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第二十四話
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「ふふっ、あはは」
私が真剣に答えたことに対して、お姉様はこのように大笑いしている。そんなに面白いことを言った?
「ふうっ……ふふっ」
「そんなにおかしかったですか?」
「だって、アリシアが私に嫉妬しているって言うから……、驚いたのと嬉しさが相まっておかしくなっちゃった」
「嬉しさ?」
「うん。私はちゃんとアリシアの目標? というか視界に入っている事が嬉しかったの」
視界に入るって? お姉様はいつも私といるのに、どういう意味なんだろう?
「ああ、ごめんね。わからないよね。うーん、なんて言ったらいいのかな? 私はアリシアにとってどんな人物なんだろうってずっと考えてた」
「……どんな?」
「私はずっとアリシアに嫉妬してたよ? そんな私がアリシアにとって何ができるんだろうって。どんな風に映っているのかなって……」
お姉様が私に嫉妬? 生まれつき貴族であり、アリーシャ様が母親で愛されてきたお姉様が私に?
「疑ってる? だけど、全部ほんと。アリシアが優秀過ぎて嫉妬してた。お母様ったら、事あるごとにアリシアを比較対象にするんだもん。嫉妬もするわ」
「アリーシャ様が?」
「そう! 一つ下のアリシアができている事をできないとは言わせませんって。たぶん、私を当主にするためにもっと勉強をさせるためだったと思うけど、面白くはないよね。妹の方ができてるって言われるのは」
「それは……」
「だから私は、アリシアにずっと嫉妬してた。私よりも優秀な貴方に」
お姉様が私に嫉妬していただなんて、今まで全然気が付かなかった。そして一つ、聞きたいことができた。
「お姉様は……私が……私を疎ましく思ったことはないのですか?」
「えっ、なんで? こんなに可愛い子を鬱陶しいなんて思わないよ?」
「そういうことではありません! あっ……」
少しふざけた様に言うお姉様に思わず大きな声を出してしまう。慌てて何か言おうとすると、お姉様が優しい顔をしながら、私の頭を胸に抱き寄せる。
心臓の音がなんとなく心地いい。
「……私の前世の話、覚えてる?」
「……はい。仲のいいお姉様がいたと」
「そう。私には優秀なお姉ちゃんがいたの。とても賢くて優しくて、賢くなかった私にもとても優しくしてくれた。そんなお姉ちゃんに私は憧れた。この世界に転生しても、それは変わらなかった。けれど、私の妹はお姉ちゃんと同じ私よりも優秀だった」
「…………」
「けど、それがなに? 確かにアリシアが羨ましかったけど、アリシアがとっても努力していたことは知っている。そんなアリシアを疎ましく? ありえないわ」
お姉様は自分に優しくしてくれたお姉さんに憧れて、私にもそのように接してくれている。私に思うところはあったはずなのに、それでもお姉様は私を大切に……
涙がポロポロと溢れる。
「聞かせて? 貴方は私に嫉妬して、私の事を疎ましく思った?」
お姉様の問いかけに、首を横にふる。
「よかった。じゃあアリシアは私に何を嫉妬したの?」
涙を袖で拭い、少し深呼吸して落ち着く。
「婚約者、レオス様の隣に堂々といられるお姉様に嫉妬しました。私にはどう頑張ってもお姉様のようには振る舞えません。私には隣に立つ資格らありませんから……」
「どうして? 気にしているのは何? 出生? 犯罪者の子供だからと言ったら、いくら私でも怒るよ?」
「…………」
どうしよう。黙ってしまったことで私が考えていることが伝わったみたい。さっきまで笑顔だったのに、みるみる目が据わりだす。
「そう。私の娘は私の事を犯罪者だと思っているのね」
「違います!」
「あの男のことは気にする必要はないわ。そう言っても無理なことはわかってる。私もまだ吹っ切れたとは言い切れないし。けどね、隣に立つ資格がないっていうのは一体誰が決めるの? アリシア?」
「そ…れは……」
「もし隣に立ってほしい。そう言われた時、貴方は自分で資格がないからと断るの? 相手が望んでいて、貴方も憎からず想っている相手だとしても、貴方は自分を卑下して、相手の気持ちを踏み躙るの? 貴方は隣に立つってことをどういう風に思っているの?」
お姉様のこの問いかけに、私は瞬時に答えを見つけることはできなかった。
私が真剣に答えたことに対して、お姉様はこのように大笑いしている。そんなに面白いことを言った?
「ふうっ……ふふっ」
「そんなにおかしかったですか?」
「だって、アリシアが私に嫉妬しているって言うから……、驚いたのと嬉しさが相まっておかしくなっちゃった」
「嬉しさ?」
「うん。私はちゃんとアリシアの目標? というか視界に入っている事が嬉しかったの」
視界に入るって? お姉様はいつも私といるのに、どういう意味なんだろう?
「ああ、ごめんね。わからないよね。うーん、なんて言ったらいいのかな? 私はアリシアにとってどんな人物なんだろうってずっと考えてた」
「……どんな?」
「私はずっとアリシアに嫉妬してたよ? そんな私がアリシアにとって何ができるんだろうって。どんな風に映っているのかなって……」
お姉様が私に嫉妬? 生まれつき貴族であり、アリーシャ様が母親で愛されてきたお姉様が私に?
「疑ってる? だけど、全部ほんと。アリシアが優秀過ぎて嫉妬してた。お母様ったら、事あるごとにアリシアを比較対象にするんだもん。嫉妬もするわ」
「アリーシャ様が?」
「そう! 一つ下のアリシアができている事をできないとは言わせませんって。たぶん、私を当主にするためにもっと勉強をさせるためだったと思うけど、面白くはないよね。妹の方ができてるって言われるのは」
「それは……」
「だから私は、アリシアにずっと嫉妬してた。私よりも優秀な貴方に」
お姉様が私に嫉妬していただなんて、今まで全然気が付かなかった。そして一つ、聞きたいことができた。
「お姉様は……私が……私を疎ましく思ったことはないのですか?」
「えっ、なんで? こんなに可愛い子を鬱陶しいなんて思わないよ?」
「そういうことではありません! あっ……」
少しふざけた様に言うお姉様に思わず大きな声を出してしまう。慌てて何か言おうとすると、お姉様が優しい顔をしながら、私の頭を胸に抱き寄せる。
心臓の音がなんとなく心地いい。
「……私の前世の話、覚えてる?」
「……はい。仲のいいお姉様がいたと」
「そう。私には優秀なお姉ちゃんがいたの。とても賢くて優しくて、賢くなかった私にもとても優しくしてくれた。そんなお姉ちゃんに私は憧れた。この世界に転生しても、それは変わらなかった。けれど、私の妹はお姉ちゃんと同じ私よりも優秀だった」
「…………」
「けど、それがなに? 確かにアリシアが羨ましかったけど、アリシアがとっても努力していたことは知っている。そんなアリシアを疎ましく? ありえないわ」
お姉様は自分に優しくしてくれたお姉さんに憧れて、私にもそのように接してくれている。私に思うところはあったはずなのに、それでもお姉様は私を大切に……
涙がポロポロと溢れる。
「聞かせて? 貴方は私に嫉妬して、私の事を疎ましく思った?」
お姉様の問いかけに、首を横にふる。
「よかった。じゃあアリシアは私に何を嫉妬したの?」
涙を袖で拭い、少し深呼吸して落ち着く。
「婚約者、レオス様の隣に堂々といられるお姉様に嫉妬しました。私にはどう頑張ってもお姉様のようには振る舞えません。私には隣に立つ資格らありませんから……」
「どうして? 気にしているのは何? 出生? 犯罪者の子供だからと言ったら、いくら私でも怒るよ?」
「…………」
どうしよう。黙ってしまったことで私が考えていることが伝わったみたい。さっきまで笑顔だったのに、みるみる目が据わりだす。
「そう。私の娘は私の事を犯罪者だと思っているのね」
「違います!」
「あの男のことは気にする必要はないわ。そう言っても無理なことはわかってる。私もまだ吹っ切れたとは言い切れないし。けどね、隣に立つ資格がないっていうのは一体誰が決めるの? アリシア?」
「そ…れは……」
「もし隣に立ってほしい。そう言われた時、貴方は自分で資格がないからと断るの? 相手が望んでいて、貴方も憎からず想っている相手だとしても、貴方は自分を卑下して、相手の気持ちを踏み躙るの? 貴方は隣に立つってことをどういう風に思っているの?」
お姉様のこの問いかけに、私は瞬時に答えを見つけることはできなかった。
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