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タウの刻印

カナン#3

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────ククリ(人狼ルガルガルダーガ種、ニダヴェリール宮廷正室、アースバインダー)


 カナンの統治手法の本格的な導入が現実味を帯びてくると、それについての見解を求められる頻度が増えた。

 立場上、仕方のないことだが、正直なところ、考え方も住んでいる世界もまるでちがう無関係な異種族のことに、心を割いている余裕などない。

 ユグドラシル内部の決定に、ニダヴェリールが口を挟むのは、ニダヴェリールに実害が及ぶ可能性がある時のみだ。
 アストレアも身内みたいのものなので、もちろん考慮してはいるが、今回の件は統治手法の問題だけだ。
 なので、私は、興味ない、わからない、といって放置している。


 ルシーニアの代理で、一度だけカナンの視察をしたことがあるが、ヒューマノイドの状態もよく、デカピタートたちも気のいい奴らだった。

 なんの心配もいらないだろう。
 イルミナはガイゼルヘルさんに似た思想を持っていることを危惧するものもいるようだが、70名近くいる低次元世界の女王、白色のホムンクルスセイレーンのなかで、一番の成果をあげた以上、彼女はもっと評価されるべきだと思う。


 私は他種族のことよりも人狼ルガル種の将来のことで頭がいっぱいなのだ。
 それについてのヒントが得られない以上、関わる気持ちがまるで湧かない。

 本来は、ヒューマノイド自身が本気で考えて答えを出すことだ、それができないから、アストレアが代わりにやってるだけなのだ。

 そのありがたみすらわからない種族の未来など知ったことではない。

 傍迷惑な行為をしでかすことしかできないなら、絶滅させられても仕方がないと思っている。

 私はこれまで、そうやって絶滅させられてきた種族をたくさんみてきた。

 その多くは、資質に問題があり、自力で解決できない種族だ。

 淘汰されてきた種族に比べれば、ヒューマノイドの資質にはまだ可能性がある気もする。

 でも、今の過保護な状態でも、まともな成長を遂げられないようであれば、見限られても仕方がないだろう。

 ティフォーニアだからこそ、未だに生かされている現実に、気付けないのはかわいそうに思う。

 アールヴヘイムが継続していれば、すでに愛想をつかされていてもおかしくない種族なのだ。


 ヒューマノイドは、混沌の申し子と言える種族ではない。
 私が出会いたい種族は、混沌の申し子と言える種族なのだ。
 ティフォーニアは真剣に考えてくれないが、彼女の真の眷属となるのは、混沌の申し子と言える種族だけだ。

 ロデリクはかなり理想に近いが、今のアストレアでは面倒を見きれる状況でないので、ニダヴェリールで引きとるしかなかった。
 ニダヴェリールとしてはとてもありがたかったが、ティフォーニア自身、混沌から秩序に意識が寄り過ぎな気がしている。

 ルシーニアやルーテシア、ゼディー、ルークなどともよく話していることだが、ユグドラシルの本質が、混沌であることを忘れることは、とても危険なことなのだ。
 
 まだ若いからこそ、周囲でサポートしてあげなければならない。
 
 ティフォーニアはもっと自由で奔放にすべきだと思う。
 
 ルシーニアとウルさんと話し合って、ロデリクをアストレアに分化することも検討している。まだ個体数が少ないので実現できないが、ティフォーニアも興味を持っているので、何れ実現するかもしれない。


 それに、帰還できていないアースバインダーがたくさんいる。
 彼らの処遇もそろそろ考えねばならない。
 大地の統合の準備もかなり進んできているのだ。
 だが、アースバインダーは曲者揃いなので、個々について対策を考慮せねばならない。

 彼らも大地の様子を観察しているのだ。
 いまの状況をみて何を感じているのだろう?

 悠長に実験していられる時間はないと、私は感じている。

 ヒューマノイドには十分な時間を与えたはずだ。
 そろそろ明確な態度を示すべきだろう。
 我々には、他にやるべきことがたくさんありすぎるのだから。
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