27 / 30
元・宿屋の娘は推しカプを守りたい
7 討伐完了
しおりを挟む
「はあぁぁぁぁ……」
戦闘が終わると足から力が抜けて、地面にへたり込んでしまった。
「お疲れ様、大変だったわね」
背負っている大きな鞘に剣をおさめたリリーが、苦笑いしながら手を貸してくれる。
「すみません、ナユユちゃんに注意し損ねました」
ここまで挑発に乗りやすい相手ばかりだったので、後衛に意識が向けられることはなかった。何も知らずに突然攻撃されたら当然驚くわけで。
「怖かったぁぁ!」
ナユユちゃんが泣きそうな顔でテオさんに抱きつく様子を見て、申し訳なくなる。
「危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありません。おけがはありませんか?」
離れないナユユちゃんを困ったように宥めているテオさんに合流し、彼女に怪我がないか確かめる。そんなことになれば一大事だ。
「怪我はないけれど、心臓が止まるかと思いましたわ!」
怪我がなかったことに胸をなで下ろし、涙目になる彼女にもう一度「すみません」と謝り、今度は他のメンバーの確認をする。
「ごめんね。怪我はしたけど、これは治療の必要が無いやつだから」
「そうですか……了解です」
テオさんの肩近く、上腕の辺りの傷は確かに酷いものではない。
冒険者になった当初は全ての傷を治療しようとしていたが、かなり早い段階で一日持たないことが分かった。
まあ、冒険者になりたてのヒヨコレベルですし当然でしたね。
とりあえず応急手当だけしようとしたら、ナユユちゃんが声をかけてきた。
「あの、マリアができないなら、わたくしがテオ様のけがを治してもよろしいですか?」
「いいけど、魔力は大丈夫なんですか?」
このとき私は「一日持つか」という意味で聞いたのだが、ナユユちゃんは先ほど魔法を使ったことだと勘違いしたようだった。
「あれくらいなんともありませんわ。さ、テオ様、けがを見せてくださいませ!」
結局、これくらいの我が儘ならと、困っているテオさんには犠牲になってもらった。
ナユユちゃんは回復魔法の適性があったようで、回復魔法を唱えると治りはゆっくりだったけれど傷はきれいに消えた。
テオさんにお礼を言われたナユユちゃんは満足気だったので良かったです。美少女の得意気な顔ってほっこりした気分になりますよね。
「いた。距離500、ゆっくりだけどこっちに来てる」
テオさんが目的のワームを見つけると、全員に緊張が走る。
「これだったら、作戦通りにいけるかな?マリアちゃん、頼んだよ」
「了解です!【妖精さん妖精さん、イタズラしましょう♪】」
私が姿を消す呪い(凄く恥ずかしい)をすると、テオさんとリリーが別れて木の上に、ラスターさんが私たちの前に出る配置につく。
ズッ……ズズッ……
少しすると音がして、ワームが姿を現した。
私たちに気付かず、リリーがいる木の前に来たとき───
「一 刀 両 断 ッ!」
強化魔法で、その上からスキルで強化されたリリーの一振りにより、首をはねられたワームはあっさりと死んでいったのだった。
戦闘が終わると足から力が抜けて、地面にへたり込んでしまった。
「お疲れ様、大変だったわね」
背負っている大きな鞘に剣をおさめたリリーが、苦笑いしながら手を貸してくれる。
「すみません、ナユユちゃんに注意し損ねました」
ここまで挑発に乗りやすい相手ばかりだったので、後衛に意識が向けられることはなかった。何も知らずに突然攻撃されたら当然驚くわけで。
「怖かったぁぁ!」
ナユユちゃんが泣きそうな顔でテオさんに抱きつく様子を見て、申し訳なくなる。
「危険な目に遭わせてしまい、申し訳ありません。おけがはありませんか?」
離れないナユユちゃんを困ったように宥めているテオさんに合流し、彼女に怪我がないか確かめる。そんなことになれば一大事だ。
「怪我はないけれど、心臓が止まるかと思いましたわ!」
怪我がなかったことに胸をなで下ろし、涙目になる彼女にもう一度「すみません」と謝り、今度は他のメンバーの確認をする。
「ごめんね。怪我はしたけど、これは治療の必要が無いやつだから」
「そうですか……了解です」
テオさんの肩近く、上腕の辺りの傷は確かに酷いものではない。
冒険者になった当初は全ての傷を治療しようとしていたが、かなり早い段階で一日持たないことが分かった。
まあ、冒険者になりたてのヒヨコレベルですし当然でしたね。
とりあえず応急手当だけしようとしたら、ナユユちゃんが声をかけてきた。
「あの、マリアができないなら、わたくしがテオ様のけがを治してもよろしいですか?」
「いいけど、魔力は大丈夫なんですか?」
このとき私は「一日持つか」という意味で聞いたのだが、ナユユちゃんは先ほど魔法を使ったことだと勘違いしたようだった。
「あれくらいなんともありませんわ。さ、テオ様、けがを見せてくださいませ!」
結局、これくらいの我が儘ならと、困っているテオさんには犠牲になってもらった。
ナユユちゃんは回復魔法の適性があったようで、回復魔法を唱えると治りはゆっくりだったけれど傷はきれいに消えた。
テオさんにお礼を言われたナユユちゃんは満足気だったので良かったです。美少女の得意気な顔ってほっこりした気分になりますよね。
「いた。距離500、ゆっくりだけどこっちに来てる」
テオさんが目的のワームを見つけると、全員に緊張が走る。
「これだったら、作戦通りにいけるかな?マリアちゃん、頼んだよ」
「了解です!【妖精さん妖精さん、イタズラしましょう♪】」
私が姿を消す呪い(凄く恥ずかしい)をすると、テオさんとリリーが別れて木の上に、ラスターさんが私たちの前に出る配置につく。
ズッ……ズズッ……
少しすると音がして、ワームが姿を現した。
私たちに気付かず、リリーがいる木の前に来たとき───
「一 刀 両 断 ッ!」
強化魔法で、その上からスキルで強化されたリリーの一振りにより、首をはねられたワームはあっさりと死んでいったのだった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
【完結済み】当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。
BBやっこ
恋愛
貴族の家に生まれたからには、その責務を全うしなければならない。そう子供心に誓ったセリュートは、実の父が戻らない中“当主代理”として仕事をしていた。6歳にやれることなど微々たるものだったが、会ったことのない実父より、家の者を護りたいという気持ちで仕事に臨む。せめて、当主が戻るまで。
そうして何年も誤魔化して過ごしたが、自分の成長に変化をせざるおえなくなっていく。
1〜5 赤子から幼少
6、7 成長し、貴族の義務としての結婚を意識。
8〜10 貴族の子息として認識され
11〜14 真実がバレるのは時間の問題。
あとがき
強かに成長し、セリとしての生活を望むも
セリュートであることも捨てられない。
当主不在のままでは、家は断絶。使用人たちもバラバラになる。
当主を探して欲しいと『竜の翼』に依頼を出したいが?
穏やかで、好意を向けられる冒険者たちとの生活。
セリとして生きられる道はあるのか?
<注意>幼い頃から話が始まるので、10歳ごろまで愛情を求めない感じで。
恋愛要素は11〜の登場人物からの予定です。
「もう貴族の子息としていらないみたいだ」疲れ切った子供が、ある冒険者と出会うまで。
※『番と言われましたが…』のセリュート、ロード他『竜の翼』が後半で出てきます。
平行世界として読んでいただけると良いかもと思い、不遇なセリュートの成長を書いていきます。
『[R18] オレ達と番の女は、巣篭もりで愛欲に溺れる。』短編完結済み
『番と言われましたが、冒険者として精進してます。』 完結済み
『[R18]運命の相手とベッドの上で体を重ねる』 完結
『俺たちと番の女のハネムーン[R18]』 ぼちぼち投稿中
婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。
なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。
そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。
そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。
彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。
それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。
【完結】契約結婚は円満に終了しました ~勘違い令嬢はお花屋さんを始めたい~
九條葉月
ファンタジー
【ファンタジー1位獲得!】
【HOTランキング1位獲得!】
とある公爵との契約結婚を無事に終えたシャーロットは、夢だったお花屋さんを始めるための準備に取りかかる。
花を包むビニールがなければ似たような素材を求めてダンジョンに潜り、吸水スポンジ代わりにスライムを捕まえたり……。そうして準備を進めているのに、なぜか店の実態はお花屋さんからかけ離れていって――?
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる