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リオン視点 馬車の中で
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馬車の中、一人の笑い声がずっと続いている。まあ、私の笑い声なのだが。
「いつまで笑ってるんだよ。リオン」
「いや、ほんと今日無理を言ってよかったよ。あんな面白い光景が見れるなんて」
レオスが他の女に現を抜かす理由として、自分を使って照れさせるとは思いもしなかった。それに…実際にレオスが照れたのもポイントが高い。こいつは毎日うるさいぐらいにシェリア嬢のことを考えており、今まで他の女に言い寄られても反応しなかった奴が…だ。
「可愛かったのか?」
「違っ!」
レオスの言い訳を聞き流しながら、公爵に今日来た目的の成果を訪ねる。
「それで? エヴァンス公爵の目的は達成したのか?」
「いいえ、少し様子を見ることにしました」
「なんでだ父上! 援助を続ける条件としてシェリーをあの家から離すんじゃなかったのか!」
「落ち着け。これは投資だ。彼女に対してのな」
公爵も彼女の才能に気づいたか。まあ、当たり前か。
「彼女は賢い。あれでシェリア嬢よりも一つ下だと言うのだから驚いたものだ」
「そうだったのですか。それは…本当にあの男の子供なのでしょうか?」
公爵の当然の疑問に苦笑いをする。だがもう一つ彼女のことで公爵を驚かせたくなった。
「母親も父親と同じ頭をしているらしいぞ?」
「まさか! …いえ、失礼しました」
予想通りの反応につい笑みが溢れる。
「ククク…別に気にしなくて良い。あの両親からどうして彼女のような人格者が生まれたか?もしくは彼女に教育を施したものがいるかだが…」
「そのような者がいれば教育者として確保したい人材ですね」
「全くだ」
一般的な平民を立派な貴族令嬢にできる教育者。そんな者がいるのであれば言い値で雇おう。今すぐ、全貴族に教育を施してもらいたいものだ。だがそんな者はいないだろう。少なくとも彼女のような才能がなければ不可能なことだったであろう。
「リオンも父上もそんなにあいつのことを褒めるが、どこにそんな要素があったんだ?」
そういえばこいつ、彼女の含みに全く気づいていなかったな。
「お前…全く。彼女がシェリア嬢のことをお人形と表現していたのは理解しているのだな」
「あ、ああ。人形の名前をシェリアというと言っていたからな」
「それで彼女は『捨てられたり、物置きに放って置かれるよりも、手元に置きたいんですよ』と言った。つまり、放置していれば、捨てられていたかもしくは物置に押し込められていたと言うことだ」
「なっ」
「それにあの男の反応を見ただろう。この件についてはあまり話されたくなかったようだぞ。おそらく、その言葉で伝わらなかった時に、あの男の反応で察することができる腹づもりだったのだろう」
全く、自分の親が腹芸をできないからと言って、あそこで言うにはリスクがありすぎるだろうに…
「それに部屋での彼女たちの反応を見ただろう。虐げられている奴があんな親しそうにするか?それに主導権はどちらかと言えば、シェリア嬢にあるように見えたぞ」
人前では散々呼び捨てにしていたのに、あの部屋に入ればお姉様と呼んでいたしな。おそらくあの家での味方がまだ定まっていないのだろう。まあ、親玉が一番の敵だからな。どこに取り巻きがいるのかわからないのもわかる。
あの歳でそこまで考えているんだ。本当に彼女は…
「…彼女は是非とも欲しいな」
「「!?」」
「父上には感謝だな。政略結婚ではなく、自由恋愛を推奨してくれている。まあ、私の場合は別に試験があるが…彼女ならば容易く突破してくれるだろう」
「では、彼女も保護する方向で?」
「ああ、もし何かあれば俺の名前を使ってくれても良い」
「…本気、なのですね」
「ああ、リオン・ロックラークが命じる、彼女の親がどんな罪であろうとも彼女のことは保護しろ。いいな」
「「はっ」」
「やはり、この堅苦しいのは苦手だな」
「お前…せめて最後までやりきれよ」
「…まあ、考えておくよ」
第一、王太子はもう兄上に決まっているのだし、私は第五王子だ。王子もそんなにはいらないだろう。俺は将来的に王位を破棄することは兄弟全員に伝えているし、父上にも許可はもらっている。いらない条件がついたけどな…
さて、どうやって彼女を落とそうかな?
一人の少女をこんなに欲しいと思ったのは初めてだ。
「いつまで笑ってるんだよ。リオン」
「いや、ほんと今日無理を言ってよかったよ。あんな面白い光景が見れるなんて」
レオスが他の女に現を抜かす理由として、自分を使って照れさせるとは思いもしなかった。それに…実際にレオスが照れたのもポイントが高い。こいつは毎日うるさいぐらいにシェリア嬢のことを考えており、今まで他の女に言い寄られても反応しなかった奴が…だ。
「可愛かったのか?」
「違っ!」
レオスの言い訳を聞き流しながら、公爵に今日来た目的の成果を訪ねる。
「それで? エヴァンス公爵の目的は達成したのか?」
「いいえ、少し様子を見ることにしました」
「なんでだ父上! 援助を続ける条件としてシェリーをあの家から離すんじゃなかったのか!」
「落ち着け。これは投資だ。彼女に対してのな」
公爵も彼女の才能に気づいたか。まあ、当たり前か。
「彼女は賢い。あれでシェリア嬢よりも一つ下だと言うのだから驚いたものだ」
「そうだったのですか。それは…本当にあの男の子供なのでしょうか?」
公爵の当然の疑問に苦笑いをする。だがもう一つ彼女のことで公爵を驚かせたくなった。
「母親も父親と同じ頭をしているらしいぞ?」
「まさか! …いえ、失礼しました」
予想通りの反応につい笑みが溢れる。
「ククク…別に気にしなくて良い。あの両親からどうして彼女のような人格者が生まれたか?もしくは彼女に教育を施したものがいるかだが…」
「そのような者がいれば教育者として確保したい人材ですね」
「全くだ」
一般的な平民を立派な貴族令嬢にできる教育者。そんな者がいるのであれば言い値で雇おう。今すぐ、全貴族に教育を施してもらいたいものだ。だがそんな者はいないだろう。少なくとも彼女のような才能がなければ不可能なことだったであろう。
「リオンも父上もそんなにあいつのことを褒めるが、どこにそんな要素があったんだ?」
そういえばこいつ、彼女の含みに全く気づいていなかったな。
「お前…全く。彼女がシェリア嬢のことをお人形と表現していたのは理解しているのだな」
「あ、ああ。人形の名前をシェリアというと言っていたからな」
「それで彼女は『捨てられたり、物置きに放って置かれるよりも、手元に置きたいんですよ』と言った。つまり、放置していれば、捨てられていたかもしくは物置に押し込められていたと言うことだ」
「なっ」
「それにあの男の反応を見ただろう。この件についてはあまり話されたくなかったようだぞ。おそらく、その言葉で伝わらなかった時に、あの男の反応で察することができる腹づもりだったのだろう」
全く、自分の親が腹芸をできないからと言って、あそこで言うにはリスクがありすぎるだろうに…
「それに部屋での彼女たちの反応を見ただろう。虐げられている奴があんな親しそうにするか?それに主導権はどちらかと言えば、シェリア嬢にあるように見えたぞ」
人前では散々呼び捨てにしていたのに、あの部屋に入ればお姉様と呼んでいたしな。おそらくあの家での味方がまだ定まっていないのだろう。まあ、親玉が一番の敵だからな。どこに取り巻きがいるのかわからないのもわかる。
あの歳でそこまで考えているんだ。本当に彼女は…
「…彼女は是非とも欲しいな」
「「!?」」
「父上には感謝だな。政略結婚ではなく、自由恋愛を推奨してくれている。まあ、私の場合は別に試験があるが…彼女ならば容易く突破してくれるだろう」
「では、彼女も保護する方向で?」
「ああ、もし何かあれば俺の名前を使ってくれても良い」
「…本気、なのですね」
「ああ、リオン・ロックラークが命じる、彼女の親がどんな罪であろうとも彼女のことは保護しろ。いいな」
「「はっ」」
「やはり、この堅苦しいのは苦手だな」
「お前…せめて最後までやりきれよ」
「…まあ、考えておくよ」
第一、王太子はもう兄上に決まっているのだし、私は第五王子だ。王子もそんなにはいらないだろう。俺は将来的に王位を破棄することは兄弟全員に伝えているし、父上にも許可はもらっている。いらない条件がついたけどな…
さて、どうやって彼女を落とそうかな?
一人の少女をこんなに欲しいと思ったのは初めてだ。
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