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旅客機の絵
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押し入れを整理していたら
子供の頃描いた旅客機の絵が出て来た
僕は懐かしげに眺めた
眺めるうちに何かが足りないと思った
あ
操縦席の窓がない
操縦席の窓を描き足さなければ
そう思いながらまた描いた絵を眺めてみた
ずいぶん丁寧に描いてある客席の窓
どの窓にも人の頭があり
本当なら見えるはずもないだろう顔まで
細かく描いている
その人らの表情も
みんな違う
きっといろんな楽しみがあるんだろう
子供のくせに僕は
こんな細かい絵を描いていたんだ
たいていは
旅行に行く人らだろうな
どの顔も楽しそうだ
しかしもう何年
この絵は操縦席のない状態だったんだろう
ということは
旅客機はまだ飛んでいないんだ
この旅人たちはみんなまだ
空港で飛び立つ時間を待っているんだ
そうだ思い出した
子供の頃
僕の夢はパイロットだったんだ
だから旅客機の絵を描いたんだ
だけど今
僕はパイロットとはかけ離れた場所にいる
パイロットが夢だったことさえ忘れている
夢を思い出して
「誰がこの絵を取っておいてくれたんだい?」
そう問いかけた時
僕がこの絵を見つけた意味が分かった
僕はずいぶんお客さんを待たせていた
みんなを早く旅先へ連れて行かないとね
そのためにこの絵を取っておいてくれたんだね
お客さん
僕は操縦席の窓を描き
そこに映る自分の横顔を描いた
客席の窓には
楽しそうな顔が並んでいる
ひとしきりそれを眺めて僕はまた
絵を押し入れにしまった
よい旅を
子供の頃描いた旅客機の絵が出て来た
僕は懐かしげに眺めた
眺めるうちに何かが足りないと思った
あ
操縦席の窓がない
操縦席の窓を描き足さなければ
そう思いながらまた描いた絵を眺めてみた
ずいぶん丁寧に描いてある客席の窓
どの窓にも人の頭があり
本当なら見えるはずもないだろう顔まで
細かく描いている
その人らの表情も
みんな違う
きっといろんな楽しみがあるんだろう
子供のくせに僕は
こんな細かい絵を描いていたんだ
たいていは
旅行に行く人らだろうな
どの顔も楽しそうだ
しかしもう何年
この絵は操縦席のない状態だったんだろう
ということは
旅客機はまだ飛んでいないんだ
この旅人たちはみんなまだ
空港で飛び立つ時間を待っているんだ
そうだ思い出した
子供の頃
僕の夢はパイロットだったんだ
だから旅客機の絵を描いたんだ
だけど今
僕はパイロットとはかけ離れた場所にいる
パイロットが夢だったことさえ忘れている
夢を思い出して
「誰がこの絵を取っておいてくれたんだい?」
そう問いかけた時
僕がこの絵を見つけた意味が分かった
僕はずいぶんお客さんを待たせていた
みんなを早く旅先へ連れて行かないとね
そのためにこの絵を取っておいてくれたんだね
お客さん
僕は操縦席の窓を描き
そこに映る自分の横顔を描いた
客席の窓には
楽しそうな顔が並んでいる
ひとしきりそれを眺めて僕はまた
絵を押し入れにしまった
よい旅を
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