短い話たち

池

世の中には
２種類の人しかいない
それは他人と自分
他人はいっぱいいるけど
自分はひとりしかいない

なんてことを考えながら
目の前の池を見ていると
自分の顔が写っている

そうなんだ
池が他人だとしたら
そこに投げ入れる石が自分なんだ
池に飛び込んだ石が
水面に波紋を起こすように
自分の存在は他人に影響するんだ

池に石を投げ入れた
自分の顔が波紋で歪んでいる
歪んだ顔が
他人を振り回している

でもしばらくすると
波紋はやんで
自分の顔が元に戻っている
池は何もなかったかのように静かだ

池に移る自分の顔は
他人が正してくれた顔だろうか
それとも
他人に忘れられた顔だろうか

どちらにしても

世の中には
２種類の人しかいない
それは他人と自分
他人はいっぱいいるけど
自分はひとりしかいない

そういえば池って文字
他って文字に似てるな
そんな些細な発見に
水面の自分の顔が笑っている

苦々しくか
楽しくか
それは他人には分からない