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甘い蜜
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Side:クリスティーナ
「あいつは、俺から何もかも奪うつもりだ」
最近恒例となった昼休み、いつもよりも険しそうな顔をしながらアレは呟く。
「……何を奪われるのですか?」
「私から生徒会長という座すらも奪い取ろうとしているらしい」
まず自分が生徒会長に選ばれるという自信はどこから来るのか問いただしたい……理解できないし、面倒なだけだから別にいらないかも。むしろ聞きたくなくなってきた。
そもそもこの学園の生徒会長は、成績が学年1位のものがやる事に決まっている。今目の前の人物がなぜか奇跡的に候補に上がっているのは王族が入学していた時には必ず生徒会長は王族だったという記録が残っていたからだ。
しかし、もちろん王族だから選ばれていたというわけではない。歴代の王族は必ず成績を残していた。今のアインも同様に1位を取り続けている。例外はこの男だけなのである。
そんな事を知らない、知ろうとしない、わからないの三拍子が揃った目の前の人物は努力もせず、ただ日々の文句を垂れるだけ。
生徒会長になったら、この成績だけでクラスを分けるとい制度を辞めさせるとか言うんだろうな~。
「私が生徒会長になり、この忌々しいクラス分けを廃止してやる」
やっぱり……。この人は上に立ってはいけない人物だ。何をするにしても自分の事しか考えていない。した後の事を考えない。ただ無責任に自分のしたい事をするだけ……。
なぜこの人を担ぎ上げようとする人が一定数いるのかわからない。本当に操り人形にできると思っているのだろうか?
アレが国王になるということは、子供に大きいオモチャを与えるようなものです。振り回し、叩きつけ、踏み潰す。その被害を受けるのは国であり、民であるという事がまだ理解できないらしい。いや気にしてもいないのだろう。
こういう人たちこそ上手く行かなければお姉様のせいにするのだろう。ちゃんと支えないからだとかなんとか言って、全てをお姉様に押し付ける。
「デン……デン! 聞いているのか?」
「ああ、すいません、少し疲れが……」
「昨日もやられたんだな! おのれ、非道な奴め」
勝手に勘違いしてお姉様の悪口を言い始める。今はそれでもいいか。もう相手にするのも疲れた。
永遠と聞かせられる愚痴。もしくは自慢にもならないアレ自信の自慢話。よくゲームのクリスティーナは我慢して聞いていたなと思う。
私は1週間で辛くなってお姉様に泣きついたほどだ。もう辞めていいよと言われたけれど、それじゃあ私もお姉様に 押し付ける事になってしまう。
「……お姉様はどうして多くの人に慕われているのでしょうか?」
「あんな奴が慕われているだと! 違う! 権力を振り翳して周りを黙らせているだけだ!」
「(どの口が……)コホンッ、お姉様の持っている権力は殿下よりも下ですよね?」
「ああ、それなのにあいつは……」
「お姉様が殿下と同等でいられるのは、殿下の持つ権力と同じものをお姉様が持っているからだと私は思うんです」
「あいつが私と同じものを持っているだと! それはなんだ!」
はぁ。ここまで言ってまだわかりませんか。そうですか。仕方ないですね。
私はアレにそっと顔を寄せて耳元でささやく。
「未来の王妃という立場ですよ」
「王妃……」
「はい。王と対となる存在。それが王妃です。お姉様が殿下と同等な理由なんてこれ以外考えられますか?」
「いや……ない」
本気でそう思っているのが本当に残念ですね。正直に言って無理があるかなと思っていましたが、まさか『ない』と言い切られるとは……
「はい。殿下が忌まわしく思っている存在……それを殿下自身で無くせばいいのです。その方法はとても簡単なのですから」
「……簡単」
「はい。その方法は……」
私は甘い蜜に誘うように、アレが1番望んでいるであろう言葉を告げる。
「お姉様と婚約破棄をすればいいのですよ」
これで罰せられるのはアレのみ。お姉様は晴れて自由の身。
「そうか! ありがとうデン!」
2人は見つめ合い、笑い合う。その様子はまさに恋人のようだった。
「あいつは、俺から何もかも奪うつもりだ」
最近恒例となった昼休み、いつもよりも険しそうな顔をしながらアレは呟く。
「……何を奪われるのですか?」
「私から生徒会長という座すらも奪い取ろうとしているらしい」
まず自分が生徒会長に選ばれるという自信はどこから来るのか問いただしたい……理解できないし、面倒なだけだから別にいらないかも。むしろ聞きたくなくなってきた。
そもそもこの学園の生徒会長は、成績が学年1位のものがやる事に決まっている。今目の前の人物がなぜか奇跡的に候補に上がっているのは王族が入学していた時には必ず生徒会長は王族だったという記録が残っていたからだ。
しかし、もちろん王族だから選ばれていたというわけではない。歴代の王族は必ず成績を残していた。今のアインも同様に1位を取り続けている。例外はこの男だけなのである。
そんな事を知らない、知ろうとしない、わからないの三拍子が揃った目の前の人物は努力もせず、ただ日々の文句を垂れるだけ。
生徒会長になったら、この成績だけでクラスを分けるとい制度を辞めさせるとか言うんだろうな~。
「私が生徒会長になり、この忌々しいクラス分けを廃止してやる」
やっぱり……。この人は上に立ってはいけない人物だ。何をするにしても自分の事しか考えていない。した後の事を考えない。ただ無責任に自分のしたい事をするだけ……。
なぜこの人を担ぎ上げようとする人が一定数いるのかわからない。本当に操り人形にできると思っているのだろうか?
アレが国王になるということは、子供に大きいオモチャを与えるようなものです。振り回し、叩きつけ、踏み潰す。その被害を受けるのは国であり、民であるという事がまだ理解できないらしい。いや気にしてもいないのだろう。
こういう人たちこそ上手く行かなければお姉様のせいにするのだろう。ちゃんと支えないからだとかなんとか言って、全てをお姉様に押し付ける。
「デン……デン! 聞いているのか?」
「ああ、すいません、少し疲れが……」
「昨日もやられたんだな! おのれ、非道な奴め」
勝手に勘違いしてお姉様の悪口を言い始める。今はそれでもいいか。もう相手にするのも疲れた。
永遠と聞かせられる愚痴。もしくは自慢にもならないアレ自信の自慢話。よくゲームのクリスティーナは我慢して聞いていたなと思う。
私は1週間で辛くなってお姉様に泣きついたほどだ。もう辞めていいよと言われたけれど、それじゃあ私もお姉様に 押し付ける事になってしまう。
「……お姉様はどうして多くの人に慕われているのでしょうか?」
「あんな奴が慕われているだと! 違う! 権力を振り翳して周りを黙らせているだけだ!」
「(どの口が……)コホンッ、お姉様の持っている権力は殿下よりも下ですよね?」
「ああ、それなのにあいつは……」
「お姉様が殿下と同等でいられるのは、殿下の持つ権力と同じものをお姉様が持っているからだと私は思うんです」
「あいつが私と同じものを持っているだと! それはなんだ!」
はぁ。ここまで言ってまだわかりませんか。そうですか。仕方ないですね。
私はアレにそっと顔を寄せて耳元でささやく。
「未来の王妃という立場ですよ」
「王妃……」
「はい。王と対となる存在。それが王妃です。お姉様が殿下と同等な理由なんてこれ以外考えられますか?」
「いや……ない」
本気でそう思っているのが本当に残念ですね。正直に言って無理があるかなと思っていましたが、まさか『ない』と言い切られるとは……
「はい。殿下が忌まわしく思っている存在……それを殿下自身で無くせばいいのです。その方法はとても簡単なのですから」
「……簡単」
「はい。その方法は……」
私は甘い蜜に誘うように、アレが1番望んでいるであろう言葉を告げる。
「お姉様と婚約破棄をすればいいのですよ」
これで罰せられるのはアレのみ。お姉様は晴れて自由の身。
「そうか! ありがとうデン!」
2人は見つめ合い、笑い合う。その様子はまさに恋人のようだった。
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