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元・宿屋の娘は推しカプを守りたい

7 討伐完了

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「はあぁぁぁぁ……」

 戦闘が終わると足から力が抜けて、地面にへたり込んでしまった。

「お疲れ様、大変だったわね」

 背負っている大きな鞘に剣をおさめたリリーが、苦笑いしながら手を貸してくれる。

「すみません、ナユユちゃんに注意し損ねました」

 ここまで挑発に乗りやすい相手ばかりだったので、後衛こちらに意識が向けられることはなかった。何も知らずに突然攻撃されたら当然驚くわけで。

「怖かったぁぁ!」

 ナユユちゃんが泣きそうな顔でテオさんに抱きつく様子を見て、申し訳なくなる。


「危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありません。おけがはありませんか?」

 離れないナユユちゃんを困ったように宥めているテオさんに合流し、彼女に怪我がないか確かめる。そんなことになれば一大事だ。

「怪我はないけれど、心臓が止まるかと思いましたわ!」

 怪我がなかったことに胸をなで下ろし、涙目になる彼女にもう一度「すみません」と謝り、今度は他のメンバーの確認をする。


「ごめんね。怪我はしたけど、これは治療の必要が無いやつだから」
「そうですか……了解です」

 テオさんの肩近く、上腕の辺りの傷は確かに酷いものではない。

 冒険者になった当初は全ての傷を治療しようとしていたが、かなり早い段階で一日持たないことが分かった。
 まあ、冒険者になりたてのヒヨコレベルですし当然でしたね。


 とりあえず応急手当だけしようとしたら、ナユユちゃんが声をかけてきた。

「あの、マリアができないなら、わたくしがテオ様のけがを治してもよろしいですか?」
「いいけど、魔力は大丈夫なんですか?」

 このとき私は「一日持つか」という意味で聞いたのだが、ナユユちゃんは先ほど魔法を使ったことだと勘違いしたようだった。

「あれくらいなんともありませんわ。さ、テオ様、けがを見せてくださいませ!」

 結局、これくらいの我が儘ならと、困っているテオさんには犠牲になってもらった。
 ナユユちゃんは回復魔法の適性があったようで、回復魔法ヒールを唱えると治りはゆっくりだったけれど傷はきれいに消えた。

 テオさんにお礼を言われたナユユちゃんは満足気だったので良かったです。美少女の得意気な顔ってほっこりした気分になりますよね。


「いた。距離500、ゆっくりだけどこっちに来てる」

 テオさんが目的のワームを見つけると、全員に緊張が走る。

「これだったら、作戦通りにいけるかな?マリアちゃん、頼んだよ」
「了解です!【妖精さんピクシー妖精さんピクシー、イタズラしましょう♪】」

 私が姿を消すまじない(凄く恥ずかしい)をすると、テオさんとリリーが別れて木の上に、ラスターさんが私たちの前に出る配置につく。


 ズッ……ズズッ……

 少しすると音がして、ワームが姿を現した。
 私たちに気付かず、リリーがいる木の前に来たとき───

「一 刀 両 断 ッ!」

 強化魔法で、その上からスキルで強化されたリリーの一振りにより、首をはねられたワームはあっさりと死んでいったのだった。

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