刺朗

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三次元のエピローグ②

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そして
「結局、時効になってしまいました」
と無念そうに言った。
その名刺は、20年前にこの施設の近くの河川敷で起こった、乳児殺害事件の捜査で、この施設を訪ねた時に置いて行ったものだった。
伊藤らは、乳児の父親である川田緑郎の犯行の線が濃厚であると見て捜査していたが、川田は河川敷で出会った少年が我が子を殺したと主張した。
少年は精神に障がいがあるようだという川田の話であったので、伊藤らはその線を調べる中でこの施設を訪れたのだ。
「あの時はお力になれず申し訳ありませんでした」
今井は頭を下げた。そして
「あの時はたしか、この施設に川田さんが言う少年がいるということでお訪ねになられたんですね」
と、言葉を繋いだ。
「ええ、リュックを背負って水筒を下げた」
伊藤が応えると今井は
「たしかにうちに河川敷にしょっちゅう行っては、施設の者が心配して迎えに行く子がいるが、その子は事件に心当たりがないと言っていますとお答えしましたね」
と、懐かしむように言った。
その言葉に伊藤は
「そうでしたね。私はその子の格好が川田の言う特徴と似ている点を、施設の方からも伺っていましたので、今井さんのお言葉だけでは納得出来ず、是非その子に会わせてほしいと食い下がりましたね。それで今井さんと押し問答になってしまった」
と言って、少し頭を下げた。
「こちらとしても、警察からお話があった後で、その子にしつこいくらいに聞いていたものですから、もうこれ以上はという気持ちでした。障がいのある子供を預かる私どもとしましては、繊細な子らを守る義務があると思っておりますから」
「あの日は一旦引きあげましたが、その後2、3回その子に会わせてほしいと訪ねては今井さんと揉めましたね。とうとう私も諦めざるを得なくなりました。上からストップがかかってしまいましたのでね」
伊藤のその話に応えた今井の
「私があまりしつこいと裁判に訴えると県警に怒鳴り込んだからでしょう」
という言葉に
「そうでしたか…初耳です」
と、伊藤は申しわけなさそうな顔をした。
「ですが」
伊藤は切り出し
「その子の証言が欲しかったんです。川田を逮捕するため、そしてその子への疑いを晴らすために。しかしその子は、私らが探すその子ではなかったんですね?」
と呟くように言った。
すると今井は突然
「大変申し訳ない」
と、深々と頭を下げた。
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