灰色に夕焼けを

柊 来飛

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止められない想い

嵐の前の静けさ

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 そこにいたのは、やはり例のサッカー部の男の子だった。

「来たきた。そっちも1人じゃないんでしょ、烏坂さん」

「……?、僕1人ですよ?まさか、またこの近くに人が隠れてるんですか?」

 僕はペラペラと嘘をつく。演技は得意だ。

「そう言って、クラスメイトに守られてるくせに」

「自分のことでクラスメイトを巻き込みたくないんです。こんなことで、なんで僕がクラスメイトを引き連れなきゃダメなんですか」

 巻き込みたくないのは本当だ。結局のところ、みんなを巻き込んでしまったけど。

「はぁ、流石施設育ちだよねー。その態度も」

「要件は?夕飯の支度もあるので、あまり長くはいられません」

 事実と嘘を織り交ぜて話す。こうすることで、隠された嘘を見抜くのは格段に難しくなる。

「調子乗ってるよねって話」

「?、何のことですか?」

「だから、その態度だよ!!」

 その子は大声を出す。そんなことで怯む僕ではない。

「ねぇ、今からでも俺の告白に答えればさ、あの動画消してあげるよ」

「何でそんなに必死なんですか?」

「俺が!フラれたなんて、そんなのありえねぇんだよ!」

 いや、自分から動画を流したのだろう。嫌なら秘密にしとけば良いのに。目先の感情に気を取られたな、馬鹿馬鹿しい。

「わかりました、答えます」

 そう言うと、陰に隠れていた男の子たちはビクリと体を動かす。しかし、そっちに目線を送るとバレてしまう可能性が高い。僕は真っ直ぐその子の目を見据える。

「お!やっとわかって…」

「答えはNOです」

「………は?」

「僕が貴方の告白を了承することは、天地がひっくり返ってもありません」

 そう言い切ってみせると、男の子たちはたちは小さくガッツポーズを作る。
 しかし、楽しくないのは相手だ。その子は眉を吊り上げて吐き捨てるように言う。

「施設育ちが生意気なんだよ!良いのかよ!家に迷惑がかかっても!」

 家、と言うのは今僕が住んでいる家のことだろう。それは、先生にも迷惑がかかると言うことだ。僕は少し目を伏せる。それに気を良くしたその子は一気に畳み掛ける。

「嫌だよな?お前、バイトしてる感じしないし、学費もその家が払ってんだろ?なんだっけ?あの人。背が大きいあの人!あの人も可哀想だよな!!」

 僕はグッと眉を顰める。僕が迷惑を掛けている、それは十分承知の上だ。
 だから、だからこそ、これ以上迷惑をかけるわけにはいかないのだ。

「こんな奴引き取って、きっと後悔してるぜ」

 前だったらここで僕は折れていただろう。
 でも、今は違う。先生は言ってくれた。この選択をして良かったと。僕と、出逢えたからと。

「なんか言ったらどうなんだよ!」

「…僕の、答えは変わりません」

 もうそろそろ良いだろう。僕が足元に置いていたバッグを手に取ると、相手は慌てた様子で話す。



 「お前、あの人とどう言う関係なんだよ」

 
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