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リインカーネーション

THE MOCK EMOTiON#2

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────フラガ=ラ=ハ(人狼ルガルガルダーガ種、隠者、ガルダーガ族・最長老)


 私が、ククリという少女を引き取った時、彼女の心は既に壊れていた。

 ルガルの言葉を発することも理解することもできず、殺戮しか考えられない狡猾な獣と化していたのだ。周囲からは〝血の獣〟と呼ばれ、ガルダーガ族の歴史に名を刻むほどの問題児になっていた。

 ククリの両親はシルバーリングだった。
 彼女は幼子の時から殺戮機械として英才教育を施された。
 しかし不運にも、彼女の両親は任務で亡くなってしまった。

 その後、彼女はヨトゥンヘイムのスラム街に住んでいた親戚に引き取られ、虐待と最底辺の生活を強いられた。彼女を引き取った親戚は、家に押し入った暴漢に殺害されたが、ククリはその暴漢を返り討ちにし、動かなくなってもひたすら爪で切りつけ、守衛隊が彼女の部屋にはいったときは、その部屋は血と肉片の海になっていたそうだ。

 さらにその後、ククリは別のスラム街で遠い親戚に預けられた。
 そこで待っていたのも虐待と最底辺の生活だ。
 程なく彼女は、その一家を皆殺しにし、住むところを決めず、殺戮と強盗を繰り返す日々を送るようになった。

 彼女に殺された者の中には、守衛隊や兵士も含まれていた。

 ククリは指名手配され、ヨトゥンヘイムの兵士に追われ続けた。

 しかし、彼女は多くの追っ手を易々と殺害し、逃げ延び、捕獲は困難を極めた。
 だが、一人の退役したシルバーリングによって、ようやく事態は収拾した。

 その退役したシルバーリングが、私、フラガ=ラ=ハだった。

 私は、彼女の両親をよく知っていた。

 私が現役だったころに、二人を指導していたからだ。
 こんなことになるのであれば、彼女の両親が亡くなった時、私が引き取ればよかったととても後悔した。

 ガルダーガ族は彼女の極刑を求めたが、私が彼女の保護者となることを条件に、彼女の執行猶予の恩赦を得ることができた。

 ククリとの生活はとても大変だった。

 何かを解決するためには、まず相手を殺すことを最初に考えていたからだ。
 私が元シルバーリングでなければ初日に殺されていただろう。

 常識を理解させるのに1000年以上の時間が必要だった。
 それでも、彼女の心の奥底は冷たく堅牢な漆黒の氷で固められていた。

 私は、ククリを医学の道へと導くことにした。
 命を守り、救うことの大切さを理解させるためだった。

 彼女はとても聡明で、成長は著しかった。
 しかし、執行猶予期間が残っていたため、私の住居の敷地から出すことはできなかったので、すぐには先進医療を学べる宮廷医師育成機関に通わせることはできなかった。

 そのため、執行猶予期間が終わるまで、私が知る、殺すこと以外の全てのことを教え込んだ。

 宮廷医師育成機関に入所した時、彼女は良識と愛情を備えた立派な人狼ルガルへと成長していた。
 
 しかし、彼女の心の奥底の冷たく堅牢な漆黒の氷を、全て溶かしきることはできなかった。

 それが私の生涯唯一の心残りである。


 私は、彼女の心を完全に解き放つ良き出会いがあることを切に願った。
 
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