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7-4.夢2異世界召喚・魔王編
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眉間にぎゅっと皺を寄せて、斉藤くんの方にくるりと向き合う。
「どうしたの?」
手が胸から外れ、やや不満そうに彼が尋ねた。
「全然、私が望む方向に話が進まない!」
「ふむ。桜ちゃんの望みは?」
ちゃん付けで改めて呼ばれて、かぁっと顔が熱くなる。
「だ、大好きな斉藤くんと、いちゃいちゃすることかな」
「もうしてるじゃん。問題ないね」
照れながらも頑張って言ったのに、平然と返された。
「違うの。夢でくらい、もっとほら、最後までしてみたいっていうか、ね」
「ふぅむ」
彼は手を顎に持っていきながら何かを考える素振りを見せる。
「なんで、そんなに私の夢の斉藤くんは非積極的なの?」
「うーん。でも、そんなに望んでいることなら、夢なんかに頼らず現実世界で頑張ればいいんじゃない?」
「な……」
まさか、自分の夢に説教までされるとは。
「きっと、現実では進展しないよ。私、話だって盛り上げるの下手だし、話す機会だって、そんなにない。話題もないし、ラムネをあげるって口実も全部あげてなくなっちゃった。だから、夢くらい……」
だんだんと語尾に元気がなくなる。
「ネガティブだね」
「分かってる」
「桜ちゃんは可愛いよ」
「え、ゆ、夢のあなたに言われても」
わたわたと胸の前で手を振る私に、斉藤くんがくすくすと笑う。
笑った顔、好きだなぁ。
「それなら、デートをしよう」
「えぇ!」
夢は所詮、夢だ。守られない約束をしても、仕方がない。
「あ、夢でってこと? でも、いくら夢の中で仲良くなっても現実とは関係ないし」
「いいや、現実で。俺、休日はよく図書館で勉強しているんだよ。次の土曜の午前10時、学習室で待ち合わせ。来ないなら来ないで、いいよ。いつも通り勉強するだけだ」
「え、え」
いきなり具体的な話になった。メモをしようかと思うも、夢が覚めたら全部無くなることに気づく。
「そ、そんなの、夢が覚めたらなかったことになるんじゃ」
「魔法のラムネ、だろ? 予知みたいなものだと思って、行ってみたらいい」
「夢で予知……」
「ああ。明日はまだ金曜日だし、俺自身に聞いてみたらいい。休みの日の過ごし方をさ」
もし、彼の言うことが本当なら、このラムネ、ちょっと恐ろしい代物かもしれない。
「あんまり嬉しそうじゃないね」
「うん。もしその通りなら、異常な食べ物を食べてるんじゃないかと思って。副作用とかないのかな。話が美味しすぎる」
「そんな物を、俺に食わすなよ」
「だって、おまじない程度のものだと思ったし。私の期待が見せてるだけの偶然かな、とも」
だんだんと怖くなってきた。
「まぁ、考えても仕方ない。ほら、夢でもデートを楽しもう」
「う、うん」
彼が私の手を取って、2人で布団から下りる。
もういいか、とファンタジー風の服を想像し、魔法のようにパッと身につけた。
「あ、服着るんだ」
「うん、もうあなたヤる気ないでしょ」
「服着てる桜ちゃん、見慣れなくて落ち着かないなー」
「うるさい。ほら、デートするんでしょ。私を抱っこして、空でも飛んで?」
「空って……」
呆れたように言う、未だに角を生やしたままの魔王風斉藤くんに、悪戯っぽい顔をして、こう言ってあげた。
「実はあなた、羽も生えてるわよ?」
数秒固まって、そろーりと後ろを向く斉藤くん。
「は、はぁー!? 嘘だろ」
「あっはは! 私の妄想の中でも魔王に生えてたでしょ」
そう言って、彼の首に腕を巻きつかせて、お願いをした。
「ね? 空のデートと洒落込もうじゃなーい」
「君は、ほんと自由だね」
彼はため息をついて、私をお姫様抱っこすると、バッサバッサと飛び始めた。
「本当に飛んじゃったよ、俺……」
「夢が覚めるまで、星の下でお空デートだね」
「はいはい、お姫様」
そうして私たちは、夢が覚めるまでお空デートを楽しんだ。
「どうしたの?」
手が胸から外れ、やや不満そうに彼が尋ねた。
「全然、私が望む方向に話が進まない!」
「ふむ。桜ちゃんの望みは?」
ちゃん付けで改めて呼ばれて、かぁっと顔が熱くなる。
「だ、大好きな斉藤くんと、いちゃいちゃすることかな」
「もうしてるじゃん。問題ないね」
照れながらも頑張って言ったのに、平然と返された。
「違うの。夢でくらい、もっとほら、最後までしてみたいっていうか、ね」
「ふぅむ」
彼は手を顎に持っていきながら何かを考える素振りを見せる。
「なんで、そんなに私の夢の斉藤くんは非積極的なの?」
「うーん。でも、そんなに望んでいることなら、夢なんかに頼らず現実世界で頑張ればいいんじゃない?」
「な……」
まさか、自分の夢に説教までされるとは。
「きっと、現実では進展しないよ。私、話だって盛り上げるの下手だし、話す機会だって、そんなにない。話題もないし、ラムネをあげるって口実も全部あげてなくなっちゃった。だから、夢くらい……」
だんだんと語尾に元気がなくなる。
「ネガティブだね」
「分かってる」
「桜ちゃんは可愛いよ」
「え、ゆ、夢のあなたに言われても」
わたわたと胸の前で手を振る私に、斉藤くんがくすくすと笑う。
笑った顔、好きだなぁ。
「それなら、デートをしよう」
「えぇ!」
夢は所詮、夢だ。守られない約束をしても、仕方がない。
「あ、夢でってこと? でも、いくら夢の中で仲良くなっても現実とは関係ないし」
「いいや、現実で。俺、休日はよく図書館で勉強しているんだよ。次の土曜の午前10時、学習室で待ち合わせ。来ないなら来ないで、いいよ。いつも通り勉強するだけだ」
「え、え」
いきなり具体的な話になった。メモをしようかと思うも、夢が覚めたら全部無くなることに気づく。
「そ、そんなの、夢が覚めたらなかったことになるんじゃ」
「魔法のラムネ、だろ? 予知みたいなものだと思って、行ってみたらいい」
「夢で予知……」
「ああ。明日はまだ金曜日だし、俺自身に聞いてみたらいい。休みの日の過ごし方をさ」
もし、彼の言うことが本当なら、このラムネ、ちょっと恐ろしい代物かもしれない。
「あんまり嬉しそうじゃないね」
「うん。もしその通りなら、異常な食べ物を食べてるんじゃないかと思って。副作用とかないのかな。話が美味しすぎる」
「そんな物を、俺に食わすなよ」
「だって、おまじない程度のものだと思ったし。私の期待が見せてるだけの偶然かな、とも」
だんだんと怖くなってきた。
「まぁ、考えても仕方ない。ほら、夢でもデートを楽しもう」
「う、うん」
彼が私の手を取って、2人で布団から下りる。
もういいか、とファンタジー風の服を想像し、魔法のようにパッと身につけた。
「あ、服着るんだ」
「うん、もうあなたヤる気ないでしょ」
「服着てる桜ちゃん、見慣れなくて落ち着かないなー」
「うるさい。ほら、デートするんでしょ。私を抱っこして、空でも飛んで?」
「空って……」
呆れたように言う、未だに角を生やしたままの魔王風斉藤くんに、悪戯っぽい顔をして、こう言ってあげた。
「実はあなた、羽も生えてるわよ?」
数秒固まって、そろーりと後ろを向く斉藤くん。
「は、はぁー!? 嘘だろ」
「あっはは! 私の妄想の中でも魔王に生えてたでしょ」
そう言って、彼の首に腕を巻きつかせて、お願いをした。
「ね? 空のデートと洒落込もうじゃなーい」
「君は、ほんと自由だね」
彼はため息をついて、私をお姫様抱っこすると、バッサバッサと飛び始めた。
「本当に飛んじゃったよ、俺……」
「夢が覚めるまで、星の下でお空デートだね」
「はいはい、お姫様」
そうして私たちは、夢が覚めるまでお空デートを楽しんだ。
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