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三次元へ①
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「なんだ?」
川原が応えると幸恵の声は
「お客様よー」
と言った。
声は階下の玄関からしているようだった。
川原は部屋を出て階段を降り、玄関に行った。
幸恵と向かい合う、2人の男がいた。
片方は年配で、もう片方は若かった。
年配の男が口を開いた。
「イメージ通りですかね?」
川原は何を言われているのか分からなかった。
気配を察したか幸恵は
「お茶、淹れます」
と言って奥に引っ込んだ。
「初めまして…かな?」
そう言って男は警察手帳を出した。
「後藤ですよ」
男は笑って言った。
「平井です、川原さん」
若い方の男も嬉しそうに言った。
「落書きにされちゃ、困りますな。小説は最後までちゃんと書かなきゃ」
年配の男が言う。
「冗談だろ?」
川原の頭は混乱した。
「いるはずがない」
川原は瞼を揉んだ。
「いや、ちゃんとここにこうして来ていますよ」
年配の男はそう言って自分の胸を叩いた。
「ちょっと待て」
川原は2階へ駆け上がり、自室に入りUSBをハンマーで叩き潰した。
そして恐る恐る階下へ降りた。
玄関には…
後藤と平井が所在なげに立っていた。
「これはどうなっているんだ!おい、教えろ、おまえらがここにいるはずがないだろう!」
川原は後藤を問い詰めた。
「気が付きませんか?」
後藤が逆に問い返して来た。
「何が?」
「私らはなんですか?」
「君らは僕の…」
「創作ですが、あなたのじゃない」
「じゃない?」
「さっき、奥に行ったでしょ?」
「幸恵?」
「そうです」
「幸恵の?」
「幸恵さんはあなたのUSBをコピーしていたんです。お茶なんて淹れてませんよ。今、この場面を打ってるんですから」
「なんだって?」
川原は青ざめた。あの中は幸恵に見られてはいけないもので溢れている。
「あなたがあなたの話の結末を打ち終わった所から、幸恵さんは話を繋いだんです」
「ちょっと待て、僕は生身の人間だぞ、それが実体のない創作だというのか?」
「目の前に私らがいるのが証拠ですよ」
「それに幸恵、さっき、そこにいたじゃないか」
川原はあたふたしている。
「自分自身を物語に入れることは簡単に出来ますよ、書き手であればね」
「じゃ、あれは創作の幸恵か?じゃ、実体の僕はどこにいるんだ?」
「かなりお困りのようですね?こうやってあなたを困らせるのが、幸恵さんにとってのあなたへの復讐なんですよ。この状態が続けば、あなたはいずれ狂い死にするでしょう。それはあなたの言う四次元殺害ってやつですかね?」
「復讐?なんで!」
「それはあなたが一番知っているでしょう」
「幸恵はいつ、USBをコピーしたんだ?」
「あなたがさっき、コーヒーを淹れに行った時ですよ」
「どこからが幸恵の話なんだ?」
「あなたの作品が馬鹿げた終わり方をした瞬間からです」
「じゃ、コーヒーを淹れたのは?
紙を破いたのは?今こうして話しているのは?いやちょっと待て、コーヒーを淹れる隙にって、それすら幸恵の創作なら、そこに幸恵はどうやって?え、あ、そうか、え?前後逆じゃない?コーヒー淹れる前だよな?USBコピーしたの、コピーして書いてからだよな、コーヒー淹れたの…え?違う?え?あ、創作の幸恵が実在の幸恵に行かされた?え?え?えーっあーっ!!……僕はいったいなんなんだー!」
「まもなく四次元殺害される、幸恵さんの意思によるあなたですかね?今の叫びも幸恵さんが書いてますからね」
「ちょっと待ってくれ。いやどうなっているんだ。オレはどこにいるんだ!」
「と、取り乱すカワハラ(変換)→川原って打ってるのかなー?」
後藤はおどけた。
「からかうな!な、幸恵はなぜ復讐するんだ?」
後藤は真顔になった。
そしてひと言
「電話ですよ」
と言った。
川原が応えると幸恵の声は
「お客様よー」
と言った。
声は階下の玄関からしているようだった。
川原は部屋を出て階段を降り、玄関に行った。
幸恵と向かい合う、2人の男がいた。
片方は年配で、もう片方は若かった。
年配の男が口を開いた。
「イメージ通りですかね?」
川原は何を言われているのか分からなかった。
気配を察したか幸恵は
「お茶、淹れます」
と言って奥に引っ込んだ。
「初めまして…かな?」
そう言って男は警察手帳を出した。
「後藤ですよ」
男は笑って言った。
「平井です、川原さん」
若い方の男も嬉しそうに言った。
「落書きにされちゃ、困りますな。小説は最後までちゃんと書かなきゃ」
年配の男が言う。
「冗談だろ?」
川原の頭は混乱した。
「いるはずがない」
川原は瞼を揉んだ。
「いや、ちゃんとここにこうして来ていますよ」
年配の男はそう言って自分の胸を叩いた。
「ちょっと待て」
川原は2階へ駆け上がり、自室に入りUSBをハンマーで叩き潰した。
そして恐る恐る階下へ降りた。
玄関には…
後藤と平井が所在なげに立っていた。
「これはどうなっているんだ!おい、教えろ、おまえらがここにいるはずがないだろう!」
川原は後藤を問い詰めた。
「気が付きませんか?」
後藤が逆に問い返して来た。
「何が?」
「私らはなんですか?」
「君らは僕の…」
「創作ですが、あなたのじゃない」
「じゃない?」
「さっき、奥に行ったでしょ?」
「幸恵?」
「そうです」
「幸恵の?」
「幸恵さんはあなたのUSBをコピーしていたんです。お茶なんて淹れてませんよ。今、この場面を打ってるんですから」
「なんだって?」
川原は青ざめた。あの中は幸恵に見られてはいけないもので溢れている。
「あなたがあなたの話の結末を打ち終わった所から、幸恵さんは話を繋いだんです」
「ちょっと待て、僕は生身の人間だぞ、それが実体のない創作だというのか?」
「目の前に私らがいるのが証拠ですよ」
「それに幸恵、さっき、そこにいたじゃないか」
川原はあたふたしている。
「自分自身を物語に入れることは簡単に出来ますよ、書き手であればね」
「じゃ、あれは創作の幸恵か?じゃ、実体の僕はどこにいるんだ?」
「かなりお困りのようですね?こうやってあなたを困らせるのが、幸恵さんにとってのあなたへの復讐なんですよ。この状態が続けば、あなたはいずれ狂い死にするでしょう。それはあなたの言う四次元殺害ってやつですかね?」
「復讐?なんで!」
「それはあなたが一番知っているでしょう」
「幸恵はいつ、USBをコピーしたんだ?」
「あなたがさっき、コーヒーを淹れに行った時ですよ」
「どこからが幸恵の話なんだ?」
「あなたの作品が馬鹿げた終わり方をした瞬間からです」
「じゃ、コーヒーを淹れたのは?
紙を破いたのは?今こうして話しているのは?いやちょっと待て、コーヒーを淹れる隙にって、それすら幸恵の創作なら、そこに幸恵はどうやって?え、あ、そうか、え?前後逆じゃない?コーヒー淹れる前だよな?USBコピーしたの、コピーして書いてからだよな、コーヒー淹れたの…え?違う?え?あ、創作の幸恵が実在の幸恵に行かされた?え?え?えーっあーっ!!……僕はいったいなんなんだー!」
「まもなく四次元殺害される、幸恵さんの意思によるあなたですかね?今の叫びも幸恵さんが書いてますからね」
「ちょっと待ってくれ。いやどうなっているんだ。オレはどこにいるんだ!」
「と、取り乱すカワハラ(変換)→川原って打ってるのかなー?」
後藤はおどけた。
「からかうな!な、幸恵はなぜ復讐するんだ?」
後藤は真顔になった。
そしてひと言
「電話ですよ」
と言った。
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