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牢屋生活
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私の目の前には、絶対に会うことはできないと思っていた人物が笑顔で座っている。
「希望していた牢屋の中はどうかな?」
「ええ、とても満足しています。とてもいい服に、監視の人はなぜか私が知っている侍女さんで、とても甘やかして頂いておりますし、ええ、この紅茶もとても美味しくて、あとはこの場所だけ答えてくれれば嬉しいのですけれど…」
「残念ながらそれはできない相談だ。まぁ、賢い君なら大体の検討はついているのだろう?」
「……やっぱり、リオン様は意地悪です」
わかっていたけど、答えてくれない。けれど、リオン様の言う通り、検討はついている。というよりも、根拠が目の前にいる。
「リオン様って、王族ですよね?」
「ああ、私はこの国の第五王子だよ。それで?」
「ここは王城のどこか一室じゃないんですか?」
リオン様はニコリと笑う。当たり…ということでいいんでしょう。
そもそも、罪人である私にとって、この状況がまずおかしいのです。
本来、私は今ごろ服とは呼べないようなボロボロの衣服を纏い、食事もまともに取らせてもらえず、ただひたすらに誰かに監視されながら、ビクビクと自分に下される処罰を待っているはずなのです。
そうなるはず…だったのに、どうしたらお姉様といた時よりも豪華な意匠が施された服を纏い、質素な食事どころか、豪華な食事が出されるのでしょうか?
そもそも昨日の時点からおかしかったのです。父たちが入っている馬車に乗ろうとすると騎士様に止められ、その後ろの馬車に誘導されてしまいました。最初は父たちと一緒にしないよう、エヴァンス公爵が配慮してくれたのかと思っていたのですが、中は普通の内装をしており、どう考えても罪人が使うようなものではない。
間違ったのかと思い、もう一度、騎士様に確認しようとすると、後ろから来たドーラに無理矢理押し込まれてしまった。
「ドーラ! 私が使う馬車は別なのでは!?」
「いいえ、アリシア様の乗る予定の馬車はこれで間違えではありませんよ?」
絶対嘘だ。だって、顔がすごい笑顔なのだもの。これは絶対何か企んでいる。
「ですが、これだけはしておいてください」
そう言って、目隠しをされる。見られてはいけない場所…本当に私をどこに連れて行くつもりなのだろう。普通の牢屋なら、父たちと同じようにすればいいだけの話であり、目隠しなどする必要は全くない。
正直、怖い。少なくとも私は酷くて国外追放であり、命を取られることはないのではないかと少し考えていた。けれど、この真っ暗な空間では悪い方にしか考えれない。
「さすがのアリシア様も怖いですか?」
「ええ、もちろん怖いわ」
体が恐怖で震える。けれど、私の手をドーラが握ってくれる。
「申し訳ありません。信じて…もらえないかもしれませんが、アリシア様を害そうとするつもりは毛頭ないのです。それだけはわかっていてください」
「わかっている、つもりなのだけどね。流石にこう、真っ暗だと不安になっちゃうの」
「それならば、到着するまで、ずっと私が手を握っていてもよろしいでしょうか?」
「…お願い」
「はい。かしこまりました」
そのままずっとドーラに手を握ってもらって、馬車が止まったと思ったら、ドーラに抱え上げられ、この部屋に連れてこられてしまった。
驚いたのは部屋の内装にもなのですけど、特に部屋についた後のソニアの言葉にです。
「ようこそ、アリシア様。私はあなた様の監視役を買って出ましたソニアと申します。何か食べたいものや飲みたいもおがあればいつでもお呼びください。それと、この場所の質問に関しては答えることができませんので、ご容赦ください」
矛盾だらけです。まず、私の監視役はわかるのですが、買って出るとはどういうことでしょうか。それに、いつでもお呼びくださいは、罪人に使う言葉じゃないのです。それじゃあ、普通の御令嬢と変わらない生活じゃないですか!?
「希望していた牢屋の中はどうかな?」
「ええ、とても満足しています。とてもいい服に、監視の人はなぜか私が知っている侍女さんで、とても甘やかして頂いておりますし、ええ、この紅茶もとても美味しくて、あとはこの場所だけ答えてくれれば嬉しいのですけれど…」
「残念ながらそれはできない相談だ。まぁ、賢い君なら大体の検討はついているのだろう?」
「……やっぱり、リオン様は意地悪です」
わかっていたけど、答えてくれない。けれど、リオン様の言う通り、検討はついている。というよりも、根拠が目の前にいる。
「リオン様って、王族ですよね?」
「ああ、私はこの国の第五王子だよ。それで?」
「ここは王城のどこか一室じゃないんですか?」
リオン様はニコリと笑う。当たり…ということでいいんでしょう。
そもそも、罪人である私にとって、この状況がまずおかしいのです。
本来、私は今ごろ服とは呼べないようなボロボロの衣服を纏い、食事もまともに取らせてもらえず、ただひたすらに誰かに監視されながら、ビクビクと自分に下される処罰を待っているはずなのです。
そうなるはず…だったのに、どうしたらお姉様といた時よりも豪華な意匠が施された服を纏い、質素な食事どころか、豪華な食事が出されるのでしょうか?
そもそも昨日の時点からおかしかったのです。父たちが入っている馬車に乗ろうとすると騎士様に止められ、その後ろの馬車に誘導されてしまいました。最初は父たちと一緒にしないよう、エヴァンス公爵が配慮してくれたのかと思っていたのですが、中は普通の内装をしており、どう考えても罪人が使うようなものではない。
間違ったのかと思い、もう一度、騎士様に確認しようとすると、後ろから来たドーラに無理矢理押し込まれてしまった。
「ドーラ! 私が使う馬車は別なのでは!?」
「いいえ、アリシア様の乗る予定の馬車はこれで間違えではありませんよ?」
絶対嘘だ。だって、顔がすごい笑顔なのだもの。これは絶対何か企んでいる。
「ですが、これだけはしておいてください」
そう言って、目隠しをされる。見られてはいけない場所…本当に私をどこに連れて行くつもりなのだろう。普通の牢屋なら、父たちと同じようにすればいいだけの話であり、目隠しなどする必要は全くない。
正直、怖い。少なくとも私は酷くて国外追放であり、命を取られることはないのではないかと少し考えていた。けれど、この真っ暗な空間では悪い方にしか考えれない。
「さすがのアリシア様も怖いですか?」
「ええ、もちろん怖いわ」
体が恐怖で震える。けれど、私の手をドーラが握ってくれる。
「申し訳ありません。信じて…もらえないかもしれませんが、アリシア様を害そうとするつもりは毛頭ないのです。それだけはわかっていてください」
「わかっている、つもりなのだけどね。流石にこう、真っ暗だと不安になっちゃうの」
「それならば、到着するまで、ずっと私が手を握っていてもよろしいでしょうか?」
「…お願い」
「はい。かしこまりました」
そのままずっとドーラに手を握ってもらって、馬車が止まったと思ったら、ドーラに抱え上げられ、この部屋に連れてこられてしまった。
驚いたのは部屋の内装にもなのですけど、特に部屋についた後のソニアの言葉にです。
「ようこそ、アリシア様。私はあなた様の監視役を買って出ましたソニアと申します。何か食べたいものや飲みたいもおがあればいつでもお呼びください。それと、この場所の質問に関しては答えることができませんので、ご容赦ください」
矛盾だらけです。まず、私の監視役はわかるのですが、買って出るとはどういうことでしょうか。それに、いつでもお呼びくださいは、罪人に使う言葉じゃないのです。それじゃあ、普通の御令嬢と変わらない生活じゃないですか!?
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