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11,(R18)涙 -最終話-
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クリスマスイブ。
瀬戸くんの家の別荘に僕と椎木くんはまた来ていた。
午前中に学校が終わって、明日から冬休みだ。
電車に乗って2時間、買い物をしたり寄り道をして到着したのはすっかり陽が落ちてから。
「本当に2人だけで来て良かったのかな。」
「いいんじゃない?どっか別の所行くって言ってたし。」
「もしかしてまだ別荘あるのかな?」
「わからんけど、瀬戸ってああで良いとこの坊ちゃんだからね。」
瀬戸くんに鍵を預かって来ている僕たちは、この日2人きりで、初めて一晩過ごす。
食事をしてゲームをして笑い疲れて、やがて
ソファに密着して座り映画を見る。
そのうち映画そっちのけでキスをする。
ソファに押し倒されて耳や首を温かい舌先で責められる。
「ちょっ、椎木くん、映画見ないの?」
「見てる見てる」
「見てないじゃん、何してんの」
クスクス笑う僕の耳の縁にレロっと舌を這わせながら耳元で彼もクスクスと笑うから、その息遣いにゾクとくる。
ふざけて笑いあっていたのに、そのうちに「ッんっ、、」と反応し出す僕の姿に、椎木くんの中のスイッチが入ったようで熱のこもった瞳で服の中に手を滑り込ませてくる。
「楠木、脱がしてい?」
「!!駄目、ちょっと、一旦待って、シャワー入ろ?」
「ちぇ。」
パッと解放されて、僕は彼が怒ったのかを伺う。いつも通りの無愛想な表情。目は映画に戻っている。
「一緒に、入る?」
機嫌をとるような僕の提案に、彼は僕をまじまじと見て、僕が自分の言葉に恥ずかしくなるまで考えてから
「やめとく。なにもかもが風呂場で完結する気しかしない。絶対楠木煽ってくるし、俺絶対手出すし」
そう笑った。
「アハハ、考えただけでのぼせそうだから1人で行くね」
ベッドで携帯を見ている椎木くんの上にゴロンと乗り掛かる。
「ぉわ、何。動けねー」
「いたずらー」
「は?」
うつ伏せの太腿あたりに跨がって、僕は両腕を彼の服の中に滑り込ませる。
「うわ、性的ないたずら?」
「そ。」
笑いながら彼の筋肉質な背中にキスをして舌を這わせた。
「おい、待て。楠木くんそれはエロすぎる」
携帯を投げて体を起こそうとする彼の肩を押さえて、更に服をまくり上げると、露出した肩甲骨に沿ってツーと舐める。
「っっ」
彼の体がピクリと震えた。
背中をわざと湿った音をたてながら舌で攻めつつ、片手を前に回して腹や胸に軽く手を滑らせて、彼の胸の先端を指先でなぞる。
「っっ!ーおいって」
指先でクリっとこねると声にならない息を継ぐ。
僕から逃れようと彼がぐっと体を起こしたせいで、彼の体の前に隙間が出来ると僕は背中への愛撫をやめずに彼の中心のものに手を這わせた。
既に硬くなっているソレを、服の上から指で挟み込むように絶妙な強さで擦る。
「っは、ぁッ」
根元の方から先端の方まで指を絡めて扱きあげると堪えきれずに呻く。背後から手をまわしているせいで、僕にとっては慣れた体勢で椎木くんにとっては完全に攻め立てられる体勢だ。
椎木くんが僕にその体勢で攻めてくる事があったから、羞恥心を煽られて焦ることも、その焦りが快感に負ける事も僕はよく知っている。
僕に感じている姿をもっと見たくて服の中に手を入れた僕は、直に硬いものを握り込んで彼の尖に溢れたものを親指ですくって尖をぬるりと擦る
たまらず喘ぐのを見て更に硬く勃った彼を上下に擦り続けると追い詰められて息が上がってくる。
背中の、彼が一番反応する所を強く舌で舐め上げて、胸の尖りも同時に指先で擦る。
「ッんッ、っツ、、おい、楠木って、、」
やがて彼は限界になったのか小さく息を継ぎながら自分の手で、彼自身を握る僕の手を止めた。
「ちょお、、楠木、勘弁して、このままイカすつもり?」
その言葉に自分の中に男の嗜虐心を微かに感じながらもゆっくりと手を離した。
彼が気まずそうに、悔しそうに髪の毛をくしゃと握りながら僕を向き直って座った。
「完全にイタズラを通り越してて我慢の限界なんだけど」
「めちゃくちゃ興奮しました。ごめんなさい!」
全く反省していない僕の笑顔をジロリと睨んで、彼は僕に手を伸ばして続きをしようと引き寄せる。
「ちょっと待って」僕は彼の肩を押して止めると、
「お願いあるんだ。」最大限の勇気を出して言う。
「お願い?何?」
「ー今日、最後までして欲しい。僕が途中で怖気付いても、、」
椎木くんは驚いた顔をしたけれど、僕の言おうとしている事がわかったようで、すぐに目を伏せて首を横に振る。
「駄目、無理」
僕は彼の両腕をぎゅっと掴んで彼の目を覗き込む。彼の動揺する瞳が僕を見返す。
「今日、決めてここに来た。
僕がどんなに椎木くんを思っていてもたぶん怖さからは抜け出せないから。
でももう充分だと思うんだよ。椎木くんは時間をかけてくれたし、僕だって最後までしたいって思ってるから」
もう一度、椎木くんは首を横に振る。
「、、それってさ、俺に、無理矢理にでもやれって事、、?」
「うん。」
「そんなの無理に決まってんじゃん。」
僕の顔を見て決意が揺るがない事を知った椎木くんの黒い瞳が、葛藤と戸惑いと少しの怒りに揺れていた。
男女の行為と違って、初めての僕たちは思い立ってすぐできるワケじゃ無い。だから僕たちは前にここに来て以来少しずつ時間をかけていた。
僕の体が椎木くんを受け入れることが出来るように、彼の指の感覚に慣れるように。そうして最後はお互いの手の中で何度も何度も果てながら。
「、、楠木、悪魔だね、、」
下を向いて手で顔を覆ってしまう彼を僕はぎゅっと抱きしめた。
「お願い。椎木くん、最後までしよう。」
椎木くんは僕の腕の中で下を向いたままだいぶ悩んでいた。そして間をおいて「わかった」と小さく言うと僕の背中に手をまわした。
暗い部屋に、ちゅ、くちゅと卑猥な音が響いて僅かにぷくりと主張した胸の尖端に甘い痺れを感じる。
同時に椎木くんの手が僕の硬く勃ち上がったものをゆっくりと扱く。それはいつもよりゆっくりとしたものなのに同時に与えられた刺激が快感を倍増させているようで、頭がふわふわとする。
「椎木く、ん、、」
「なに楠木」
椎木くんは僕の胸の尖りからわずかに口を離して囁くように返事をする。肌に彼の吐息がかかってそれだけで体がピクリと反応してしまう。
「ッんん、椎木く、ん、、もっと、、」
いつもより遅い動きを繰り返す彼の手に焦れて、僕の腰が思わず揺れてしまう。
その反応に少しだけ動きがはやめられる。
「ッア、ッあ、」
快感の奥から湧き上がる射精感に喘ぎながら、僕の足を割って間に陣取る彼の方からパチンという小さな音が聞こえたことにドキリとした。
「指入れるよ」
頷くと同時に、ヌルヌルとしたローションを掬い取った彼の指が奥の孔に侵入した。
「っんんッッ、」
反射的に腰をひいて逃げようとする僕の硬くなったものを、さっきより強く擦って、僕の意識が快感へ向くようにしながら指でグニグニと内壁をこする。
「あ、、っん、、」
体の中で蠢く強烈な違和感と、ぬちゅ、ぬちゅとローションが塗り広げられる快感で腰が浮き喘ぎは抑えようも無い。
僕の反応を見ながら椎木くんは時間をかけて指を2本に増やし、反対の手で僕のものを追い詰める。
内壁を2本の指で強く弱く擦り続けられて、それが強烈な快感になって僕を襲う。
これまでに何回も、硬くなったものへの刺激と体内での刺激を同時に与えられて来て、指への恐怖心が無くなった僕はただ吐き出したい欲求だけを追いはじめる。
刺激が強烈過ぎて、何度経験してもすぐに射精感に襲われる。
「椎木、くん、、アッ、もう、、出そ、、」
大き過ぎる快感と吐き出したい切迫感で頭の中がめちゃくちゃになりそうだった。
その時、椎木くんの指がスルリと抜かれると、奥の孔へピタリと彼のものが充てられるのを感じた。
瞬間現実に引き戻されて恐怖を感じる
「楠木、挿れるよ」
椎木くんの低い声は僕の返事を待つものじゃなかった。僕が冷静になる時間を与えないようにしていたと思う。
彼が少しの力を込めてわずかに腰を進めた。
「ッッん〝ん〝ーーッ!ッま、待って!」
彼の両手が僕の太腿を抑えていて逃げる事が出来ない事に、さっきまでの快感も射精感も忘れて恐怖心に支配される。
「ッく、楠木、落ち着いて!お願いだから、」
椎木くんが太腿を抑える手に力を込めたまま僕に言うけれど、パニックになりかけている僕は落ち着く事なんてできない。布団を力一杯握りしめて彼に訴える。
「椎木、く、、怖い、やだ、、抜いて、」
目を瞑って首を横に振る僕に少しの間じっとしていた彼は「ごめん!楠木、、」と僕に届かない呟きと共に更にゆっくりと腰を進めた。
「ッッッーー!」
声にならない叫びがもれる
「楠木、っんッ、動かないから、、頼むから力抜いて!」
「無理、、もう無理、、苦し、、つらい」
歯を食いしばりながら思う。
何で最後までして欲しいなんて言ったんだ。
少し前の自分を呪う。
怖くて苦しくて辛すぎる。
世の中に同じ事をしている人がいるなんて到底信じられない。
僕が止めた呼吸を再開して、ハッハッと短い息をしながらパニックの淵から浮上するまでの間、椎木くんはじっと動かなかった。
彼自身も締め付けられて苦しいはずで、中途半端に止められた動きたい衝動とも闘っていたはずだけど、彼はただ僕が少しでも落ち着くのを待っていた。
「楠木、息、、ゆっくり息して。体の力抜いて。」
少しずつ椎木くんの言っている言葉が頭に入って来たけれど、返事をする余裕がまだない。
心の中で“無理無理”と連呼しながら首を横に振る。
「楠木、目開けて。俺の方見て。ー好きだよ、楠木」
彼の懇願するような震える声を聞いて、僕はその時になってようやく彼を見た。
彼の瞳から涙が一筋流れていた。
その涙を見た瞬間、ハッとして体から力が抜けた僕は、自分の目からも涙が流れていた事にその時初めて気づく
僕はいつから泣いていたんだろう、、それすらもわからないほど苦痛と恐怖に苛まれていた。
「椎木、く、、」
「泣かんで楠木、ごめん。好きだよ。愛してる。」
そして彼はぐっと根元まで腰を進めた。
僕は椎木くんの抽送のたび何度も声にならない悲鳴をあげた。
それでも椎木くんは一定のはやさをまもって動きつづける。
やがてゆっくりゆっくりと彼を受け入れることに慣れた頃、、
椎木くんの引いた腰が僕の内壁を擦ってビクンッと体が跳ねた
「ッんんッッ」
彼がもう一度腰を進めた時にも何か強烈な快感を感じて体が震える。
ゆっくりした動きを繰り返す椎木くんの洩れる息遣いと小さな喘ぎが、彼の切なげに寄せる眉が、僕に快感を与えて硬くなったものの先端から雫を滴らせた。
椎木くんがもう一度手のひらで僕のものを扱き出す。
「ぅアッ、椎木くん、、気持ち、イ」
僕の言葉に、彼は動きを少しだけ早くした。
彼が腰を引くたび経験した事のない大きな快感の波が押し寄せて、彼が押し進むとまた波が押し寄せる。
「何、、コレ、、意識、飛びそ、、」
涙で視界はぼやけるし、頭も朦朧としてくる。
もういきり勃ったものも早く吐き出したいと彼の手の中でビクビクと震えている。
苦しい事に変わりはなかったけれど、恐怖や痛みは快感と引き換えに消えたようだ。
ただひたすらに彼の余裕の無さそうな表情に欲情し、彼の与える刺激に追い詰められる。
「楠木、、俺、、もうもたない、、」
彼の限界を告げる苦し気なその声が引き金になって、僕は椎木くんの手の中で果てた。
そして椎木くんも僕の最奥で果てたのだった。
2人ともぐったりとしていた。横に寝転がっている椎木くんは腕で顔を覆ったまま何も言わなかった。
「椎木くん、、ありがとう。」
「俺、楠木の涙トラウマになりそ」
「僕は椎木くんが泣いてくれて嬉しかった。言ってくれた言葉も全部嬉しかった。」
「、、はず、、俺精神ギリギリだったから」
顔を隠したまま言う彼の言葉に僕は椎木くんの事を好きになって良かったと心から思う。
彼はずっと最大限優しかった。
僕の無謀な我儘を聞き入れてくれて、泣いて苦しむ僕を解放出来ない辛さに罪悪感の涙を流してくれた。僕の心が少しでも落ち着くようにじっと時間が過ぎるのを耐えてくれた。
僕は彼がひどく愛おしくて彼に腕を回して抱き締めた。
「ごめん、椎木くんにひどい事させた。でもありがとう」
「何言ってんの、辛かったの楠木の方でしょ。」
彼も顔から腕を下ろして抱きしめてくれる。
「辛かったけど、、やっと出来て、凄い嬉しい。椎木くん大好きだよ。」
「ー楠木、ずっとそばにいて」
「うん、ずっと一緒にいよ」
僕たちはまた少し涙の浮かんだ瞳を閉じて、優しいキスをした。
(本編完
ー佐川ストーリーへ少しだけ続くー)
瀬戸くんの家の別荘に僕と椎木くんはまた来ていた。
午前中に学校が終わって、明日から冬休みだ。
電車に乗って2時間、買い物をしたり寄り道をして到着したのはすっかり陽が落ちてから。
「本当に2人だけで来て良かったのかな。」
「いいんじゃない?どっか別の所行くって言ってたし。」
「もしかしてまだ別荘あるのかな?」
「わからんけど、瀬戸ってああで良いとこの坊ちゃんだからね。」
瀬戸くんに鍵を預かって来ている僕たちは、この日2人きりで、初めて一晩過ごす。
食事をしてゲームをして笑い疲れて、やがて
ソファに密着して座り映画を見る。
そのうち映画そっちのけでキスをする。
ソファに押し倒されて耳や首を温かい舌先で責められる。
「ちょっ、椎木くん、映画見ないの?」
「見てる見てる」
「見てないじゃん、何してんの」
クスクス笑う僕の耳の縁にレロっと舌を這わせながら耳元で彼もクスクスと笑うから、その息遣いにゾクとくる。
ふざけて笑いあっていたのに、そのうちに「ッんっ、、」と反応し出す僕の姿に、椎木くんの中のスイッチが入ったようで熱のこもった瞳で服の中に手を滑り込ませてくる。
「楠木、脱がしてい?」
「!!駄目、ちょっと、一旦待って、シャワー入ろ?」
「ちぇ。」
パッと解放されて、僕は彼が怒ったのかを伺う。いつも通りの無愛想な表情。目は映画に戻っている。
「一緒に、入る?」
機嫌をとるような僕の提案に、彼は僕をまじまじと見て、僕が自分の言葉に恥ずかしくなるまで考えてから
「やめとく。なにもかもが風呂場で完結する気しかしない。絶対楠木煽ってくるし、俺絶対手出すし」
そう笑った。
「アハハ、考えただけでのぼせそうだから1人で行くね」
ベッドで携帯を見ている椎木くんの上にゴロンと乗り掛かる。
「ぉわ、何。動けねー」
「いたずらー」
「は?」
うつ伏せの太腿あたりに跨がって、僕は両腕を彼の服の中に滑り込ませる。
「うわ、性的ないたずら?」
「そ。」
笑いながら彼の筋肉質な背中にキスをして舌を這わせた。
「おい、待て。楠木くんそれはエロすぎる」
携帯を投げて体を起こそうとする彼の肩を押さえて、更に服をまくり上げると、露出した肩甲骨に沿ってツーと舐める。
「っっ」
彼の体がピクリと震えた。
背中をわざと湿った音をたてながら舌で攻めつつ、片手を前に回して腹や胸に軽く手を滑らせて、彼の胸の先端を指先でなぞる。
「っっ!ーおいって」
指先でクリっとこねると声にならない息を継ぐ。
僕から逃れようと彼がぐっと体を起こしたせいで、彼の体の前に隙間が出来ると僕は背中への愛撫をやめずに彼の中心のものに手を這わせた。
既に硬くなっているソレを、服の上から指で挟み込むように絶妙な強さで擦る。
「っは、ぁッ」
根元の方から先端の方まで指を絡めて扱きあげると堪えきれずに呻く。背後から手をまわしているせいで、僕にとっては慣れた体勢で椎木くんにとっては完全に攻め立てられる体勢だ。
椎木くんが僕にその体勢で攻めてくる事があったから、羞恥心を煽られて焦ることも、その焦りが快感に負ける事も僕はよく知っている。
僕に感じている姿をもっと見たくて服の中に手を入れた僕は、直に硬いものを握り込んで彼の尖に溢れたものを親指ですくって尖をぬるりと擦る
たまらず喘ぐのを見て更に硬く勃った彼を上下に擦り続けると追い詰められて息が上がってくる。
背中の、彼が一番反応する所を強く舌で舐め上げて、胸の尖りも同時に指先で擦る。
「ッんッ、っツ、、おい、楠木って、、」
やがて彼は限界になったのか小さく息を継ぎながら自分の手で、彼自身を握る僕の手を止めた。
「ちょお、、楠木、勘弁して、このままイカすつもり?」
その言葉に自分の中に男の嗜虐心を微かに感じながらもゆっくりと手を離した。
彼が気まずそうに、悔しそうに髪の毛をくしゃと握りながら僕を向き直って座った。
「完全にイタズラを通り越してて我慢の限界なんだけど」
「めちゃくちゃ興奮しました。ごめんなさい!」
全く反省していない僕の笑顔をジロリと睨んで、彼は僕に手を伸ばして続きをしようと引き寄せる。
「ちょっと待って」僕は彼の肩を押して止めると、
「お願いあるんだ。」最大限の勇気を出して言う。
「お願い?何?」
「ー今日、最後までして欲しい。僕が途中で怖気付いても、、」
椎木くんは驚いた顔をしたけれど、僕の言おうとしている事がわかったようで、すぐに目を伏せて首を横に振る。
「駄目、無理」
僕は彼の両腕をぎゅっと掴んで彼の目を覗き込む。彼の動揺する瞳が僕を見返す。
「今日、決めてここに来た。
僕がどんなに椎木くんを思っていてもたぶん怖さからは抜け出せないから。
でももう充分だと思うんだよ。椎木くんは時間をかけてくれたし、僕だって最後までしたいって思ってるから」
もう一度、椎木くんは首を横に振る。
「、、それってさ、俺に、無理矢理にでもやれって事、、?」
「うん。」
「そんなの無理に決まってんじゃん。」
僕の顔を見て決意が揺るがない事を知った椎木くんの黒い瞳が、葛藤と戸惑いと少しの怒りに揺れていた。
男女の行為と違って、初めての僕たちは思い立ってすぐできるワケじゃ無い。だから僕たちは前にここに来て以来少しずつ時間をかけていた。
僕の体が椎木くんを受け入れることが出来るように、彼の指の感覚に慣れるように。そうして最後はお互いの手の中で何度も何度も果てながら。
「、、楠木、悪魔だね、、」
下を向いて手で顔を覆ってしまう彼を僕はぎゅっと抱きしめた。
「お願い。椎木くん、最後までしよう。」
椎木くんは僕の腕の中で下を向いたままだいぶ悩んでいた。そして間をおいて「わかった」と小さく言うと僕の背中に手をまわした。
暗い部屋に、ちゅ、くちゅと卑猥な音が響いて僅かにぷくりと主張した胸の尖端に甘い痺れを感じる。
同時に椎木くんの手が僕の硬く勃ち上がったものをゆっくりと扱く。それはいつもよりゆっくりとしたものなのに同時に与えられた刺激が快感を倍増させているようで、頭がふわふわとする。
「椎木く、ん、、」
「なに楠木」
椎木くんは僕の胸の尖りからわずかに口を離して囁くように返事をする。肌に彼の吐息がかかってそれだけで体がピクリと反応してしまう。
「ッんん、椎木く、ん、、もっと、、」
いつもより遅い動きを繰り返す彼の手に焦れて、僕の腰が思わず揺れてしまう。
その反応に少しだけ動きがはやめられる。
「ッア、ッあ、」
快感の奥から湧き上がる射精感に喘ぎながら、僕の足を割って間に陣取る彼の方からパチンという小さな音が聞こえたことにドキリとした。
「指入れるよ」
頷くと同時に、ヌルヌルとしたローションを掬い取った彼の指が奥の孔に侵入した。
「っんんッッ、」
反射的に腰をひいて逃げようとする僕の硬くなったものを、さっきより強く擦って、僕の意識が快感へ向くようにしながら指でグニグニと内壁をこする。
「あ、、っん、、」
体の中で蠢く強烈な違和感と、ぬちゅ、ぬちゅとローションが塗り広げられる快感で腰が浮き喘ぎは抑えようも無い。
僕の反応を見ながら椎木くんは時間をかけて指を2本に増やし、反対の手で僕のものを追い詰める。
内壁を2本の指で強く弱く擦り続けられて、それが強烈な快感になって僕を襲う。
これまでに何回も、硬くなったものへの刺激と体内での刺激を同時に与えられて来て、指への恐怖心が無くなった僕はただ吐き出したい欲求だけを追いはじめる。
刺激が強烈過ぎて、何度経験してもすぐに射精感に襲われる。
「椎木、くん、、アッ、もう、、出そ、、」
大き過ぎる快感と吐き出したい切迫感で頭の中がめちゃくちゃになりそうだった。
その時、椎木くんの指がスルリと抜かれると、奥の孔へピタリと彼のものが充てられるのを感じた。
瞬間現実に引き戻されて恐怖を感じる
「楠木、挿れるよ」
椎木くんの低い声は僕の返事を待つものじゃなかった。僕が冷静になる時間を与えないようにしていたと思う。
彼が少しの力を込めてわずかに腰を進めた。
「ッッん〝ん〝ーーッ!ッま、待って!」
彼の両手が僕の太腿を抑えていて逃げる事が出来ない事に、さっきまでの快感も射精感も忘れて恐怖心に支配される。
「ッく、楠木、落ち着いて!お願いだから、」
椎木くんが太腿を抑える手に力を込めたまま僕に言うけれど、パニックになりかけている僕は落ち着く事なんてできない。布団を力一杯握りしめて彼に訴える。
「椎木、く、、怖い、やだ、、抜いて、」
目を瞑って首を横に振る僕に少しの間じっとしていた彼は「ごめん!楠木、、」と僕に届かない呟きと共に更にゆっくりと腰を進めた。
「ッッッーー!」
声にならない叫びがもれる
「楠木、っんッ、動かないから、、頼むから力抜いて!」
「無理、、もう無理、、苦し、、つらい」
歯を食いしばりながら思う。
何で最後までして欲しいなんて言ったんだ。
少し前の自分を呪う。
怖くて苦しくて辛すぎる。
世の中に同じ事をしている人がいるなんて到底信じられない。
僕が止めた呼吸を再開して、ハッハッと短い息をしながらパニックの淵から浮上するまでの間、椎木くんはじっと動かなかった。
彼自身も締め付けられて苦しいはずで、中途半端に止められた動きたい衝動とも闘っていたはずだけど、彼はただ僕が少しでも落ち着くのを待っていた。
「楠木、息、、ゆっくり息して。体の力抜いて。」
少しずつ椎木くんの言っている言葉が頭に入って来たけれど、返事をする余裕がまだない。
心の中で“無理無理”と連呼しながら首を横に振る。
「楠木、目開けて。俺の方見て。ー好きだよ、楠木」
彼の懇願するような震える声を聞いて、僕はその時になってようやく彼を見た。
彼の瞳から涙が一筋流れていた。
その涙を見た瞬間、ハッとして体から力が抜けた僕は、自分の目からも涙が流れていた事にその時初めて気づく
僕はいつから泣いていたんだろう、、それすらもわからないほど苦痛と恐怖に苛まれていた。
「椎木、く、、」
「泣かんで楠木、ごめん。好きだよ。愛してる。」
そして彼はぐっと根元まで腰を進めた。
僕は椎木くんの抽送のたび何度も声にならない悲鳴をあげた。
それでも椎木くんは一定のはやさをまもって動きつづける。
やがてゆっくりゆっくりと彼を受け入れることに慣れた頃、、
椎木くんの引いた腰が僕の内壁を擦ってビクンッと体が跳ねた
「ッんんッッ」
彼がもう一度腰を進めた時にも何か強烈な快感を感じて体が震える。
ゆっくりした動きを繰り返す椎木くんの洩れる息遣いと小さな喘ぎが、彼の切なげに寄せる眉が、僕に快感を与えて硬くなったものの先端から雫を滴らせた。
椎木くんがもう一度手のひらで僕のものを扱き出す。
「ぅアッ、椎木くん、、気持ち、イ」
僕の言葉に、彼は動きを少しだけ早くした。
彼が腰を引くたび経験した事のない大きな快感の波が押し寄せて、彼が押し進むとまた波が押し寄せる。
「何、、コレ、、意識、飛びそ、、」
涙で視界はぼやけるし、頭も朦朧としてくる。
もういきり勃ったものも早く吐き出したいと彼の手の中でビクビクと震えている。
苦しい事に変わりはなかったけれど、恐怖や痛みは快感と引き換えに消えたようだ。
ただひたすらに彼の余裕の無さそうな表情に欲情し、彼の与える刺激に追い詰められる。
「楠木、、俺、、もうもたない、、」
彼の限界を告げる苦し気なその声が引き金になって、僕は椎木くんの手の中で果てた。
そして椎木くんも僕の最奥で果てたのだった。
2人ともぐったりとしていた。横に寝転がっている椎木くんは腕で顔を覆ったまま何も言わなかった。
「椎木くん、、ありがとう。」
「俺、楠木の涙トラウマになりそ」
「僕は椎木くんが泣いてくれて嬉しかった。言ってくれた言葉も全部嬉しかった。」
「、、はず、、俺精神ギリギリだったから」
顔を隠したまま言う彼の言葉に僕は椎木くんの事を好きになって良かったと心から思う。
彼はずっと最大限優しかった。
僕の無謀な我儘を聞き入れてくれて、泣いて苦しむ僕を解放出来ない辛さに罪悪感の涙を流してくれた。僕の心が少しでも落ち着くようにじっと時間が過ぎるのを耐えてくれた。
僕は彼がひどく愛おしくて彼に腕を回して抱き締めた。
「ごめん、椎木くんにひどい事させた。でもありがとう」
「何言ってんの、辛かったの楠木の方でしょ。」
彼も顔から腕を下ろして抱きしめてくれる。
「辛かったけど、、やっと出来て、凄い嬉しい。椎木くん大好きだよ。」
「ー楠木、ずっとそばにいて」
「うん、ずっと一緒にいよ」
僕たちはまた少し涙の浮かんだ瞳を閉じて、優しいキスをした。
(本編完
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樹くんの甘い受難の日々
生梅
BL
「やだぁ…もう、勘弁してよぉ」
「すまん。おもろくて。お前、ホント敏感な?」
「やっ…あぁ!んんっ」
「やっべ。俺、勃ってきた」
「俺も…」
男子高校生の樹(たつき)君が、気が付いたら
親友2人(+1)に愛情いっぱいに美味しくいただかれ溺愛されるお話。
性欲に溢れた高校生たちのひたすらお馬鹿な物語です。
※ムーンライトノベルズ様にて同時連載しています
※ガッツリエロシーンありますため、背後注意でございます
親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。
はちみつ電車
BL
BLはファンタジーだって神が言うから、親友が彼氏になった。付き合い始めたばかりの二人の初々しい日常。
実は、高校2年生・呂久村深月が付き合っているのはクラスメートの中性的な美少年・高崎明翔。
深月は元カノの数だけは多いものの、ずっと初恋をひきずっていたため好きな人と付き合うのは初めて。
一方の明翔は深月が初恋。片思いの頃から変わらず、ひたすらピュアにラブを贈る。
まだ自分たちの付き合い方を見つけられてもいないのに、留学していた1年の時の明翔の親友・高崎塔夜が帰国、学校に帰ってきた。
ラブラブな深月と明翔の間に遠慮なく首を突っ込む塔夜に深月のイライラが募り、自爆。
男子高校生たちがわちゃわちゃした仲良しグループの中で自分たちなりの愛し方を探していくピュアBL。
付き合うに至るまでの話▶︎BLはファンタジーだって神が言うから
*「親友」と「彼氏」ではキャラ変わっちゃう。
くすぐりフェチのゲイ社長の専属秘書になった
とら
BL
勤めていた会社が倒産し、再就職先が決まらないたかしがやっとの思いで採用された仕事は社長秘書だった。
住み込みで食費はただ、おまけに何のスキルもないたかしには破格の給与の好条件。入社数日後、たかしはこの仕事の本当の意味を知ることになる。
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