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悪政のレヴナント

ユミルの胎動#2

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────ククリ(人狼ルガルガルダーガ種、ルーノ族・長老メトセラ、ニダヴェリール宮廷特別顧問こもん

 
 ゼディーのおかげで仕事がやりやすくて助かる。

 この浮く板はどう言う仕組みになっているのだろう?
 こいつのおかげで、隠密おんみつ行動が想像以上にはかどった。

 そうだ、次の休暇ときに原理を教えてもらおう。
 ついでに、一つもらえるか交渉してみよう。

 ゼディーの宮殿には雪解け水を沸かした大浴場がたくさんあるから、ついつい、暇を見つけては遊びに行ってしまう。
 外交特権で飲食や宿泊料も含め全て無料にして貰っているけど、料金制になっても通い詰めたくなる快適さだ。中居をつとめる極寒の精霊達の心遣いも行き届いている。温泉旅館でも経営したら人気が出そうなのに、鎖国状態というのはもったいなさすぎる。ルーノ族の慰安旅行とか企画してここに来たら、女性陣は皆、喜ぶだろうに……。
 
 私は、世界龍オーヴァーロードの中でも突出して常識人のアイオニアン=ゼディーが、ヨトゥンヘイム主導の“生命の営み”に距離を置いていたのか、いままでずっと疑問に思っていた。

 しかし、ニダヴェリールとニブルヘイムが友好関係を締結し、仲間として彼の人となりに接する機会が増えるに従って、彼は誰よりも冷静に物事を見極めており、ドリアン=ルークとの闘争を隠れみのに利用しながら、ヨトゥンヘイムをはるかに凌ぐ堅牢な鎖国政策を敷いていたことがわかった。

 彼は、ずっと機会をうかがっていたのだ。
 そして、それは、思いがけないタイミングで、向こうから転がり込んで来たのだ。
 


 ん? ……転がる?

 なんだ??

 誰もいないはずの大雪原で、一人の少女が雪の玉を転がしていた。
 私は、隠遁いんとんの法術式の濃度をあげ、ゆっくりと近づいた……。

 そこにいたのはルカティアだった。

 なぜか、楽しそうに、せっせと雪を転がして大きな塊をつくっている。
 一つの大きな塊を作った後、もうひとつ作り、それを最初に作った塊の上にのせた。

 なにを、やってるんだろう、このむすめは?

 彼女は、しばらく考え込んでいたと思ったら、突然、上の塊の真正面に穴を開け始め、すぐに下の方へと潜り込みながら掘り進んでいった。

 それが、終わると、今度は、その穴に足から入り込み、顔だけだして、なぜか満足げに外を眺めていた。


 さて、どうしたものだろうか?

 なぜこの娘は、雪だるまをカマクラのようにしたのだろうか?

 ルシーニアの眷属だから、なにかが遺伝しているのだろうか?

 まぁ、本人が幸せなら、それでよしとしますか。


 さて、私が用があるのはルナディアだ。

 あの娘は、一体どこにいるのかな?
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