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国軍少佐期
1 少佐就任も突然です
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次の日、ロペス大将に呼ばれて国軍本部に行ってみると、部屋に入ってすぐに少佐任命状を渡された。
「すみません。私、少佐を倒した覚えはないのですが」
訳が分からないままそう言った私に、ロペス大将はため息を吐く。
「お前が今少佐まで倒したら、問題になるぞ」
「そうですよね。では、これは何なのでしょうか?」
「昨日、アーロン様達の“会合”に、おまえのところの隊員が飛び込んできただろう?」
「ああ……」
そういえば、ジェイソンが飛び込んできて何だかこそこそと話していた。それに……
「……そういえば、報告を受けました。アリア殿を狙った刺客の主がこの国の名家の一つと繋がっていたとか」
「そこまで思い出したなら話は早い。その件で謀反の証拠を掴むことができたから、彼女の護衛隊と指揮官に褒賞を与えることになったのだ」
「それで私には昇進を、ということですか」
一応理解の姿勢を示した私に、ロペス大将は頷いた。
「そういうことだ。昇進はレミー大尉とキャンベル中尉。それぞれ一階級の昇進だ。レミー大尉が指揮をしていた隊をキャンベル中尉が引き継ぐ形になる」
つまり、ジェイソンを大尉に戻して私の仕事を最小限の引き継ぎで受け渡し、私は少佐という地位を持って、自由な状態で特別任務を受けるということだろう。
どうやらアリアは、上手く“内緒話”を進めたらしい。ただの“お使い”にしては破格の対応だった。
「なるほど。理解はしました。少佐への昇進、謹んでお受けします」
アリアから聞いた話だが、実はレミーの中佐への昇進は、尉官になった時点でほぼ確定だったようだ。
『戦乙女』の側仕えとして女性軍人は必須で、それにふさわしい能力のある人物はある程度の地位を与えられるらしい。
女性軍人はそもそもそこまで数が多くない。
その上『強さこそ正義』なこの国で、身体能力に劣る女性に士官は非常に少なく、20歳にも満たずに尉官になれるだけの能力があれば『戦乙女』の側近候補としては十分だったそうだ。
そんなこんなで、昇進を急ぐ必要は無くなったわけだが……早いに越したことはないということで、ありがたく昇進を受けることにしたのだった。
ちなみに私の部下だった赤獅子隊の一部護衛部隊の隊員は、ジェイソンが直属の上司になることに戸惑うことはなかった。むしろ「下手な尉官に指示を出されるよりも断然良い」と大喜びだったそうだ。
イケメンでいなければならない“レミー”としては反省するべきところだけど、事務仕事が得意な上官が下官に喜ばれる状況というのは、脳筋部隊としてはすばらしい進歩だ……と、思うことにしたのだった。
「すみません。私、少佐を倒した覚えはないのですが」
訳が分からないままそう言った私に、ロペス大将はため息を吐く。
「お前が今少佐まで倒したら、問題になるぞ」
「そうですよね。では、これは何なのでしょうか?」
「昨日、アーロン様達の“会合”に、おまえのところの隊員が飛び込んできただろう?」
「ああ……」
そういえば、ジェイソンが飛び込んできて何だかこそこそと話していた。それに……
「……そういえば、報告を受けました。アリア殿を狙った刺客の主がこの国の名家の一つと繋がっていたとか」
「そこまで思い出したなら話は早い。その件で謀反の証拠を掴むことができたから、彼女の護衛隊と指揮官に褒賞を与えることになったのだ」
「それで私には昇進を、ということですか」
一応理解の姿勢を示した私に、ロペス大将は頷いた。
「そういうことだ。昇進はレミー大尉とキャンベル中尉。それぞれ一階級の昇進だ。レミー大尉が指揮をしていた隊をキャンベル中尉が引き継ぐ形になる」
つまり、ジェイソンを大尉に戻して私の仕事を最小限の引き継ぎで受け渡し、私は少佐という地位を持って、自由な状態で特別任務を受けるということだろう。
どうやらアリアは、上手く“内緒話”を進めたらしい。ただの“お使い”にしては破格の対応だった。
「なるほど。理解はしました。少佐への昇進、謹んでお受けします」
アリアから聞いた話だが、実はレミーの中佐への昇進は、尉官になった時点でほぼ確定だったようだ。
『戦乙女』の側仕えとして女性軍人は必須で、それにふさわしい能力のある人物はある程度の地位を与えられるらしい。
女性軍人はそもそもそこまで数が多くない。
その上『強さこそ正義』なこの国で、身体能力に劣る女性に士官は非常に少なく、20歳にも満たずに尉官になれるだけの能力があれば『戦乙女』の側近候補としては十分だったそうだ。
そんなこんなで、昇進を急ぐ必要は無くなったわけだが……早いに越したことはないということで、ありがたく昇進を受けることにしたのだった。
ちなみに私の部下だった赤獅子隊の一部護衛部隊の隊員は、ジェイソンが直属の上司になることに戸惑うことはなかった。むしろ「下手な尉官に指示を出されるよりも断然良い」と大喜びだったそうだ。
イケメンでいなければならない“レミー”としては反省するべきところだけど、事務仕事が得意な上官が下官に喜ばれる状況というのは、脳筋部隊としてはすばらしい進歩だ……と、思うことにしたのだった。
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