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17 悪役令嬢らしくしてみたい

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「…全部…第一王子が悪い」
「ええ、全部あの方が悪いのです。私を悪役令嬢と言うのはあの人だけなのですから」
「それは…」
「ねっ」
「はい…」
「それでもう一つ聞きたいのだけど…」
「はい。なんでも聞いてください」
「アメリアは第一王子のことが好きなの?」
「いいえ、何度首を跳ねようと思ったことか」
「そ、そうなの…それなら、余計にアメリアが私のことで気にすることはないわ」
「それは…はい…」
「さっきの言葉忘れないでね。それで、そこでずっと笑っているお兄様、クリス様。何か御用でしょうか?」

 二人ともずっと笑っているんですもの。気が散って仕方がありません。

「すまないな。フィー。今日はそこの彼女のことについてな。これからはフィーの専属の侍女として雇うことになった。俺からはそれだけだ」
「本当ですか!アメリア、これからよろしくね」
「はい!」
「私が来たのも同じだよ。彼女、アメリアに依頼した責任は私にあること、彼女の今後について、話しておきたいと思ったんだよ」
「そうだったんですか…」

 クリス様ともう一度話すことができたことは嬉しい。けれど、もう私のことはフィーア姉様とは呼んでくださらないのですね。そのことに少し寂しさを感じるけれど、仕方ないよね…忘れていたのは私だから…

「ヘタレ王子は健在ですね。ソフィア様の呼び方がいつもと違うようですが、私の勘違いでしょうか?」
「ヘタレ王子?それに、いつもの呼び方?」
「ソフィアは聞かなくていい。アメリア!お前は…」
「私はソフィア様の味方です。ソフィア様が少しでも悲しい顔をしているのならば、私はその憂いを絶って見せましょう」
「ああもう、わかったよ!ふ、フィーア姉様。ずっと以前のように名前を呼んでもらいたいと思っていました。こうして思い出してもらって、僕はとても嬉しかったです」
「怒ってないのですか。私は忘れてしまっていたのに…」
「怒るわけがないじゃないですか。フィーア姉様は被害者ですよ。むしろ、戻っただけでとても嬉しいです」
「被害者って、私はどうして…」
「ソフィア様、全部、第一王子が悪いのです」
「ふふっ、そうですね」

 深く考えても仕方ありません。それに、お母様たちが言い淀むところから、第一王子に不意打ちでもされて、頭を強打したとか、そんなところでしょうか。

 人に悪役令嬢と言っときながら、自分の方が悪役みたいなことをしているとはおかしなものですね。
 私は悪役令嬢と言われたのに、結局のところ何も悪役みたいなことをしていないのが悔やまれますね。一度くらい悪役みたいなことをしたいのですが…

「ソフィア様?どうかしたのですか?」
「あ、いいえ、悪役令嬢と言われたので、一度くらい悪役みたいなことをしてみたいのですけど、何かありませんか?」
「フィーア姉様は悪役令嬢がどのようなことをしているのか知っているのですか?」
「えーと、人を突き落としたり、ものを壊したり…ですか?私としては、貴族位を剥奪したり、取り巻きがいるのなら、取り巻きを引き離したりした方が悪役令嬢だと思うのですが…」
「「「……」」」

 どうしてみなさん目を逸らすのでしょうか?私、変なことを言いましたか?高位貴族が押したりするよりもあり得る話だと思ったのですけれど…

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