51 / 259
BY THE BOOK OF DAYS
ノスフェラトゥ・パンデミック
しおりを挟む
────エリューデイル(人狼ティターノ種、ラフィノス族・長老、アストレア宮廷第一補佐官、アースバインダー)
ノスフェラトゥのパンデミックが発生したのは、〝大崩落〟から1千年ほど後のことだった。
当時はまだ、ヨトゥンヘイムの転移ゲートが健在で、ヨトゥンヘイムはギアの大地で、ドラッケンという強力な戦闘種族の研究開発が行っていた。あまりにも高性能であるため、暴走時にヨトゥウンヘイムで大事故が起こらないようにギアで秘密裏に研究が進められていたのだ。
研究には、ヨトゥンヘイムの法術司祭だけでなく、チューリング学派、ノイマン学派、マッカーシー学派など、複数の無色のホムンクルスが参加しており、また、無色のホムンクルスたちは、雑務をヒューマノイドに任せていたため、研究所内には多数のヒューマノイドがいた。
パンデミックの引き金を引いてしまったのは、ヴェルフェゴール、ルキフェル、マモン、バアル、レヴィーというヒューマノイドの5人の研究助手だった。
彼らは、無色のホムンクルスが構築したドラッケン開発の理論を指示通りに実験する役割を担っていたのだが、通常業務を行いながら、陰で、それらの理論を独自の解釈で変更しつつ危険な実験を重ねていたのだ。
パンデミックが起こったのは、ドラッケンのプロトタイプ、ベイ=O=ウーフが完成して間も無ないころだった。
研究所内のヒューマノイドのみならず、周辺地域のヒューマノイドのコロニーの住民は瞬く間に、ノスフェラトゥと化した。旧都ギアにある主要施設は不意のノスフェラトゥの襲撃により、破壊されてしまった。
旧都にあった外界との転移ゲートも例外ではなかった。
これにより、ヨトゥンヘイムはギアの大地への移動手段を失うことになった。
新都アストレアは、すでに堅牢であったため被害は免れたが、ギアの大地はわずか数週間でノスフェラトゥに制圧されてしまったのだ。
研究所にいたガルダーガ族の人狼と無色のホムンクルスは、ベイ=O=ウーフの起動に成功し、その死地から逃れ僻地に避難し、独自の要塞を築き上げ、篭城した。
人狼や無色のホムンクルスなどの高次元生命体はノスフェラトゥにはならなかったものの、甚大な被害が出たようで、いまだにヨトゥンヘイムとの転移ゲートは開かれていない。しかもアストレアからの支援も受け入れず、要塞に篭ったままの状態が続いている。
その後しばらくして、シャノン学派が行なっていた低次元世界からの空間転移実験により、偶然にも、ガイゼルヘル公とそのアースバインド地域であるニーヴェルング鉱床がギアの大陸に帰還を果たした。
私はすぐにでも第一補佐官の座を譲りたかったが、ティフォーニア様のご意向により、彼は第二補佐官とされた。
大先輩より上席にいることにとても恐縮したが、ガイゼルヘル公とティフィーニア様の考えにはかなりの違いがあったため、私を緩衝材にしたかったのだとすぐにわかった。
お二人の意見が対立するたびに、根回しをして調整をして落とし所を見つけることが私の仕事に追加された。これは胃が痛くなるほど大変な仕事だ。だが、お互いの意見の正しさも理解できるので、絶対に気を抜けない重要なであるため、最近は気が休まることがほどんどない状況だ。
帰還後のガイゼルヘル公は、人が変わったようにヒューマノイド嫌いになっていた。昔は奴隷として重用していたにもかかわらず、今は絶滅させるべきだとの見解を決して譲らない。
空間の狭間でどのような悪夢を見てきたのか、誰にも語ろうとしないが、よほどトラウマになるような出来事をみてきたのだろう。
だが彼は、私にとってとても心強い同胞である。
頑固な性格ではあるが正義感が強く、芯の通った立派なお方だ。
それは帰還後も健在である。
ティフォーニア様とのやり取りを通じ、第二補佐官という立場にも理解を示していただけているようで、私の心労を察し、色々と気を使ってくださるといった優しい一面もあるお方なのだ。
周囲から誤解されやすい性格なので、その辺りのフォローも私の仕事になっている。
なによりも、絶望的とされていたアースバインダーの帰還の可能性に光が見えてきたのはとても嬉しかった。
ノスフェラトゥのパンデミックが発生したのは、〝大崩落〟から1千年ほど後のことだった。
当時はまだ、ヨトゥンヘイムの転移ゲートが健在で、ヨトゥンヘイムはギアの大地で、ドラッケンという強力な戦闘種族の研究開発が行っていた。あまりにも高性能であるため、暴走時にヨトゥウンヘイムで大事故が起こらないようにギアで秘密裏に研究が進められていたのだ。
研究には、ヨトゥンヘイムの法術司祭だけでなく、チューリング学派、ノイマン学派、マッカーシー学派など、複数の無色のホムンクルスが参加しており、また、無色のホムンクルスたちは、雑務をヒューマノイドに任せていたため、研究所内には多数のヒューマノイドがいた。
パンデミックの引き金を引いてしまったのは、ヴェルフェゴール、ルキフェル、マモン、バアル、レヴィーというヒューマノイドの5人の研究助手だった。
彼らは、無色のホムンクルスが構築したドラッケン開発の理論を指示通りに実験する役割を担っていたのだが、通常業務を行いながら、陰で、それらの理論を独自の解釈で変更しつつ危険な実験を重ねていたのだ。
パンデミックが起こったのは、ドラッケンのプロトタイプ、ベイ=O=ウーフが完成して間も無ないころだった。
研究所内のヒューマノイドのみならず、周辺地域のヒューマノイドのコロニーの住民は瞬く間に、ノスフェラトゥと化した。旧都ギアにある主要施設は不意のノスフェラトゥの襲撃により、破壊されてしまった。
旧都にあった外界との転移ゲートも例外ではなかった。
これにより、ヨトゥンヘイムはギアの大地への移動手段を失うことになった。
新都アストレアは、すでに堅牢であったため被害は免れたが、ギアの大地はわずか数週間でノスフェラトゥに制圧されてしまったのだ。
研究所にいたガルダーガ族の人狼と無色のホムンクルスは、ベイ=O=ウーフの起動に成功し、その死地から逃れ僻地に避難し、独自の要塞を築き上げ、篭城した。
人狼や無色のホムンクルスなどの高次元生命体はノスフェラトゥにはならなかったものの、甚大な被害が出たようで、いまだにヨトゥンヘイムとの転移ゲートは開かれていない。しかもアストレアからの支援も受け入れず、要塞に篭ったままの状態が続いている。
その後しばらくして、シャノン学派が行なっていた低次元世界からの空間転移実験により、偶然にも、ガイゼルヘル公とそのアースバインド地域であるニーヴェルング鉱床がギアの大陸に帰還を果たした。
私はすぐにでも第一補佐官の座を譲りたかったが、ティフォーニア様のご意向により、彼は第二補佐官とされた。
大先輩より上席にいることにとても恐縮したが、ガイゼルヘル公とティフィーニア様の考えにはかなりの違いがあったため、私を緩衝材にしたかったのだとすぐにわかった。
お二人の意見が対立するたびに、根回しをして調整をして落とし所を見つけることが私の仕事に追加された。これは胃が痛くなるほど大変な仕事だ。だが、お互いの意見の正しさも理解できるので、絶対に気を抜けない重要なであるため、最近は気が休まることがほどんどない状況だ。
帰還後のガイゼルヘル公は、人が変わったようにヒューマノイド嫌いになっていた。昔は奴隷として重用していたにもかかわらず、今は絶滅させるべきだとの見解を決して譲らない。
空間の狭間でどのような悪夢を見てきたのか、誰にも語ろうとしないが、よほどトラウマになるような出来事をみてきたのだろう。
だが彼は、私にとってとても心強い同胞である。
頑固な性格ではあるが正義感が強く、芯の通った立派なお方だ。
それは帰還後も健在である。
ティフォーニア様とのやり取りを通じ、第二補佐官という立場にも理解を示していただけているようで、私の心労を察し、色々と気を使ってくださるといった優しい一面もあるお方なのだ。
周囲から誤解されやすい性格なので、その辺りのフォローも私の仕事になっている。
なによりも、絶望的とされていたアースバインダーの帰還の可能性に光が見えてきたのはとても嬉しかった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる