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争い続ける理由
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アイリスが考えた策。それは争いに乗じてこちらが食糧を置き、そしてそれを向こうの軍が回収する。そういった内容だ。
何故そんな事を我が国がしなければいけないのか。もちろん無償ではしていない。それなりの対価は得ている。
……黒字とは言えないが、目くじらを立てる程ではない。
ならどうしてこんな面倒な形式を取るのか。その理由がニーナ姫の父親……北の国の王の要望だったからだ。
別に受ける必要はない。だが、俺たちは承諾した。未だ北の国と争っていると言う情報を流すことで、周りの国の動向を観察できる。さらにはこれ幸いにと襲って来るような者たちを返り討ちにする事ができるという算段だ。
「……そんな事が……じゃ、じゃが何故父上はそんな事を……妾の国が争いを続ける理由なんてないじゃろ……父上にはどのようなお考えが……」
「あー……うん。そうだな……」
ここでプライドの話しが出て来る。自分達から戦争を仕掛けておいて、援助を願い出るなど恥ずかしくてできない。だから表面上は争いを続けたままでなんとか物資を渡してほしい。
そんな我儘な内容を娘には聞かせられないだろう。さて、なんと言ったらいいものか……。
「『自分達から戦争を仕掛けておいて、援助を願い出るなど恥ずかしくてできない。だから表面上は争いを続けたままでなんとか物資を渡してほしい』だ、そうですよ?」
「……アイリス」
「隠していても仕方のない事です。こちらの利点も伝えさせてもらいました。後はニーナ様がどのように思われるかだけですから」
確かにそうなのだが、そんなにあっさりとしていいものなのだろうか。俺が考えすぎなのか?
「アイン様は考えすぎです。そもそもこれは他国の問題。それほど首を突っ込むべきではありません」
「……それもそうか」
「問題が出るとしたらこれからです。そうなった場合は首を突っ込む他ありません」
「これから?」
これから……この件はあの王が自分のプライドを守るために自分の娘に話していなかった。それで終わりではないのか?
「ニーナ姫が何者かに嘘を教えられていた。黙っているように言われたが、正義感の強いニーナ様は1人で行動しようと決心しここへ来た。ただの私の推測ですが、可能性は高いのではないでしょうか」
なるほど……ニーナ姫を疑心暗鬼にさせようとして失敗したか。アイリスがそう言うのだ。完璧に当たっていなくても、近しい事は起きているのだろう。
……ほんと、俺と同じ情報を見ているのに、どうしてそこまで想像もつかない予測できるんだろうな。
その推察力は少し……いや、かなり羨ましいと思ってしまう。
「……私はアイン様の『争いを隠れ蓑にするぐらいならいっそ、模擬刀を使って訓練形式で行おう』という考えは思いつきませんでした。これからもこんな感じで補っていけるんじゃありませんか?」
俺を見て、アイリスはにっこりと微笑んだ。羨ましい……その気持ちがなくなる事はない。だが、アイリスはずっと俺の隣に居てくれる。そう言ってくれているのだ。嬉しくないはずがない。
心のモヤを晴らしてくれたアイリスに感謝しつつ、俺はこれからの事を考え始めた。
何故そんな事を我が国がしなければいけないのか。もちろん無償ではしていない。それなりの対価は得ている。
……黒字とは言えないが、目くじらを立てる程ではない。
ならどうしてこんな面倒な形式を取るのか。その理由がニーナ姫の父親……北の国の王の要望だったからだ。
別に受ける必要はない。だが、俺たちは承諾した。未だ北の国と争っていると言う情報を流すことで、周りの国の動向を観察できる。さらにはこれ幸いにと襲って来るような者たちを返り討ちにする事ができるという算段だ。
「……そんな事が……じゃ、じゃが何故父上はそんな事を……妾の国が争いを続ける理由なんてないじゃろ……父上にはどのようなお考えが……」
「あー……うん。そうだな……」
ここでプライドの話しが出て来る。自分達から戦争を仕掛けておいて、援助を願い出るなど恥ずかしくてできない。だから表面上は争いを続けたままでなんとか物資を渡してほしい。
そんな我儘な内容を娘には聞かせられないだろう。さて、なんと言ったらいいものか……。
「『自分達から戦争を仕掛けておいて、援助を願い出るなど恥ずかしくてできない。だから表面上は争いを続けたままでなんとか物資を渡してほしい』だ、そうですよ?」
「……アイリス」
「隠していても仕方のない事です。こちらの利点も伝えさせてもらいました。後はニーナ様がどのように思われるかだけですから」
確かにそうなのだが、そんなにあっさりとしていいものなのだろうか。俺が考えすぎなのか?
「アイン様は考えすぎです。そもそもこれは他国の問題。それほど首を突っ込むべきではありません」
「……それもそうか」
「問題が出るとしたらこれからです。そうなった場合は首を突っ込む他ありません」
「これから?」
これから……この件はあの王が自分のプライドを守るために自分の娘に話していなかった。それで終わりではないのか?
「ニーナ姫が何者かに嘘を教えられていた。黙っているように言われたが、正義感の強いニーナ様は1人で行動しようと決心しここへ来た。ただの私の推測ですが、可能性は高いのではないでしょうか」
なるほど……ニーナ姫を疑心暗鬼にさせようとして失敗したか。アイリスがそう言うのだ。完璧に当たっていなくても、近しい事は起きているのだろう。
……ほんと、俺と同じ情報を見ているのに、どうしてそこまで想像もつかない予測できるんだろうな。
その推察力は少し……いや、かなり羨ましいと思ってしまう。
「……私はアイン様の『争いを隠れ蓑にするぐらいならいっそ、模擬刀を使って訓練形式で行おう』という考えは思いつきませんでした。これからもこんな感じで補っていけるんじゃありませんか?」
俺を見て、アイリスはにっこりと微笑んだ。羨ましい……その気持ちがなくなる事はない。だが、アイリスはずっと俺の隣に居てくれる。そう言ってくれているのだ。嬉しくないはずがない。
心のモヤを晴らしてくれたアイリスに感謝しつつ、俺はこれからの事を考え始めた。
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