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イサナミの書

月影(つきかげ)#5

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────ミユキ(アラクネ種、ルーノ族、ニダヴェリール宮廷第一補佐官付き特務隊)



 せっかく休養にきたのだから、組合のミーティングばかりしても息が詰まっちゃうよね。

 外の空気でも吸おう。

 今度の狩は見学じゃなくて一緒に参加させてもらおうかな、そうしよう、私の狩猟本能がそうささやいている。

 でも、最近はユキリンの捕獲じゃ物足りなくなったなー。
 もっと、面白いこと何かないかなー。



「こんにちは! お二人とも休憩中ですか?」
 ククリさんとルカさんが談笑していたので、声をかけてみた。

「一人? 珍しいね。おいで」
 ククリさんがお茶を入れてくれた。

「そういえば、ユキヒロを捕獲するってやつ、最近はどうなの?」

「ユキリンはちょろすぎますね。昔、苦労していたのが嘘みたい。最近は物足りなすぎますよ。ユキリンはもっと修練が必要ですね」

「そうなのか。ハーピーには命取りだね。ルフィリアにいっておかないといけないね。教えてくれてありがとね」

「いえいえ。趣味みたいなものですから」

「ミユキは生命の基礎法術はどこまで使えるようになったの?」

「苦労しましたけど、月影つきかげまではバッチリです、一葉ひとはもあとすこしです」

「優秀だね。ルフィリアの娘では一番進んでる?」

「ハルカと競争ですね」

「それは心強い。アストレアのアラクネも全体的に優秀みたいだけど、二人は特別だね」

「そんなに褒められると照れちゃいますよー」

「ルルルと一緒で、直球に弱いタイプ?」

「そうかも」

「常に気をつけなよ。恋愛はよく知らないけど、戦闘の上級者はすぐ見極めてくるからね」

「ですね」
 ククリさんは、殺し合い以外での発想ができないのがおもしろい。

「ミヅキと一緒に訓練することはあるの?」

「ウルさんに取られちゃうからあまり機会がないけど、たまに相手をしてもらいますね」

「どんな感じ?」

「反則ですよ。あれはずるいです。ハルカと二人がかりでも手に負えません」

「特殊な子だったから、特別扱いするしかなかったからね。それでも奇策で崩せない? まだかなり隙だらけでしょ?」

「え? あれで隙だらけですか? 揺さぶってもまるで動じませんよ?」

「ハーピーとは真逆だよ? ハーピーの長所は、警戒心だからそれが短所になりうるけど、アシダカは冷徹で狡猾な殺戮マシーンだから同じことは通じないからね」

「ハルカと作戦を練ってますけど、ミヅキが生命の基礎法術をマスターしてから、さらに手がでなくなしました。どうしたらいいか教えてください!」

「ルカの専門だね、しばらくルカの弟子になるといい」

「私? メンドくさい……。ククリさんの手伝いで忙しいし」

「ルカは、シャーマンの指導はしてるけど、ちゃんとした弟子をとってないでしょ?
 全部ルフィリア任せ?
 それでいいの? 第三補佐官」

「イサナミ自治区でたくさん育てたでしょ?」

「ニダヴェリールでも育ててよ」

「それにミユキは、ルフィ姉のお気に入りじゃない。叱られる」

「趣味と仕事は別だってルフィリアはわかってる」

「んー……。じゃあ、条件出していい?」

「なに?」

「イサナミの月影の適正のある子だけで集まれるようにしてくれる?
 ククリさんも絶対参加ね。
 月影会げつえいかいって名前にしましょう。
 会長は私がするから、ククリさんは普通のメンバーになってくれればいいわ」

「わたしは立場上まずいって。ルシーニアの許可がいる」

「私が許可とってきたら参加してくれる?」

「それは事実上の勅命だから従うしかないね」

「ならいい、ミユキを弟子にとるわ」

「ミユキだけ?」

「たくさんいると私が無理。イサナミ自治区の時もかなり無理してたのだから。
 それに、ハルカの適性は、純粋な月影つきかげじゃないしね」

「それで、私はどうすればいいの?」

「とりあえず、私が声かけたら、街に一緒に遊びに行ってくれればいいわ」

「ぼっち対策か!」

「ククリさんだって一匹狼はそろそろやめなよ。性格が似た子で集まって遊ぶ少人数の集会にすれば、ロクシーさまだって安心するでしょ?
 いまのままだと、また花嫁修行させられるわよ?」

「たしかに、それはもう勘弁してほしい。じゃ、3人で遊びに行くだけでいいんだね?」

「うん。ミユキもそれでいい?」

「うん。面白そう。しかも、メンバーが構成がサイコーだね。
 それとは別にちゃんと指導してくれるのでしょ?」

「うん。ニダヴェリールにもどったら、ククリさんの部屋に集合ね、時間を調整しておくからあとで連絡する」

「わかった。ミヅキをだしぬけるようになる?」

「ミヅキかー、かなり頑張らないとあの知覚は騙せないわよ?」

「可能性があるってとこだよね?」

「もちろん」

「なら、よろしく!」

「ところで、どうして私の部屋なの?」

「いろんな機材があるじゃない。実験台もたくさん出入りするし、ルガル版のイサナミの研究にもなるし、ミユキも器用な子だから変な癖ついても心配いらないでしょ?」

「なるほどね。たしかに面白そうだね。帰っても退屈しないで済みそうだし、よろこんで提供するよ。でも、ちゃんとルシーニアの許可とってね?」

「わかった。とりあえず、不毛の大地ノドにいる間は、できるだけ行動を共にしてね。会長命令だらね」



 犬も歩けば棒に当たる?

 おかしな3人組ができちゃったけど、ククリさんとルカさんとは、もっといろいろとお話をしてみたかったから、とても嬉しい。

 この際、ミヅキだけでなく、ハルカも出し抜いてしまおう。

 面白くなってきたかも。
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