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影のセカイ

THE SAViOURS FROM HELL#5

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────コウメイ=アベノ(ヒューマノイド、 イサナミ自治区、学者)


 最近、共有者ユニオンとホムンクルス関連の調査要請が大量にくる。
 水質、地質、大気、遺伝子……。とにかくいろんな要因の相関を調べなければならない。

 てか、過去2000年以上昔から定期的に収集された人間の超精密な生体情報を提供されたけど、どうなってるの?

 聞いちゃいけないって言われてるから聞けないけど、当時はそんな技術なかったよね?

 こんなチャンス滅多にないから、おもしろくて熱中しちゃってるけどさ。

 こんな昔からホムンクルスの詳細についてわかっていたのか……。
 でも確かに、魔法でも、簡単には手がだせないよな。
 人間という生命体に、深く根付いちゃってるからね。

 だけど、ホムンクルスが根付いていない人間の超精密な生体情報ってどうやって入手したの?
 隔離されてる地域とかあるのかな?

 恐ろしすぎるよ、イサナミ自治区。身内になれてよかった……。


「こんちはー」

 ミユキちゃんだ。

 検査装置を借りたり、僕の調査結果を確認しにくるラフィノスの子だ。
 この子、行動がまるで読めないんだよね。
 あのユキヒラくんも、一度ひどい目にあってからは、この子には絶対近づかないようにしてるくらいだ。
 
「ねえ、ミユキちゃん。勝手に物色するのやめてくれる? なにか探し物?」

「トレジャー」

「はい?」

「男の部屋にはお宝が埋まってるってことは調査済みだからね」

「あはは。さすがに、仕事場にはないでしょ?」

「そうか、寝室いってくるー」

「ちょ、ちょっと、まって! お願いだから勝手に俺のデリケードゾーンに入らないで!」

「冗談に決まってるじゃん。コウメイちょろすぎ。寝室は黒確定だね。
 とりあえず、端末借りるねー」

「……はい、どうぞ」
 ホント調子狂うな

「おー、しっかり仕事してるじゃん。これは助かる」

「ミユキちゃんは、そのデータで何を調べてるの?」

「えっと……」

「あっ! あーーーー! あーーーー!
 ごめん、僕が悪かった、なにも話さないでいいよ!」

「あはは、命拾いしたね。おしかったな……」

「君、恐ろしすぎるね……」

 僕が知ったらまずいこと、わざと話そうとするから、迂闊に聞けないよ。

「ところでさ、コウメイは、人間が壁や天井を歩く方法に心当たりある?」

「へ? どうかなー、狭い範囲で重力制御でもできればいけるかもね」

「重力制御はちょっとむりだなー」
 ちょっと、なのか……。

「でもどうして壁や天井を歩きたいの?」

「不便だから」

「あはは。そんな子はじめてみたよ」

「そう? 歩けると便利でしょ?」

「まーそうだけど……」
 感性が違いすぎる……。


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