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4章 聖王国

10 クリームシチュー

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「よーし、今日はミルクが手に入ったからミルクを使った料理、クリームシチューを作るぞ!」

「スープなんですよね? じゃあ、主食はパンのほうがいいですか?」

「そうだな。クリームシチューはとろっとしてるから米でも合わないことはないけど、最初はパンのほうがいいかな。ミーナにはシチュー作りを手伝ってほしいからレイジはパンを焼いてくれるか」

「もちろんだよ、マサト兄ちゃん」

「……私はー、何か手伝うことあるー?」

「うーん、リリーの料理の腕前がわからないからなぁ。とりあえず、見学ってことでもいいぞ」

「……わかったー」

 この村には着いたばかりだから、リリーを含む村人たちのステータスは全然成長してないんだよな。
 パン作りも結構、力がいるから今は手伝ってもらってもそこまで戦力にはならないだろう。
 天職:酪農家も料理に関するステータスボーナスはなさそうだしな。

「ミーナ、シチューの材料は斑芋、ラージキャロット、サウザンドオニオン、キラーバードに薄力粉、バターにミルク、あとは味付け用の塩と胡椒くらいだ」

「ミルクはさっき手に入れたって言ってましたよね。バターは食堂にはありますけど、この村で手に入るんですか?」

「バターはミルクから作ることができるんだよ。リリーの天職は獣からミルクを搾ったり、ミルクを使った加工品を作る天職のはずだからリリーが居ればバターも作れるだろう」

 ミーナの心配もわかる。
 俺は基本的にその国で作れる料理以外は大勢の人には振舞わないからな。
 今回作るクリームシチューは用意した材料の量から、村人全員に食べてもらうのが前提だから、村で作れるかどうかを心配しているのだろう。

「じゃあ、野菜の種を多めに配って畑で育ててもらうようにした方がいいですね。お肉はキラーバードじゃなきゃダメなんですか?」

「鳥でも牛でも豚でも美味しくなるだろうけど、鳥なら聖王国でもよく獲れるから鳥肉にしようかなと。食堂にはキラーバードの肉が大量にあるからってのも理由だ」

「わかりました。じゃあ、調理に入りますね。具材の大きさはいつものスープと同じくらいですか?」

「そうそう、サウザンドオニオンはスライス、斑芋とラージキャロット、キラーバードは一口大だな」

 もう何年もミーナと一緒に料理を作っているから、最小限の会話でもなんとなく言いたいことが伝わるようになってきている。
 特にスープ関係は毎日作っているから具材の大きさも共通認識の内だ。

「クリームシチュー作りも結構いろんな手順があるんだけど、今回は結構楽なレシピで作るぞ。まずはサウザンドオニオンをバターで炒める」

 先に鶏肉に焼き目を付けたり、ホワイトクリームを事前に作って置いたりするようなやり方もあるけど、今回は全部の具材を炒めて、小麦粉を振りかけて最後にミルクを加えるレシピにしよう。

「……ふーん、これがバターなんだー」

「ミルクを一晩程度涼しいところに置いておくと、成分が分離してな。分離して表面にできるものを密閉できる容器に詰めて振ったりして衝撃を与えるとできるんだ」

 バターづくりも本格的にやろうと思えばもっといろんなやり方があるんだろうけど、その方面は酪農家の天職を持っているリリーがこれから発見していくだろう。

「……うん、なんとなくできそうな気はする」

「まあ、ミルクもクリームシチューに使っても全然余るから、余剰分はバター用に冷暗所に保管しておくな」

「具材は煮るんじゃなくて、先に炒めるんですね」

「そうそう。サウザンドオニオンに火が通ったら、肉を入れて、そっちも焼き色がついてきたら、斑芋とラージキャロットを入れる。具材を入れ終わったら小麦粉と塩胡椒を入れて粉がなくなったら水で煮る感じかな」

「普段のスープよりも少し手間がかかるんですね」

「まあ、その分いつものスープとは違った味わいのある料理になるからな」

 王国は年中常春というか、冬になってもそこまで寒くはならなかったけど、王国より北にある聖王国では冬になると雪が降らないまでも冷たい雨が結構降るからな。
 温かさが持続するクリームシチューは悪くないだろう。

「水である程度煮たら、ミルクを入れるんだが……ミルクはあまりグツグツ煮ると分離しちゃうから入れる前に火を弱くするのを忘れないようにな」

 ミルクを使った料理で失敗するとしたら、分離しちゃうことが多いからな。
 その辺はきちんと注意しておかないといけない。

「レイジ、パンのほうはどうだ?」

「マサト兄ちゃん、もうすぐ焼けるよ」

「よーし、じゃあ村人に振舞う前に味見をするか」
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