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第四章 会えない時間

6:1年間屋敷にこもって……

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『ウィリアム様へ
いよいよ夏本番ですね。
研究に集中し過ぎて体調を崩されませんよう、お気を付け下さい。
夏でも、流行病の感染者が出続けていると聞きます。
これから寒くなって行くので、更に猛威を奮うのではないかと、とても心配です。
8/1 リリカ』




『ウィリアム様へ
お元気ですか? 
研究が順調だと良いのですが……
私の研究は、少し成果がありました!
流行病が終焉してから、是非考察を聞いて下さいね。
まだまだ残暑厳しいので、お身体をご自愛下さい。
9/1 リリカ』




『ウィリアム様へ
今月はウィリアム様の21歳の誕生日ですね。お祝いが出来ずに残念です。
せめて誰よりも先にお祝いを言わせて下さい。
お誕生日おめでとうございます。
22歳がウィリアム様にとって、素敵な年となりますように。
10/1 リリカ』




『ウィリアム様へ
先月は、素敵な誕生日を過ごされましたか?
ケーキは召し上がられましたか?
もしよろしければ、来年は是非、私にケーキを作らせて下さい。
秋らしくなって来ましたね。
朝晩は冷え込むので、お身体に気をつけて下さい。
11/1 リリカ』




『ウィリアム様へ
すっかり冬らしくなって参りましたが、お元気でしょうか?
12月は師匠も走るほどの忙しさだと言われますが、ウィリアム様はいかがでしょうか?
たまにはゆっくり出来る日もあると良いのですが……
研究の成功と健康をお祈りしております。
12/1 リリカ』




『ウィリアム様へ
流行病が猛威を奮い始めて一年が経ちましたね。
一年間、屋敷から一度も出ていません。
しかし私は幸い、屋敷の中でも楽しめることがたくさんあるので、あっという間の一年でした。
ウィリアム様はどのように感じられているのでしょうか?
P.S.18歳になりました。17歳は一度もお会いできなかったので、18歳はお会い出来ることを楽しみにしています。
1/1リリカ』




流行病により屋敷に籠りっ放しだったこの一年、リリカは今までの人生で一番の充実感を感じていた。

(どんな状況でも、人間には平等に時間が与えられているわ。流行病のせいにして、ただただ怠惰に過ごすことも出来る。平等な時間をどう過ごすかで、これからの人生が変わって行く……)

リリカはとても清々しい顔をしている。
時間に差別は存在しない。
劣等感の中で自分を蔑んで生きて来たリリカにとって、"時間は全人類に平等だ"と本で読んだ時は、嬉しい気持ちになったものだ。




『ウィリアム様へ
寒い日が続きますが、2月を乗り切れば春がもうすぐですね。
春の訪れと共に、流行病が終焉し明るい知らせがあると良いのですが……
ウィリアム様が、充実した日々を送っていることを祈っています。
2/1 リリカ』





この手紙を送った数日後、良い知らせが舞い込んで来ることとなる……---







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