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イサナミ自治区

A NAME OF SNOW#3

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────ユキナ=アケチ(ヒューマノイド、イサナミ自治区、2代目清鳴シンメイ )


 共有者ユニオンは単なる双子ではない。肉体と精神の結合が曖昧なのだ。

 選択権を持つ者の意思で、どちらに体にでもなれる。
 しかし、第二次成長が過ぎた頃、生まれた時と逆の肉体に固定される。

 ユキナは生まれた時の肉体を、「君の体」と呼んでいた。
 成長すればそれが僕の体として固定されるからだ。
 固定されるまでの選択権は僕にあった、できるだけ公平になるよう半分に分けるようにした。
 でも、ユキナは本来の肉体を独占したかったようだ。だって最終的にそうなるのだから。

 確かに僕の体ではないから、半分の時間を奪うのも申し訳ないとおもっていた。
 ユキナがユキヒラとして生きるつもりでいたように、僕もユキナとして生きるつもりでいたから、ユキナの怒りはよくわかっていた。
 僕らはお互いに不便な肉体の押し付け合いをしていたのだ。

 僕らはお互いに相手を「ユキナ」と呼んでいた。
 僕がユキナに固定されユキナをユキヒラと呼ぶようになったとき、ユキナはとても嬉しそうにしていた。

 ユキナが不自由な体で苦しがっている時、僕はできるだけユキナの苦しみを引き受けるようにしていた。
 それは、ユキナの負担を減らしかかったからはじめたことだけど、無名相むみょうそうから見る世界に心を惹かれていたからでもある。

 ユキナとは、その気持ちを共有したかったから、お互いに同じだけの時間を過ごした。

 でも結局、ユキナと語り合うことはできなかった。

 ユキナに話しても理解してもらえず、話せば話すほど嫌われるようになった。
 ユキナの心も僕の対だと理解した時は、僕がユキナに固定されたあとだった。
 彼は僕を理解できないし、僕も彼を理解できないのだ。


 共有者ユニオンは、対がうまれる。

 水面みなもの対は朱雀すざく
 一刃ひとはの対は玄龍げんりゅう
 月影つきかげの対は白虎びゃっこ

 そして、月詠つくよみの対は無名相むみょうそうだ。

 全て似ているようで本質が違う対同士だ。
 イサナミの全てを内包する月詠つくよみの対は、すべを内包しない無名相むみょうそうなのだ。


 無名相むみょうそうは、イサナミ使いの墓場と言われれいるけど、それは嘘だ。

 だって無名相むみょうそうを記した改定版には、そんなことは一言も記されていないのだから。
 

 僕は、刹那せつなの先に何かを見ていた。

 無名相むみょうそうの肉体に固定された僕には、刹那せつなの先に広がる世界が、月詠つくよみだったころよりも鮮明にみえている。

 でも、カツラさんは、僕が心の病にかかっているといって信じてくれない。

 僕は今、イサナミの外にはいないし、中にもいない。
 それはだけは確信できている。
 だから、僕は今、どこにいるかを知りたいのだ。
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