灰色に夕焼けを

柊 来飛

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自覚

ヒーロー

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 まだまだ暑さが続く9月。
 僕は彩葉ともう1人の女の子と一緒に家に帰っていた。
 彩葉はいつも伊集院君と帰っているのだが、今日は伊集院の委員会が遅くなると言うことで1人らしい。
 もう1人の子は、僕もたまに一緒に帰る仲のいい女の子だ。

 いつもと同じ道を歩いていく。途中まで一緒なので、それまで学校のことなど色々な話をする。   
 話していたら、グループでいる若い男の人たちに話しかけられた。歳は20代くらいだろうか。明らかにガラの悪そうな人達だ。

「ちょっといい?」

「は、はい?何ですか?」

 彩葉たちは少し怖がっているため、僕が受け答えする。

「この財布、さっきここを通った子が落としてさ、同じ制服だったから」

「そ、そうだったんですね」

「うん、だからさ、学校持っててその子に渡してくれない?面識なくても先生とかに言えばいけるっしょ」

「わかりました。ありがとうございます」

 何だそういうことか。僕はその財布を受け取ろうとすると、グイッと腕を引っ張られた。

「なっ…!」

 そのまま路地裏に引き込まれる。彩葉たちは僕を追いかけようとするが、周りにいた男性の仲間たちに捕まえられる。

「夕!」

「彩葉、こっちに構わないで!早く逃げて!」

「誰も逃げられねぇよっ!」

 そう言われて僕はダンと背中を壁に打ち付けられる。痛い、痛いが何とかしないと。
 僕は腕を握っている指一本を取って、そのまま指の関節の可動域とは逆方向に思いっきり曲げた。その人は悲鳴をあげる。

「痛ってええええ!!!お前…!!」

 その声に驚いた仲間たちは彩葉たちを押さえる力が弱まる。その間に彩葉たちは何とか抜け出す。

「早く逃げて!!!」

 彩葉たちは少し狼狽えてから路地から抜け出した。それを見た僕は安堵する。
 しかしまだ問題は終わっていない。

「このガキが!!お前らそっちはもういい!コイツだ!!コイツだけは…!!」

 仲間2、3人に体を押さえつけられ、身動きが取れない。体を浮かせられ、ローファーが脱げる。地に足が付かない。バタバタと足を動かすが、そんなの相手にとっては無駄な抵抗でしかない。

「はは、お前みたいな自己犠牲する正義感溢れるガキ、俺は好きだぜ」

 ニタニタと笑うその笑顔に怖気がする。
 その人は僕の体を服の上から触る。

「ひっ」

 気持ち悪い、気持ち悪い!僕は短い悲鳴をあげる。それを聞いたその人は余計に気分を良くした。

「そんなんだからこんな酷い目に遭うんだよ。友達なんか見捨てりゃいいのに。お前1人だけだったら逃げられてたぜ?」

 五月蝿い五月蝿い。僕にとって彩葉たちは、初めてできた友達で、何としてでも守るべき存在なんだ。ずっと笑顔でいてほしいから。お前らなんかには分からない、分かるはずがない。
 そう思っている間にも、手は段々と際どい場所を触っていく。

 スカートの金具を外され、ファスナーをジリジリとゆっくり下される。
 ゆるくなったスカートは、ずるりと僕の足に引っかかる。

「チッ。スパッツ履いてんのかよ」

 僕はセーラー服の下にインナーとスパッツを着ている。
 しかしスカートが下がり、インナーの裾が見えると、そこから中に手を入れられる。

「や、やだ!嫌っ!」

 ざらりとその人の手の感触が伝わってくる。僕は生理的な涙を浮かべるが、それはその人の加虐心を余計に煽るだけだ。

「やっば、、、」

 下着のホックをパチンと外され、それはただ肩に掛かっているだけの物になる。スパッツにも手をかけられ、必死に抵抗しようとするが、それも叶わない。堪えきれない涙がボロボロと流れる。泣いても、何も無いのに。何にもならないのに。ただコイツをいい気にさせるだけなのに。
 分かっているのに涙が止まらない。怖い、怖い。オープンキャンパスで体験したアレとは違う。本当に乱暴されてしまうのだ。

 嫌だ、嫌だ。そう思っても現実は非情だ。
 目の前の人は自分ベルトをするりと引き抜く。
 後ろの人から首筋を舐められ、舌の生暖かくヌメッた感触が伝う。
 僕は短い悲鳴をあげて泣くことしか出来ない。

「ぅ、あぁ、せ、、せんせ、」

「先生?」

 呼んでもこないのに。僕はまだあの時のようなことを期待している。馬鹿だなぁ、僕。でも、彩葉達がこんな目に遭うなんて、僕は耐えられない。

「ハッ。恐怖で何言ってんかわかんねぇな」

 僕の目から光が消えたとき、急に仲間の1人が声をあげて倒れる。

 「はっ!?」

 みんなが驚いてそっちを見る。僕は力無く目線だけを動かす。

 そこには無表情で立っている先生がいた。
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