い

6:決行

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「まあ、この花に青色なんてあったかしら? それにしても綺麗な青色ね!」

「ええ、本当に素敵な色だわ!」

「初めて見たけど素敵ね!!! 香りもキツすぎず、ほのかに部屋全体を良い香りで包んでくれているわ!」

「生け方も見事よ! この花がとても活きているわ!!!」

祖母は、参加人数20人程度のお茶会を開いてくれた。
急な誘いだったにも関わらず、流行病明けで出掛けたくてウズウズしていた婦人たちは、喜んで出席してくれたのだ。

使用人に扮したリリカとキャサリンは、部屋の隅から貴婦人たちの反応を緊張の面持ちで観察している。
生け花が見事に貴族婦人たちの心を掴んでいる様子に、二人は顔を見合わせ、笑顔で小さくガッツポーズをした。

「今日いる人達の中から、きっと誰かが次の注文をしてくれるわ!」

こそっとそう言うキャサリンに、リリカは大きく頷いた。

婦人達の反応を確認した二人は、部屋をそっと退室する。
そして貴族令嬢らしく着飾った二人は、婦人たちの前で挨拶するために、改めて入室したのだ。

「こんにちは。リリカ・レッドフィールドとキャサリン・レッドフィールドです。本日はこのような素敵なお茶会に、私たちの花をこれほど大々的に飾っていただき、ありがとうございます。皆様に癒しの空間をお届け出来ていると良いのですが……。どうか良い時間をお過ごし下さいませ」

視線が集中する中、品良く二人はお辞儀する。
今のリリカはもう、キャサリンの隣に堂々と並ぶことが出来る。
容姿の差なんてどうでも良い。
リリカはリリカだ。

(自信をもって堂々と。リリカ、胸を張るのよ!)

リリカは心の中で、自分を鼓舞し続けていた。




他では買うことの出来ないここだけの青い花に、リリカは破格の価格をつけた。
実際にその花はとても美しく、見栄えが良く、良い香りもする。
それにも関わらず、他の様々な花と調和もするのだ。
主役にも脇役にもなることが出来る、飾るのにうってつけの花だった。

また、キャサリンの花を生けるセンスも、かなりのものだった。

そして”双子の伯爵令嬢”というのもまた、話題性があった。
それだけではなく、”美人の”と付け加えて噂されているのも多い。
あっという間に二人と花の噂は、貴婦人の間で広まっていった。
そしてなんと、祖母のお茶会の一週間後には、先一週間が予約で一杯となったのだ。
平均して一日3件もの注文だ。

どんどん注文内容も豪華になって行く。
婦人たちは、前回自分が他の所で見たものよりも、より豪華なものを求めるからだ。

リリカとキャサリンの計画は、見事に的中したのだった。






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