28 / 30
元・宿屋の娘は推しカプを守りたい
8 おやぁ?
しおりを挟む
ワームの頭を持ってギルドに戻り、早速依頼達成の手続きをする。
パーティーリーダーを請け負ってくれるテオさんの報告が終わり、いつもは軽い反省会をして大したことが無ければすぐに「それじゃあ宿に戻ろうか」となるところだが、今日はそれで終わらなかった。
「テオ様。私の……いえ、ブラック家の護衛騎士になりませんこと?」
突然、ナユユちゃんがキラキラの笑顔でテオさんの勧誘を始めた。
「テオ様はとっても強いし、何よりも素晴らしい索敵能力がありますもの!きっとお父様も認めてくださるわ!立ち振る舞いもしっかりしていて、きっと誰もが憧れるような騎士になりますわね!」
予想外のわがままに、テオさんは眉尻を下げて反論した。
「申し訳ありません、俺は冒険者としてやっていきたいんです。学のない平民なので騎士は向いていないでしょうし、冒険者として生きると決めたので」
しかしナユユちゃんはかなりポジティブだったらしい。テオさんのはっきりとした拒否にもめげることはなかった。
「それなら、わたくしとパーティーを組みませんこと?ええ、それが良いわ!わたくしは回復魔法を使えるし、攻撃魔法も使えますのよ!前衛が心許なかったらラスターも入れて3人で、王都を拠点に活動するの!」
「補助という点ではマリアちゃんの実力の方が上ですよ。そもそも、」
「今回の任務では、マリアは一回も回復魔法を使っていませんでしたわ!」
私とリリーを放り出すようなことを言ったナユユちゃんにテオさんは少し呆れたように返した。
そしてテオさんの反論の途中で言葉を返したナユユちゃんに、ラスターさんがもはや敬う体もなく反論した。
「気付かなかったのか?メンバーに怪我がなかったのは、それだけお嬢の補助が上手かったからだ」
「そんなこと───」
「イビルファルコンに襲われたとき、補助役がお嬢じゃなかったらあんたは無事じゃなかっただろうな」
「なんですって?」
「魔法で出すことができる障壁は一枚であっても遠れた場所に固定することが難しく、二枚が限界だと言われているわ。マリアはその障壁を二枚ともあなたを護るために使い、その上自分の身まで守ったのよ」
「その間あんたは何をしてた?襲われる状況を作っておきながら怯えて動けてもいなかっただろ」
ラスターさんの口撃にリリーまで加わって、言葉による集団攻撃の様相を呈してきた。
ナユユちゃんの急な勧誘には私だってムッとなった。しかしここまで皆が怒っているのを見ると冷静になると同時に、ナユユちゃんが少しかわいそうに思えてくる。
まあ、同情よりも皆がパーティーを大事にしてくれていることへの嬉しさが勝る間は止めるつもりはありませんけど。怒ってくれる存在って貴重ですよ。今回はわざと必要以上に責めているようだけど、ナユユちゃんはまだ諦めていないみたいなので。
「だ、だって、元々はマリアとリリーの二人でパーティーを組む予定だったのでしょう!?」
ナユユちゃんの言葉に、一瞬、なぜそれを!?と思ったのだが、魅了されたときにいろいろ聞かれて答えてしまったのを思い出す。うわああまた私のせいでした!
焦ったように言い放ったナユユちゃんは、私たちが黙ったところでさらに続ける。
「テオ様とラスターはわたくしが面倒を見てあげるから、二人は予定通りに旅を続けて……」
ナユユちゃんが言葉の途中で黙ったのは、そのときになってやっと、テオさんの雰囲気がガラリと変わったことに気付いたからだった。
そりゃあもう爽やかな笑顔なんです、顔は。ただね、雰囲気が真っ黒なんです。どす黒いオーラを背負って、終いには武器に手をかけそうになっているんです。
爽やか王子様の称号すら裸足で逃げ出しそうな様子に、目の前にいるナユユちゃんだけでなく私たちまでピシッと固まった。
「ああ、ナユユ様には申し上げておりませんでしたね。俺があなたの申し出を断る断る一番の理由は、愛する人と同じ時を過ごせなくなることが耐えられないからですよ」
…………ん?
………………んん!?
今テオさん何て言いましたか!?
パーティーリーダーを請け負ってくれるテオさんの報告が終わり、いつもは軽い反省会をして大したことが無ければすぐに「それじゃあ宿に戻ろうか」となるところだが、今日はそれで終わらなかった。
「テオ様。私の……いえ、ブラック家の護衛騎士になりませんこと?」
突然、ナユユちゃんがキラキラの笑顔でテオさんの勧誘を始めた。
「テオ様はとっても強いし、何よりも素晴らしい索敵能力がありますもの!きっとお父様も認めてくださるわ!立ち振る舞いもしっかりしていて、きっと誰もが憧れるような騎士になりますわね!」
予想外のわがままに、テオさんは眉尻を下げて反論した。
「申し訳ありません、俺は冒険者としてやっていきたいんです。学のない平民なので騎士は向いていないでしょうし、冒険者として生きると決めたので」
しかしナユユちゃんはかなりポジティブだったらしい。テオさんのはっきりとした拒否にもめげることはなかった。
「それなら、わたくしとパーティーを組みませんこと?ええ、それが良いわ!わたくしは回復魔法を使えるし、攻撃魔法も使えますのよ!前衛が心許なかったらラスターも入れて3人で、王都を拠点に活動するの!」
「補助という点ではマリアちゃんの実力の方が上ですよ。そもそも、」
「今回の任務では、マリアは一回も回復魔法を使っていませんでしたわ!」
私とリリーを放り出すようなことを言ったナユユちゃんにテオさんは少し呆れたように返した。
そしてテオさんの反論の途中で言葉を返したナユユちゃんに、ラスターさんがもはや敬う体もなく反論した。
「気付かなかったのか?メンバーに怪我がなかったのは、それだけお嬢の補助が上手かったからだ」
「そんなこと───」
「イビルファルコンに襲われたとき、補助役がお嬢じゃなかったらあんたは無事じゃなかっただろうな」
「なんですって?」
「魔法で出すことができる障壁は一枚であっても遠れた場所に固定することが難しく、二枚が限界だと言われているわ。マリアはその障壁を二枚ともあなたを護るために使い、その上自分の身まで守ったのよ」
「その間あんたは何をしてた?襲われる状況を作っておきながら怯えて動けてもいなかっただろ」
ラスターさんの口撃にリリーまで加わって、言葉による集団攻撃の様相を呈してきた。
ナユユちゃんの急な勧誘には私だってムッとなった。しかしここまで皆が怒っているのを見ると冷静になると同時に、ナユユちゃんが少しかわいそうに思えてくる。
まあ、同情よりも皆がパーティーを大事にしてくれていることへの嬉しさが勝る間は止めるつもりはありませんけど。怒ってくれる存在って貴重ですよ。今回はわざと必要以上に責めているようだけど、ナユユちゃんはまだ諦めていないみたいなので。
「だ、だって、元々はマリアとリリーの二人でパーティーを組む予定だったのでしょう!?」
ナユユちゃんの言葉に、一瞬、なぜそれを!?と思ったのだが、魅了されたときにいろいろ聞かれて答えてしまったのを思い出す。うわああまた私のせいでした!
焦ったように言い放ったナユユちゃんは、私たちが黙ったところでさらに続ける。
「テオ様とラスターはわたくしが面倒を見てあげるから、二人は予定通りに旅を続けて……」
ナユユちゃんが言葉の途中で黙ったのは、そのときになってやっと、テオさんの雰囲気がガラリと変わったことに気付いたからだった。
そりゃあもう爽やかな笑顔なんです、顔は。ただね、雰囲気が真っ黒なんです。どす黒いオーラを背負って、終いには武器に手をかけそうになっているんです。
爽やか王子様の称号すら裸足で逃げ出しそうな様子に、目の前にいるナユユちゃんだけでなく私たちまでピシッと固まった。
「ああ、ナユユ様には申し上げておりませんでしたね。俺があなたの申し出を断る断る一番の理由は、愛する人と同じ時を過ごせなくなることが耐えられないからですよ」
…………ん?
………………んん!?
今テオさん何て言いましたか!?
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
婚約者の浮気相手が子を授かったので
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。
ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。
アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。
ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。
自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。
しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。
彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。
ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。
まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。
※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。
※完結しました
(完結)お姉様を選んだことを今更後悔しても遅いです!
青空一夏
恋愛
私はブロッサム・ビアス。ビアス候爵家の次女で、私の婚約者はフロイド・ターナー伯爵令息だった。結婚式を一ヶ月後に控え、私は仕上がってきたドレスをお父様達に見せていた。
すると、お母様達は思いがけない言葉を口にする。
「まぁ、素敵! そのドレスはお腹周りをカバーできて良いわね。コーデリアにぴったりよ」
「まだ、コーデリアのお腹は目立たないが、それなら大丈夫だろう」
なぜ、お姉様の名前がでてくるの?
なんと、お姉様は私の婚約者の子供を妊娠していると言い出して、フロイドは私に婚約破棄をつきつけたのだった。
※タグの追加や変更あるかもしれません。
※因果応報的ざまぁのはず。
※作者独自の世界のゆるふわ設定。
※過去作のリメイク版です。過去作品は非公開にしました。
※表紙は作者作成AIイラスト。ブロッサムのイメージイラストです。
【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。
鏑木 うりこ
恋愛
クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!
茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。
ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?
(´・ω・`)普通……。
でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
五年目の浮気、七年目の破局。その後のわたし。
あとさん♪
恋愛
大恋愛での結婚後、まるまる七年経った某日。
夫は愛人を連れて帰宅した。(その愛人は妊娠中)
笑顔で愛人をわたしに紹介する夫。
え。この人、こんな人だったの(愕然)
やだやだ、気持ち悪い。離婚一択!
※全15話。完結保証。
※『愚かな夫とそれを見限る妻』というコンセプトで書いた第四弾。
今回の夫婦は子無し。騎士爵(ほぼ平民)。
第一弾『妻の死を人伝てに聞きました。』
第二弾『そういうとこだぞ』
第三弾『妻の死で思い知らされました。』
それぞれ因果関係のない独立したお話です。合わせてお楽しみくださると一興かと。
※この話は小説家になろうにも投稿しています。
※2024.03.28 15話冒頭部分を加筆修正しました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる