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国軍少佐期

13 役割についてです

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 乙女ゲーム『Holy Valkyrie』の話の大筋は、主人公が4つの国のどこかに召喚されて、その国の聖女、または戦乙女ヴァルキリー(国によって呼び方が変わる)となって戦争を止めるというものだ。


 シナリオは大きく分けて3段階。
 主人公が異世界転移してからその世界に馴染むまで1月ほど、その後戦争パートがあって、復興するまでの内容だ。

 主人公の運命を左右するのは物語の中にある様々な選択である。
 時間ができたら何をするのか。誰との交流を深めるか。どの権力者を味方にして、誰を頼るのか。…………

 そして、サポキャラは情報収集や助言をする存在であり、ゲームの難易度は彼らがどれほど優秀かで決まる。
 そのサポキャラである“レミー”になってしまった私がしなければならないことは、ゲームを『イージーモード』にすることだ。
 私がであることは、ハッピーエンド、すなわち平和への近道であり、平穏な生活を送るための必要条件なのである。


 …………とまあ、ここまでだらだらと考えているのは、気付いてしまったからなのだ。
 何にって?

 情報収集の方法を確立していなかったことにです……。

 これはやばいかもしれない。
 他の国の転生者との情報交換はしているから、他国の情報はある。
 しかし思い出してほしい。サポキャラの主なイメージを。彼らが期待されているのは社会情勢の知識ではなく、キャラクター達の主人公への好感度を数値化して伝えることである。
 少なくとも『ホリヴァル』ではそれをしていたのだ。

 私、サポキャラだよ? 何も知らないサポーターとか、笑い話にもならないよ?
 しかしよく考えてみてほしい。好感度の数値化なんて、どうすればいいのか。
 それができたら、世界中の恋する乙女の悩みは8割方消えて無くなることだろう。
 要するに、方法がないのだ。

 普段の護衛や警備などの仕事をこなす日常に戻ってから何日も考え込んだのだが何の解決策も思いつかない。


『私も同じことを考えて、魔道具を開発している所よ。動物は好意を持つ相手に無意識に微量なエネルギーを送るから、それを計測すれば良いのだけど、その好意が友情なのか恋情なのかの判別が難しいのよ』

 さんざん悩んだ末に、念話でアリアに助けを求めたらそう言われた。
 すでに行動を始めていた様子。相変わらず先見の明が凄すぎる。

『どれだけ調べてもエネルギーに違いが無いのよね……。魔道具を渡せたとしても、今の状態で完成させることになるでしょうから、最後の判別は自分でしないといけないわよ。それでもいい?』
『十分だよ。役割が果たせないかもってひやひやしてたから。好意の数値化ができるなら、最後の判断くらいはできるようにがんばればいいんだしね』

 確か、好感度によってキャラクターの言動が変化していたはず。
 数値化された好意と言動で点数化して好感度を判断……とかできそうな気がする。

 まずは転生者同士で情報を交換して、点数化の基準を話し合って……。
 ……うん。なんとかなりそうな気がしてきた。


「よし……やりますか!」

 ゲームが始まるまであと2年弱。長いんだか、短いんだか分からない。
 どちらにしても、ぎりぎりまで“良いサポキャラ”を目指すしかないよね。

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