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妹
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Side:クリスティーナ
スフィアの突発的な発言に誰もが驚く中、クリスティーナだけが冷静に彼女を見ていた。
お姉様は勘違いしているけれど、クリスティーナに人の本音を話させる能力などない。ただわかるだけ。相手が嘘をついているのか、本当の事を言っているのか、後はその人の悪意。それが漠然とわかるだけであって、心に働きかけるようなことは何もできない。
だからこそ、アインやレオニクスは事実と嘘を入れ混じって話すので好きではない。そして、今目の前にいるスフィアは本気でお姉様に妹にしてほしいと思っている。
「えっ、え~と、それはちょっと難しい……かな?」
「そんなっ!? この子はよくてどうしてワタクシはダメなのでしょうか!」
「この子はって……ティア、自分の名前言ってないの?」
あっ、そういえば名乗っていませんでしたね。学園で自己紹介の時間がないな~とは思っていましたが、ここに通うのは貴族ばかりなのでほとんどが顔見知りなのでした。
「……忘れていました」
「もう……、でもこれも私のせいなのよね。ごめんなさい……」
何故だかわからないが、リリアが目に見えて落ち込んだことに、少し慌てながらもスフィアとその周りの生徒たちは「なんとかしなさい」と言いたげにクリスティーナを見る。
その視線を受けたからではないが、クリスティーナもどうすれば良いかを考え、あるシンプルな答えに行き着いた。
「お姉様のせいではありません。実際、自己紹介という当たり前のことをしていなかった私が悪いのですから。では改めまして、私の名前はクリスティーナ・ローズ……ローズ公爵家次女であり、リリアお姉様の実の妹です」
自己紹介をして煽る。クリスティーナは自分がリリアの実の妹であることをスフィアが悔しがると思っていた。
しかし、その予想は大きく外れる。
誰も何も反応しないことに不思議に思い、スフィアたちをよくよく観察してみると、みんな同じように顔を青くしている。スフィアに関しては青を通り越して白く見える。
「ど、どう「申し訳ありませんでした」……ぇ?」
予想外の反応にテンパったクリスティーナは理由を尋ねようとして急に謝れたことに、小さく戸惑いの声が漏れる。
謝られることをされた覚えはない。実の妹の前で妹にしてくださいと言ったから? それならそもそも他所の家に妹にしてくれというのはどうかと思うけど、それならお姉様によね?
「どういう「公爵家の方なのに、散々酷い事を言いましたわ。けれど、その責任は私のみ。他の子たちは私について来ただけです! どうか罰は私だけにお願いします!」……せめて最後まで言わせて」
聞きたいことはそこだったけどさあ~。まぁいいや、なるほど、自分が上のように振る舞っていたからもしかするとって思ったのね。
もし、私がお父様にこの事を言ったらローズ公爵家とヴィンセント侯爵家の関係が悪化してどちらかもしくは両方の経済が……なんて、そんな事をすればお姉様に怒られた後にお母様にコッテリ絞られるだけで、私にとってメリットが何一つない。
「謝る必要はありません。事情があって社交界にでいなかった事を失念し、挨拶をしなかった私にも責任はあります。それに、交流の為に見ず知らずの私に話しかける貴女の事をすごいと思っていたのよ? ただ、私がお姉様を優先しようとしただけで……謝るのは私の方だわ。ごめんなさい」
「いえ! 謝らないでください! その……これからも仲良くしていただけるのでしょうか……?」
「はい。もちろんです」
やらないといけないことが沢山あるとはいえ、同年代の友達が欲しくないわけじゃない。この誘いはまさに渡に船だった。
「ありがとうございます。では、これからもよろしくお願いしますわね。リリアお姉様も!」
そう言ってお姉様に抱きつこうとする彼女を、ギリギリの所で制服を掴むことに成功する。
「離してくださいまし!」
この子、案外図太いというか……そんなことさせる訳ないじゃない。
結局、今回は諦めさせることに成功したが、これからも隙が有ればお姉様を狙ってくるだろう。
お姉様の妹は私だけなんだから!
スフィアの突発的な発言に誰もが驚く中、クリスティーナだけが冷静に彼女を見ていた。
お姉様は勘違いしているけれど、クリスティーナに人の本音を話させる能力などない。ただわかるだけ。相手が嘘をついているのか、本当の事を言っているのか、後はその人の悪意。それが漠然とわかるだけであって、心に働きかけるようなことは何もできない。
だからこそ、アインやレオニクスは事実と嘘を入れ混じって話すので好きではない。そして、今目の前にいるスフィアは本気でお姉様に妹にしてほしいと思っている。
「えっ、え~と、それはちょっと難しい……かな?」
「そんなっ!? この子はよくてどうしてワタクシはダメなのでしょうか!」
「この子はって……ティア、自分の名前言ってないの?」
あっ、そういえば名乗っていませんでしたね。学園で自己紹介の時間がないな~とは思っていましたが、ここに通うのは貴族ばかりなのでほとんどが顔見知りなのでした。
「……忘れていました」
「もう……、でもこれも私のせいなのよね。ごめんなさい……」
何故だかわからないが、リリアが目に見えて落ち込んだことに、少し慌てながらもスフィアとその周りの生徒たちは「なんとかしなさい」と言いたげにクリスティーナを見る。
その視線を受けたからではないが、クリスティーナもどうすれば良いかを考え、あるシンプルな答えに行き着いた。
「お姉様のせいではありません。実際、自己紹介という当たり前のことをしていなかった私が悪いのですから。では改めまして、私の名前はクリスティーナ・ローズ……ローズ公爵家次女であり、リリアお姉様の実の妹です」
自己紹介をして煽る。クリスティーナは自分がリリアの実の妹であることをスフィアが悔しがると思っていた。
しかし、その予想は大きく外れる。
誰も何も反応しないことに不思議に思い、スフィアたちをよくよく観察してみると、みんな同じように顔を青くしている。スフィアに関しては青を通り越して白く見える。
「ど、どう「申し訳ありませんでした」……ぇ?」
予想外の反応にテンパったクリスティーナは理由を尋ねようとして急に謝れたことに、小さく戸惑いの声が漏れる。
謝られることをされた覚えはない。実の妹の前で妹にしてくださいと言ったから? それならそもそも他所の家に妹にしてくれというのはどうかと思うけど、それならお姉様によね?
「どういう「公爵家の方なのに、散々酷い事を言いましたわ。けれど、その責任は私のみ。他の子たちは私について来ただけです! どうか罰は私だけにお願いします!」……せめて最後まで言わせて」
聞きたいことはそこだったけどさあ~。まぁいいや、なるほど、自分が上のように振る舞っていたからもしかするとって思ったのね。
もし、私がお父様にこの事を言ったらローズ公爵家とヴィンセント侯爵家の関係が悪化してどちらかもしくは両方の経済が……なんて、そんな事をすればお姉様に怒られた後にお母様にコッテリ絞られるだけで、私にとってメリットが何一つない。
「謝る必要はありません。事情があって社交界にでいなかった事を失念し、挨拶をしなかった私にも責任はあります。それに、交流の為に見ず知らずの私に話しかける貴女の事をすごいと思っていたのよ? ただ、私がお姉様を優先しようとしただけで……謝るのは私の方だわ。ごめんなさい」
「いえ! 謝らないでください! その……これからも仲良くしていただけるのでしょうか……?」
「はい。もちろんです」
やらないといけないことが沢山あるとはいえ、同年代の友達が欲しくないわけじゃない。この誘いはまさに渡に船だった。
「ありがとうございます。では、これからもよろしくお願いしますわね。リリアお姉様も!」
そう言ってお姉様に抱きつこうとする彼女を、ギリギリの所で制服を掴むことに成功する。
「離してくださいまし!」
この子、案外図太いというか……そんなことさせる訳ないじゃない。
結局、今回は諦めさせることに成功したが、これからも隙が有ればお姉様を狙ってくるだろう。
お姉様の妹は私だけなんだから!
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