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1 真夜中の出会い
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静かな夜中の住宅街にパンッと乾いた音が響いて、同時に先週買ったばかりのメガネが吹っ飛んだ。
「っっつ、、マジか、、いって、、」
「もうエイくんには二度と会わないから!さよなら!」
「ちょっと、待って!」
頬を抑えたまま、5分前まで彼女だった人が走り去って行くのを引き止めようとして、次の瞬間にはもう諦めていた。
今引き止めたって穏便に解決しないとわかっていたし、第一メガネがふっ飛ぶほど引っ叩かれたのだ。話し合いを提案出来るほど冷静にもなれないだろう。
「あー、、やば、メガネ、、」
マンションの出入り口の灯りがあるので夜中とは言ってもそう暗くはない。それでもメガネを失って視界不良の俺は片手で頬を抑えたまま足元を見回す。そしてたった2メートルほど先に人が立っている事に気がついてギョッとした。
「っうゎっと、、びっくりした、、すみません」
「あ、いや、こちらこそ。見るつもり無かったんですけど、、はい、メガネ。」
「あ、拾ってくれたんですね!ありがとうございます!」
「えっと、、大丈夫ですか?」
メガネをかけて相手を見る。
仕事帰りらしくスーツを着ている。俺より何歳か年上だろう。タレントの何とかって人を彷彿とさせるちょっと個性的な雰囲気のイケメンだ。
「ほっぺ、切れてますよ?爪でかな?血が、、」
彼は自分の頬を指で示してから今度は俺にポケットティッシュを差し出した。
「うわマジだ、、だる、、あ、ありがとうございます。」
「そこ座って拭いたほうが、、それにしてもびっくりしました。そんなドラマみたいに女の人に殴られてる人初めて見た」
俺が花壇の縁に腰掛けてティッシュで頬を押さえる間、彼は俺を放置して立ち去ることをせずに「ついでにこれもどうぞ」と手にしていたコンビニ袋からペットボトルのお茶を取り出して俺の横に置いてくれた。
彼女を怒らせた原因の情けなさもあって、人の良い彼の親切がなんだか身に染みた。
「俺も、あんな派手に平手打ちされたの人生初っすね。あ、何から何まですみません。お兄さんめっちゃイケメンすね。」
たったの何歳かしか離れていなさそうなのに、夜中に女に殴られてる男に親切にしてくれるなんて。俺なら絶対関わり合いたくないから早足で通り過ぎる。性格も見た目もイケメンとは羨ましい、、
「いやぁたまたま、「エイくん」って呼ばれてるの聞こえてきたんで。俺も「エイくん」だから。」
「え!なんていうんですか!?あ、でも俺英って書いてあきらって読むんです。友達は皆んなエイって」
「あー、なるほど。英くんか。俺は英司。」
「英司さん、、」
「そう。で、この会社に勤めてて、残業終わったーって出てきたら目の前で君が殴られてました」
彼、英司さんはそう言って苦笑した。
「あぁ!ここの会社の!?俺上の住人なんです!なんか恥ずかしいところ見せてすみません。思いっきりふられちゃって」
ハハハと俺が笑って見せると、英司さんは一瞬迷ってから「浮気でも?」と冗談めかして聞いてきた。
俺の住んでるアパートの一階に入っている会社のひと。俺と同じ英がつくひと。
通り過ぎれば良いのに、わざわざ足を止めて心配してくれたひと。
夜中のノリなのか、変な親近感を感じたのか、俺は初対面のこの人に振られた理由を口にした。
「俺、性欲あんまり無いみたいで、彼女が誘って来てもあんまりこたえられなくて、、結局誰かと浮気してるってことになっちゃったんですよね。俺なりには大切にしていたのになぁ。」
言った後で、さすがに耳が熱くなるのを感じた。
「っっつ、、マジか、、いって、、」
「もうエイくんには二度と会わないから!さよなら!」
「ちょっと、待って!」
頬を抑えたまま、5分前まで彼女だった人が走り去って行くのを引き止めようとして、次の瞬間にはもう諦めていた。
今引き止めたって穏便に解決しないとわかっていたし、第一メガネがふっ飛ぶほど引っ叩かれたのだ。話し合いを提案出来るほど冷静にもなれないだろう。
「あー、、やば、メガネ、、」
マンションの出入り口の灯りがあるので夜中とは言ってもそう暗くはない。それでもメガネを失って視界不良の俺は片手で頬を抑えたまま足元を見回す。そしてたった2メートルほど先に人が立っている事に気がついてギョッとした。
「っうゎっと、、びっくりした、、すみません」
「あ、いや、こちらこそ。見るつもり無かったんですけど、、はい、メガネ。」
「あ、拾ってくれたんですね!ありがとうございます!」
「えっと、、大丈夫ですか?」
メガネをかけて相手を見る。
仕事帰りらしくスーツを着ている。俺より何歳か年上だろう。タレントの何とかって人を彷彿とさせるちょっと個性的な雰囲気のイケメンだ。
「ほっぺ、切れてますよ?爪でかな?血が、、」
彼は自分の頬を指で示してから今度は俺にポケットティッシュを差し出した。
「うわマジだ、、だる、、あ、ありがとうございます。」
「そこ座って拭いたほうが、、それにしてもびっくりしました。そんなドラマみたいに女の人に殴られてる人初めて見た」
俺が花壇の縁に腰掛けてティッシュで頬を押さえる間、彼は俺を放置して立ち去ることをせずに「ついでにこれもどうぞ」と手にしていたコンビニ袋からペットボトルのお茶を取り出して俺の横に置いてくれた。
彼女を怒らせた原因の情けなさもあって、人の良い彼の親切がなんだか身に染みた。
「俺も、あんな派手に平手打ちされたの人生初っすね。あ、何から何まですみません。お兄さんめっちゃイケメンすね。」
たったの何歳かしか離れていなさそうなのに、夜中に女に殴られてる男に親切にしてくれるなんて。俺なら絶対関わり合いたくないから早足で通り過ぎる。性格も見た目もイケメンとは羨ましい、、
「いやぁたまたま、「エイくん」って呼ばれてるの聞こえてきたんで。俺も「エイくん」だから。」
「え!なんていうんですか!?あ、でも俺英って書いてあきらって読むんです。友達は皆んなエイって」
「あー、なるほど。英くんか。俺は英司。」
「英司さん、、」
「そう。で、この会社に勤めてて、残業終わったーって出てきたら目の前で君が殴られてました」
彼、英司さんはそう言って苦笑した。
「あぁ!ここの会社の!?俺上の住人なんです!なんか恥ずかしいところ見せてすみません。思いっきりふられちゃって」
ハハハと俺が笑って見せると、英司さんは一瞬迷ってから「浮気でも?」と冗談めかして聞いてきた。
俺の住んでるアパートの一階に入っている会社のひと。俺と同じ英がつくひと。
通り過ぎれば良いのに、わざわざ足を止めて心配してくれたひと。
夜中のノリなのか、変な親近感を感じたのか、俺は初対面のこの人に振られた理由を口にした。
「俺、性欲あんまり無いみたいで、彼女が誘って来てもあんまりこたえられなくて、、結局誰かと浮気してるってことになっちゃったんですよね。俺なりには大切にしていたのになぁ。」
言った後で、さすがに耳が熱くなるのを感じた。
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