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噂話

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Side:クリスティーナ

 クリスティーナは学園で時間がある時にはアレに会いに行き、自分の話を聞かせていた。

「部屋で制服を着ていると急に脱がされたり……」
 ――お姉様の部屋で、お姉様の制服を…ですけどね。

「部屋で寝ていたら突然叩き起こされたり……」
 ――これもお姉様の部屋で思わず寝てしまったらアンに叩き起こされたんだっけ。その後お母様に突き出されたのよね。

「それでご飯を抜きにされたこともありました」
 ――私が一向に反省しないことに、お母様がご飯かお姉様の部屋に入る事の二択を迫って来ました。
 もちろん私が選んだのはお姉様の部屋に入る事です。後は本当にご飯を抜かれ、お母様は部屋に入っても何も言わなくなりました。

「……虐待じゃないか」

 何日か経った日、今まで黙って聞いていた殿下がワナワナと震えながら呟く。

「どうしてそうまでされて我慢する! 家族は! 誰も君を助けてくれないのか!?」
「助けてなんてくれません。だって、それは……すべて私が悪いのですから」

 クリスティーナは儚げに笑って見せる。が、最後の言葉に関しては事実である。
 それを知らない彼はただか弱い少女に見えた事だろう。

「待っていろ、必ず俺がそこから救い出してやる」
「……期待していますね」
「ああ!」

 という話をアレとした次の日、私はお父様とお母様に呼び出されていた。2人が揃ってという事は初めてなので少しドキドキする。
 それに、この場にはお姉様がいない。呼び出されるならお姉様関係だと思っていたのに、そうでないとするなら恐ろしくもある。

 ――お姉様の私物をすり替えたのがバレたのか、それともお姉様のもう着ないドレスを私ようにアレンジした事がバレたか、まだあるけど、とりあえず自分からボロを出さないようにしないと

「今日呼んだのは第一王子の事に関してだ」

 お父様のその言葉に内心ホッとする。その内容なら問題ない。新しく叱られる事はない。
 私はジーッと見つめるお母様の目を見ないように逸らしながらそう思った。

 最近、王城でこんな話題が溢れてるんだが、知っている事をぜんぶ話しなさい。
 そう言ってお父様は資料の束を私に見せて来る。王城の話題なんて私が知るわけがないのに……そう思いながら資料を手に持ち、目を通す。その瞬間に冷や汗が流れるのを感じる。
 なんとか誤魔化さないと……

「ごめ「黒のようですね」……ちょっと待ってお母様、素直に謝るだけかもしれないじゃない! 判定するのが早すぎます!」
「でも、誤魔化そうとしたでしょう?」
「それは……そうですけど……けど……ううっ」

 お母様が居なければ誤魔化せたかもしれないのに、お母様にはいつも嘘が通じない。ゲームの設定では無かったけど、私の嘘がわかる能力はもしかしてお母様譲り?
 それはちょっとまずいかも……

「殿下がね、王城で言いふらしているんだよ。ティアが虐待されているってね。幸運な事に有能な者は誰も信じていなかったけどね。それで? ティアは一体何を言ったんだい? 」
「家で監視されてるだったり、部屋で寝ていたら叩き起こされたり……です」

 お父様は私の話を聞いてお母様の顔を見る。そんな事をしているのか? そう思っているのならまずいかもしれない。私のせいで家族関係が悪化するのは嫌すぎる!

「お父様! あのっ「そこまでなのか……」……ちょっと待ってくださいお父様、それはどういう意味ですか!」
「ティアがリリに対して姉妹という感情以上を持っている事は知っている。それでもまだ常識の範囲内だと思って放置していたのだが……監視されるほどなのか……」
「……お父様、一つお聞きしたいのですが、もし私がお姉様に虐められた。そう言ったらどういう対応をしますか?」
「リリがティアを? そうだな……とりあえずティアに何をされたかを確認してからだな」

 ゲームの中の両親はどこかお姉様に無関心だった。薄情というわけではない。なんでも完璧にこなすお姉様が何も言わないので、あの子なら大丈夫だろう、そう思っていたからだと思う。
 だから、こうしてお姉様にしっかりと確認を取るという言葉は嬉しく思う。だけど――

 私の信頼がなさすぎて少し複雑です。
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