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少年期

9 手合わせです 2

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「始め!」

 師匠の合図で二人同時に地面を蹴る。

 イアンは走った勢いのまま斧を振り抜き、私はそれを避けて懐に入り込もうとする。

 しかしイアンの斧は急に方向を変えて私に迫ってきた。イアンが強化魔法を使っているのは明らかだが、破壊力の強い斧が自由自在に動くのはかなりの驚異だ。

 それからしばらく、私が動き回って攻撃を仕掛けて、イアンがなぎ払うような打ち合いが続いた。
 素早さを中心に鍛えている私を相手に、中距離武器で懐に入らせない立ち回りは見事としか言い様がない。

「ははっ、ここまで完璧に防がれるとちょっと傷つくなぁ!」
「俺の方が強いんだから当然だろ!」
「へえ……?」

 準備はできた。

 私はイアンから距離を取ると、いくつもの光の球を頭上に浮かべた。

「それは魔法を使っても、かな?」

 それらをイアンの方に向かって一気に打ち出す。
 しかしイアンは光の球をなぎ払ってしまった。

「コントロールが甘いんじゃねえの?」

 確かにいくつかはイアンから逸れてその後ろに着弾している。
 イアンは魔法によって傷一つつかなかったが───

「チェックメイトだよ」
「……は?」

 次の瞬間、私はイアンの背後からその喉元に剣を添えていた。

「レミーの勝ちだな」

 師匠の気怠げな宣言が響き、私は剣を下ろす。

「ふふっ。使わなかったね、安全装置」

 悔しそうに振り返ったイアンは、足下にあるに気付いた。

「───っ!魔方陣!?いつの間に……」
「言っとくけど、試合開始前に描いたわけじゃないからね?」
「それは分かってるよ!でも、足で描くとかできないはずだし……ああ、魔法か。土魔法で描いて、最後のあれはエネルギー補充か!」

 ちょっと考えただけで答えを当ててしまった。

「君って、頭悪そうに見えてちゃんと考えられるよね……」
「頭悪そうは余計だよ!」

 叫んだイアンだったが、早速土魔法で魔方陣を描く練習をし始めた。

「うわっ、これ以外と難しいな。戦いながらとかおまえどんだけ器用なんだよ……」
「うまくいって良かったよ。でもこんなに早くバレるとは……」

 もちろん、器用さについてはレミーのハイスペック補正が強い。
 それと、特殊な方法で固定していない魔方陣は魔法で破壊できてしまうから、初お披露目でバレたのは痛い。

「まあ気付かなきゃ奇襲にもなるし、使えねえこともねえな」

 そう言った師匠が土魔法で複雑な魔方陣を描き終えて、影魔法を地面伝いに飛ばすと魔方陣から火柱が上がった。

 ラスボスかな?と思ってしまったのは仕方ないことだと思う。

 ついでに言うと、土魔法で魔方陣を描く方法は“遠隔魔方陣”と名付けられ、次の日にはほとんどの団員の知るところとなった。
 そこそこ難しいらしく、今のところ実践で使えそうなのは私と師匠、ミーニャ他数人の魔法使いの団員だけだった。まあでも、練習次第でできそうな団員も何人かいたので、使い手は増えていくことだろう。

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