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保健室の先生
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「はい、どうぞ」
今井先生は、紅茶を淹れ終えると、デスクの脇に椅子をもう一つ持ってきてくれた。私はその椅子に座って、デスクの上で湯気を立てているティーカップを見つめる。
心臓はまだドキドキしていた。だって、だって、ちゅって!今井先生がちゅって!
「もしかして、紅茶は苦手ですか?」
紅茶を飲む様子のない私にそう尋ねながら、今井先生は淹れたての紅茶を口にする。
「いえ、苦手じゃないです。苦手じゃないですけど……」
「けど?」
今井先生は、絶対にわかっている。私がどうして紅茶に手を付けられずにいるのか。カタカタ。今度は手が震えているのだ、あと、頭がぽーっとする。とても、紅茶を飲める状態じゃない。
「早く飲まないと、そろそろ入学式が終わってしまいますよ?ホームルームには出ないつもりですか?」
「え?」
保健室の時計を見ると、私が入学式を途中で抜けてから、随分と時間が経っていた。今井先生が淹れてくれた紅茶……飲まないのは勿体ない、けど、手が。
「手が、震えていますね。あれだけのことで、可愛らしい」
か、可愛らし……!?今井先生、やっぱりわかってて……!あぁ、もう、意識すればするほど手が震える。紅茶に手を伸ばしたり引っ込めたり、私がそんなことをしていると、今井先生がスッと席を立った。
「仕方がないですね、これもサービスです」
今井先生は私の脇にやってくると、私の分の紅茶が入ったティーカップを手にした。そして、ティーカップを私の口元に持ってくる。ティーカップの取っ手に絡みつく指が、なんだかいやらしく見えた……って、私はなにを考えているんだ!
「あの、今井先生?なにを、」
「飲ませてあげます」
「じ、自分で飲めますから!」
「飲めないじゃないですか、手が震えていて」
「そのうち、治まりますから、」
「ほら、口を開けて」
「あの、今井せんせ、」
「……いいから、口を開けなさい」
う……今井先生はどうしても、私に紅茶を飲ませたいらしい。私は観念して、唇を薄く開く。ティーカップがゆっくり、ゆっくり傾けられた。
口の中に、温かい紅茶が流れ込んでくる。コクリ、喉を鳴らして飲み込むと、いつの間にか冷えていたらしい身体が温まって、気分が良くなった。
もう一口。そう言って、今井先生はもう一度、ティーカップを傾ける。流れ込んでくる紅茶、広がる香りと、今井先生の妙な甘やかし(サービス)が私の気分を、さらに高揚させていく。
もう少し、もう少しだけ。私がそう思っていたら、ティーカップは私の口元から離れていった。私が残念に思っていると、丁度その時、学校のチャイムが鳴った。そのチャイムは、私に入学式の終わりと、今井先生との時間の終わりを告げていた。
今井先生は、紅茶を淹れ終えると、デスクの脇に椅子をもう一つ持ってきてくれた。私はその椅子に座って、デスクの上で湯気を立てているティーカップを見つめる。
心臓はまだドキドキしていた。だって、だって、ちゅって!今井先生がちゅって!
「もしかして、紅茶は苦手ですか?」
紅茶を飲む様子のない私にそう尋ねながら、今井先生は淹れたての紅茶を口にする。
「いえ、苦手じゃないです。苦手じゃないですけど……」
「けど?」
今井先生は、絶対にわかっている。私がどうして紅茶に手を付けられずにいるのか。カタカタ。今度は手が震えているのだ、あと、頭がぽーっとする。とても、紅茶を飲める状態じゃない。
「早く飲まないと、そろそろ入学式が終わってしまいますよ?ホームルームには出ないつもりですか?」
「え?」
保健室の時計を見ると、私が入学式を途中で抜けてから、随分と時間が経っていた。今井先生が淹れてくれた紅茶……飲まないのは勿体ない、けど、手が。
「手が、震えていますね。あれだけのことで、可愛らしい」
か、可愛らし……!?今井先生、やっぱりわかってて……!あぁ、もう、意識すればするほど手が震える。紅茶に手を伸ばしたり引っ込めたり、私がそんなことをしていると、今井先生がスッと席を立った。
「仕方がないですね、これもサービスです」
今井先生は私の脇にやってくると、私の分の紅茶が入ったティーカップを手にした。そして、ティーカップを私の口元に持ってくる。ティーカップの取っ手に絡みつく指が、なんだかいやらしく見えた……って、私はなにを考えているんだ!
「あの、今井先生?なにを、」
「飲ませてあげます」
「じ、自分で飲めますから!」
「飲めないじゃないですか、手が震えていて」
「そのうち、治まりますから、」
「ほら、口を開けて」
「あの、今井せんせ、」
「……いいから、口を開けなさい」
う……今井先生はどうしても、私に紅茶を飲ませたいらしい。私は観念して、唇を薄く開く。ティーカップがゆっくり、ゆっくり傾けられた。
口の中に、温かい紅茶が流れ込んでくる。コクリ、喉を鳴らして飲み込むと、いつの間にか冷えていたらしい身体が温まって、気分が良くなった。
もう一口。そう言って、今井先生はもう一度、ティーカップを傾ける。流れ込んでくる紅茶、広がる香りと、今井先生の妙な甘やかし(サービス)が私の気分を、さらに高揚させていく。
もう少し、もう少しだけ。私がそう思っていたら、ティーカップは私の口元から離れていった。私が残念に思っていると、丁度その時、学校のチャイムが鳴った。そのチャイムは、私に入学式の終わりと、今井先生との時間の終わりを告げていた。
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