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分岐
分岐③下(r-18)
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木製の文机に、埃がこびりついた窓。あとは薄汚れた色彩の、黄ばんだカーテン。
誇り臭くてこぢんまりとした部屋の隅には、木製のベッドが鎮座している。
そしてその上には、同様に小さく身体を丸めた青年が横たわっていた。引っ掛けただけのワイシャツの下には、情事を匂わせる、赤い鬱血痕や歯形があちらこちらに散らばっていた。
揺れるカーテンの隙間から、細い陽光が差し込む。唯一の光源であるそれは、青年の横顔に一筋の道を作って。眠るわけでもなく。半開きの黒目は、部屋の扉にただ向けられていた。
その表情に色はなく、青年は文字通り、がらんどうだった。
思い出したようにシーツを手繰り寄せては、瞬きする。秒針の音だけが鋭く響く空間の中で、植物のように時間を浪費して。
「…………」
ぴく、と。
わずかに赤らんだ青年の目元が、小さく痙攣する。そのころには、細い陽光すら完全に途絶えていた。
「け、圭一!」
騒がしい気配と共に、扉が開く。半泣きで部屋に転がり込んできた男は、そのまま転がりながらベッドの上の青年へと縋りつく。
そんな男の抱擁を、『圭一』と呼ばれた青年は無抵抗に受け入れる。圭一の目には、まるで、恋人にでも向けるような慈愛が籠っていた。
「おかえり、狩野」
ベッドに腰かけたまま、甘やかな声で男の名を呼ぶ。男──『狩野』は嗚咽を止め、涙に潤んだ金目で青年を見つめる。
「け、圭一…………」
圭一の腰にまきついたまま、ぐりぐり、ぐりぐりとその薄い腹へと相貌を押し付ける。その度に、柔らかな黒髪がふわふわ揺れる。「えんえん…………」と涙ぐみながら、頭を撫でる優しい手の感触を享受して。
「きいてよ!『怠惰』……あいつ鬼だよ、人使いが荒すぎるよ!俺が逆らえないのを良いことに、第一王子殺害の後始末を全部おれにおっかぶせてさぁ!いや、おれも当事者には違いないけれど、元凶は彼なわけで…………!」
自らを見下ろすの膝に、頬を押し付けたまま鼻を啜る。潤んだ目で、スラックスに涙がシミを作るさまを眺めた。
「圭一との時間も、全然取れてない」
拗ねたような口調でありながら、声音は囁くようなものだった。僅かに、部屋の空気が湿り気を帯びる。二人の間でだけ意味を持つ、特別な周波数があるみたいに。終始慈愛だけを湛えていた双眸に、蕩けるような欲火が灯る。
「ほったらかしにして、ごめんね」
「…………」
「おまえをこんなにしたのはおれなのに」
切なげな声音で言いながら、身体を起こしてはベッドに乗り上げた。ベッドのスプリングが、二人分の体重に悲鳴を上げる。
熱っぽい視線を絡め合いながら、狩野の右手は、青年の相貌を引き寄せて。左手は、ちょうど青年の、臍の下辺りを優しく撫でる。すり、すり、と。整えられた指先が、時々臍の穴をつついて。
空っぽの胎に、大きな手のひらの体温がじんわりと沁み込む。男から快楽を教え込まれた胎は、それだけで切なく疼いた。
「圭一?」
おもむろに立ち上がっては、床に膝をつく。怪訝な声には答えずに、代わりに圭一は、男の脚の間に陣取って。
「かの」
ぽってりと腫れた唇が、あどけなさすら残る口調で名前を呼ぶ。
「…………きて?」
内腿に頬を擦り付けながら、物欲しげな視線で男を見上げる。たわんだ双眸に光は無く、ただただ、燻るような欲があるだけだった。
先刻とは別人のように淫猥に微笑む青年に、狩野は唾を嚥下した。
狩野の股座に相貌を埋めたまま、ボクサーパンツの膨らみを食む。黒の布地は、先走りの染みにじっとりと濡れている。頭を優しく撫でられる感覚に、喉を鳴らしては愛おし気に見下ろしてくる男を熱っぽく見つめ返す。
やおらボクサーパンツの縁に掛けられた青白い指先が、スルスルと布切れを引き下ろして。
ブルンッ♡と現れたペニスに、青年のうつろな目がうっとりとたわむ。
太く、反り返った竿に、相手の弱点をこそぎ、責め立てることに特化した高い雁首。そして何よりその赤黒い色は、生白い身体とのギャップに、よりグロテスクに存在を主張する。
青年は潤んだ目のまま、ずっしりと重い陰嚢を持ち上げるように指を添わせる。桃色の唇が、ちぅ、とキスをするように鈴口を吸う。尿道から吸い上げた先走りの雄臭い香りに、酩酊したように頬を赤らめて。血管の浮き出た竿に薄い舌を這わせるその表情は、夢見ごこちに蕩けきったものだった。
「ん……♡はむ♡」
鼻から抜けるような甘い声で啼きながら、頬が膨らむまで夢中になって陰茎を加えこむ。舌先でカリ首の溝をほじっては、指先でふにふにと陰嚢の裏を揉み込んで。
「…………っ♡ん…圭一♡リスみたいで、かぁい♡……違う違う!♡♡苦しくなぁい?♡」
言葉で答える代わりに、その怒張をより深く咥え込む。喉奥を侵される感覚に、苦し気に歪められながらも、黒い目は幸福そうに潤んでいて。
なで♡なで♡と、青年の柔らかな栗毛の感触を楽しみながら、きゅう♡と締まる喉奥の感触に荒い息を漏らす。
「ぁ♡締ま……あったかい♡♡けーいち♡でる、はなして♡♡ナカに出しちゃ…♡♡♡」
小さく痙攣する目元が、凄艶に弧を描く。さらに、ぐ♡と増した締め付けに、「あ♡あ♡あ♡」と情けない声が漏れて。
長く赤黒い陰茎が、ぶわ、と体積を増す。
「あ♡でちゃ…………♡♡」
びゅ♡びゅるるるるるるる♡♡♡ドピュドピュドピュ♡♡♡♡♡
「~~~っ♡ん゛ぉぉぉ、お゛♡え♡♡え゛♡」
勢いよく口内に流れ込んできた粘っこい熱を、吐き出されたそばから、呑み下していく。幸色に満ちた涙目のまま、無防備にむき出された生白い首で喉仏が上下する。
ぶるん♡♡と引き抜かれた陰茎は、射精直後でもその硬さを失ってはいなかった。
「っ、げほ…………ッ♡♡ぇ゛……ッ♡げほげほげほ……っ♡」
激しく咳き込みながらも、ごっくん♡と全てを呑み干して。いやらしく弧を描いた口端から垂れた精液を、親指で拭っては、ちゅ♡と舐めとった。
一連の様子を熱ぽい瞳で見つめては、未だ酩酊したように蕩け切った小ぶりな頭に手を伸ばす。熱く、柔らかく緩んだ頬を両手で包み込んでは、相貌を近付けて。興奮と欲望をどろどろに煮詰めたようなアンバーが、熱っぽく青年を見つめた。
煙るような睫毛が、物鬱気に伏せられたまま音を立てて瞬く。「圭一」と切なげに名前を呼んで、行き場を失ったように唇を開閉させる。
「ごめん」
結局、か細く漏れ出たのは謝罪だった。
「ごめんね、圭一。壊しちゃってごめん。でもおれ、幸せで、幸せで堪らなくて───」
濁って、正気の失せ切った青年の目は、ぴかぴか光る男の双眸だけを反射していて。
「かの、だいすき」
「…………っ、」
「すき、だいすき。あいしてる」
「~~~っ、圭一、」
未だ床に膝をついたまま。自らの手に頬擦りする青年を、狩野は掻き抱いた。
ベッドに雪崩こむ二人分の体重に、スプリングが軋む。
細い身体を抱きしめた、その肩口に相貌を擦りつける。「圭一、圭一」と縋るような声音に、青年はうつろな目のまま「おれも」「ずっといっしょ」と繰り返して。
する、と。男の股ぐらを、物欲しげな手つきで撫でる。
欲に濡れた黒目が、男の物鬱気な様子にどこかあどけなく瞬く。どこか、稚気めいた所作で首を傾げては、「かの」ともう一度名前を呼んだ。
「圭一…………」
焦れたように自らのスラックスを下ろし始めた青年に、狩野の目にもまたどろりとした欲が渦巻く。
ストリップショーのように、衣服を脱ぎ去って。
「かの♡きて♡……はやく」
自ら脚を開いては、柔らかくて白い尻を明け渡す。以前は慎ましやかに閉じていた後孔は、今はふっくらと縦に割れていて。見る人間が見れば、そこで何度も何度も雄を咥え込んできたのだとすぐに分かるような有様だった。
ひくひくと物欲しげに震える後孔を、ぐぱ、と開いては「かの」とまた切ない声で啼いて。ぐるぐる、ぐるぐる、と目を回す男の口から、か細い悲鳴が漏れた。
ばちゅん…ッ♡♡どちゅん♡♡♡どちゅん…ッ!!♡♡♡ごちゅん…………ッ!!♡♡♡♡
「~~~ッ♡ぁ゛ッ♡あは♡♡狩野……ッ♡♡!!すき♡すきぃ゛♡♡」
「かわいい♡かわいい♡♡圭一♡♡おれも大好き♡♡♡」
「~~ッ♡♡♡♡ぁ゛♡深い゛……ッ♡♡♡♡奥゛♡ぅッ♡♡♡」
ぎしぎし、ぎしぎしとベッドが軋む。正常位で交わり合いながら、青年のアナルは、ぐっっぽり♡♡と凶悪な怒張を根元まで咥え込んでいた。
「ぁ゛♡♡か、の♡♡イ゛……っ♡イグ…ッ♡♡♡おれ、また…!♡♡」
「いいよ♡イって♡♡♡かわいいイキ顔見せて♡♡ね♡圭一の好きなとこ、いっぱい突いてあげるから、ねぇ♡♡♡」
言いながら、汗ばんだ腰へと手を掛ける。ひくひくと痙攣する首筋を喰みながら、新たに咲いた鬱血痕に頬を緩ませる。
「圭一の喜ぶところ……あ、くぽ♡くぽ♡って浅く出し入れして?おへその裏のおんなのこスイッチ、こねこね♡ってされるの、大好きだよね♡♡」
ぐちっ♡ぐちっ♡♡にちっ♡♡にちちっ♡♡♡♡
「~~ッ、♡♡ぉ゛ほぉ゛ッ♡♡♡ごり、ごりぃ…ッ♡」
「うんうん♡きもちぃねぇ♡♡あとは、とろとろの入口、先っぽで優しくキスするのも好きだよね?♡♡♡」
こつこつ♡♡こつん♡こちゅん♡こちゅんっ♡♡♡
「あっ、♡あっ、あっ、あっ、♡♡♡しきゅ、♡いじめないで♡♡ぁ、」
「い、いやだった?じゃあほら、ねちっぽいの、やめようね♡♡ちゃんとぐぽぐぽ♡ってしてたくさんイッて?♡」
ぐぽぐぽ、ぐぽぐぽ♡♡
奥まで嵌まりこんだ高い雁首が、ぐっぽん♡と結腸の弁を捲り上げるようにして引き抜かれる。キスをするように小突いては、また埋め込まれて、思い切り抜かれて。
何度も、
「あ゛っ♡ぎっ♡ぁンッ♡♡イ゛、ギィ……ッ♡♡♡」
何度も、
「っ、♡♡も、♡イってる゛♡♡♡ィ゛っでる゛がら゛ぁ゛~~~~!!♡♡♡」
何度も、何度も、何度も。
「ぐぽぐぽ、もう、や゛ぁ゛~~~~~♡♡」
上擦った悲鳴と共に、一際大きく内壁がうねる。
びゅるっ♡♡♡びゅるるるる~~~~~♡♡♡♡♡
「ひ、ン~~~~♡♡ぁ゛~~~~~~~……♡♡♡」
あへ♡あへ♡♡と舌を突き出し、胎を満たす温かさに感じ入る。
胎内に埋められたままのそれは、萎えることがなく、未だ存在を主張し続けていて。
「圭一、圭一かわいい♡♡圭一♡きもちいい?」
砂糖菓子みたいな甘ったるい声で尋ねられて、額に汗を浮かべたまま、にへら、と笑う。
「嬉しい♡♡♡おれで気持ちよくなってくれてありがとう♡♡」
「お、れも♡♡おれも、かのこときもちよくできて、嬉しい♡♡」
「~~~~っ、圭一!」
繋がったまま、細い肢体をぎゅうぎゅうと抱きしめる。湿ったまま吸い付いてくる肌の温度を堪能しながら、「圭一」とまた甘い声で囁く。
「ね、おれね。圭一にずっとお願いしたいことがあったんだ」
「お、願い?」
「『幸人』って」
ゼロ距離で耳に吹き込まれる湿った吐息に、青年の腹がひくと引き攣る。
「『幸人』って、名前で呼んでほしいな」
引き攣った胎は、埋め込まれた肉棒をきゅう、と締め付けて。
どくん、どくんと。
動きが無いぶん鮮明に感じとれる形が、さらに熱く、大きく膨らんで。
「ぁ、また♡♡もうちょっと、待っ……♡♡」
「おれ、まだ動いてないよ?」
「ぁ、でも…ッ♡♡かの……」
「『幸人』♡♡」
「~~~ッ!♡♡♡~~~~ッ、ン♡♡」
ビクン!♡ビクン!♡♡と、青年の身体が一際大きく跳ねた。
動かないまま達したという事実に思考が追いつかず、とろんとした目のまま疑問符を浮かべる。半開きの口からはだらしなく涎が垂れて、何も理解できないまま絶頂の余韻に浸って。
「かわいい♡」
そんな声音と共に、ぐるん、と青年の視界が裏返る。両膝を、折り畳まれるように相貌の位置にまで持ち上げられたかと思えば、ごっちゅん♡と腰を振り下ろすように穿たれて。
「お゛♡♡ひ、♡♡♡♡~~~~~ッあちゅ、♡♡♡深゛ッ、♡♡♡♡♡ぃ~~♡♡♡♡♡♡♡」
遅れて脳を焼いた快感に、青年の目が、ぐると裏返る。
涙と涎と、諸々の体液でぐちゃぐちゃになった青年を、熱っぽい目で眺める。
ちろ、と。赤い舌が、唇を濡らして。
「圭一♡」
どちゅん!!と。
名前を呼ぶのと同時に、また思い切り腰を振り下ろした。
ペニスの質量に押し出されるようにして、つい先ほど吐き出された白濁液が、泡立ったまま押し出される。
どちゅ♡どちゅ♡どちゅ♡どちゅ♡どちゅ、どちゅ♡♡どちゅ♡どちゅ♡
「ぁ゛っ、♡♡♡♡お゛♡♡ンん゛゛!♡♡♡♡♡お゛くまで……っ、♡♡♡♡いッ♡♡♡ギゅゥ……ッ!♡♡♡♡」
「圭一♡♡圭一♡かわいいね、圭一♡」
パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡♡♡♡
「あっ、あっ、あっ♡♡♡♡は、ひ、♡♡♡きも、ひ♡♡♡~~~、あ♡♡…ンっ♡♡♡」
「ねぇ、おれの名前、呼んで♡♡呼びながらイって♡♡」
にち♡♡にち♡にち♡にち♡にち♡にちちっ♡♡♡♡
「おねがい。ねぇ、お願い、圭一♡♡♡♡」
「きゃひ……♡♡♡♡ィん゛゛♡♡♡……ッ♡♡あ♡ぎぃ♡♡ゆ、きと♡♡あ、あ、あ♡♡また、イって♡♡♡ゆきと♡♡ぉ♡」
「……は♡♡あはは!あはははは!♡♡♡もっと!♡♡もっと呼んで圭一!♡♡」
「幸人♡♡ゆきと♡♡ゆきとゆきとゆきと♡♡♡♡ぁ゛ッ♡♡イク゛!♡♡ゆぎとぉ…ッ!♡♡♡♡♡たしゅけ♡♡♡」
ぶぴゅっ♡♡♡びゅるるるるふ♡♡♡と、二度目の射精に、青年の喉が、くぅん♡と切ない啼き声を漏らす。狩野の腰に脚を回して、貪欲に快楽を貪って。腰に掛かった爪先が、ピンと伸びてはゆるゆる弛緩する。
腰を押し付け合うようにして、乱れた多幸感に浸りながら。
「んん゛ンぅうう…………ッ♡♡♡♡」
赤黒い肉棒が、伸び切った縁を引っ張るようにして引き抜かれる。
痙攣する瞼のまま、その煽情的な光景を見つめては、だらりと手脚を弛緩させる。痛々しいまでに鬱血痕や歯形だらけの胸元が、浅く上下した。
身動げば、胎内を満たした精液が、ちゃぷ♡ちゃぷ♡♡と音を立てて揺れたみたいで、思わず下腹を抑えて背を丸めて。
「圭一」
同じく、青年の隣に並ぶように横になった狩野が、手を伸ばしては湿った小指を青年のそれに絡めた。
「……?」
「…………これももうちょっとで消せる」
光の無い黒目が、狩野の視線を追うように、自らの小指へと吸い寄せられて。
「…………………」
指輪のように巻き付く赤い痣を、食い入るように見つめる。開き切った瞳孔のまま、瞬き一つなく。
「もう直ぐ、『強欲』を屈服させられる」
「…………強、欲。屈服…」
「うんそしたらね。圭一は今度こそ本当におれのだよ」
「………………」
「嬉しいよねぇ。ね、圭一。嬉しいって言って?」
横髪を摘んだ指を、そのまま頬に這わせる。甘くたわんだ蜂蜜色の瞳に、青年は逆らえない。ぴかぴかと瞬く光に、思考を灼かれるまま。
「あ、う、嬉し………幸人の物になれて、うれ…」
言葉は続かない。
赤い痣が、焼けるように熱を持ちはじめたから。先刻までは茹で上がっていた頬は蒼白で、額から脂汗が滲み出てくる。
見開かれた瞳は、ゆらゆら、ゆらゆらと定まらない焦点で虚空に幾何学を描いて。
「……っ、あ、ぐ、おれ、」
震える手で、顔を覆う。
ずきん、ずきん。ずきん、ずきん。頭が割れそうだった。小指の痛みが頭に伝播したような。指の隙間から覗いた黒目は見開かれ、ぐるぐる、とまだら色の混乱が渦巻いていた。
「………やっぱり、早く燃やさないとだ」
「燃、や……何、言って、」
「明日、レタンタの森は燃える。そしたら『強欲』は、核を失う」
青年の瞳に、正気の光が宿る。
そしてそれは、慄くような恐怖心と一緒に揺れて。
「狩、野」
「あれ、圭一♡おはよう♡」
「……おはよう、じゃな……だめ、だ、そんなこと、許されちゃ────」
「許されるよ?」
アンバーの瞳が、収縮する。目を見開いたまま、頬を包み込んだ指先が、青年の耳朶を擦った。
「『強欲』は、プライド殿下暗殺の主犯格。それでいてレタンタの森は、彼が率いるレジスタンスの拠点だった。──つまり、テロリストの根城だ」
「…………ぇ、う、違、」
「明日のそれは正式な掃討作戦だ。むしろ正義はこちら側にある」
何がいけないの、と。一般常識でもそらんじるような声音で諭されて、途端に、宙吊りになってしまったかのような不安定に陥る。
────異端なのは、自分の方なのか?
ちがう、と、頭の奥で誰かが叫んだ。その誰かは、自分によく似た声をしていた。
全てを覚えてはいないけれど、彼の話には嘘が混じっている。そう思った。
だって、第一に。第一に、『傲慢』である王族を殺したのは確か────、
「……グリードさんじゃ、な、」
「圭一」
「へ、……ぉ゛♡ひゅ……ッ!♡♡」
ぐぽん、と。
そんな衝撃と共に、視界が明滅する。甘く痺れる思考を懸命に働かせて、ようやく、自らが串刺しにされたのだと気付く。
先刻まで狩野を咥え込んでいた後孔は、容易く巨大な質量の侵入を許していて。
「ぁああ゛~~~ッ♡♡…カひュ……ッ!♡♡」
「ひどい、ひどいよ圭一。マナー違反だよ」
「へ♡ぉれ゛♡♡♡なん゛…ッ♡すぐ、イッて…♡♡♡♡ィ゛んッ♡♡ぁあ゛~~~♡♡♡」
「余計なことは、忘れようねぇ♡♡♡」
一際強く突き上げられて、輪郭を取り始めた違和感が霧散する。
ぴんと突き出された小さな舌に、狩野は喰らいつくようにキスをする。厚い舌が、歯列をなぞっては口内を掻き回す。奥に引っ込もうとする小さな舌を捕らえて。淫猥な音を立てながら、互いの唾液を混ぜ合うように絡める。
蕩け切った目で接吻を受け入れる圭一に反して、細められた金眼は、冷徹な理性を湛えたままだった。
「……か、の、やっぱり、こんなの、間違って──ぃ゛ン…ッ!♡♡」
「なぁに、圭一♡なに言ってるか全然聞こえない♡」
「だ、からぁッ♡♡燃、やすなって───ィッ!♡♡一旦、止ま、突くの、止め……ッ♡♡♡」
「やめない♡ねぇ、ほら。大事なことなんでしょう?頑張れ♡がんばれ♡♡」
「燃や、すな♡♡ぁ、あっ、あっ、♡♡燃……もや、さないでぇ、♡♡~~~~ッ♡♡」
「やだ♡」
ゴツン!と。腰を強く打ちつけられて、ドロドロの身体が弓形に反る。久しく役割を果たしていなかった男性器から、ぴゅ♡ぴゅ♡♡と薄い精を吐き出して。
「~~ッ、♡か、の……ォ!」
「『幸人』」
「あ゛ッ♡ぉ゛ッ!♡♡」
千切れそうな糸を手繰り寄せては男を睨みつけるも、また突き上げられては呆気なく屈服する。
「なん、おれ、♡♡ずっとからだおかじ……ッ♡♡♡やめて、かの、助け、やぁ゛……ッ!♡♡」
「ちがうよね。『幸人』って、呼んでって。言ったよね?」
「あ゛ッ♡ギッ♡♡知゛らな……♡ぉ゛へぇ゛ッ!♡わがった、♡♡わ゛がっ゛だがら゛!!♡♡♡」
ゴンゴン♡♡ドチュン♡♡ドチュドチュドチュンッ♡♡♡♡
両腕を引き寄せられながら、最奥をひたすらにガン突きされる。
逃げ場のない快感を、開発され切った身体は従順に拾っては貪って。
自らの身体の変化に、ただただ混乱する。何も理解できないまま、髪を振り乱してはイキ狂う圭一を、狩野は仄暗い笑みを浮かべたまま見ていた。
「ゆきとっ♡♡♡ゆぎと…ッ♡♡♡ぁ゛、か、ゆき、と♡♡♡♡」
半ば叫ばれるように連呼される自らの名前に、相貌からは邪気が消えていく。
「お願い、聞いてくれてありがとう♡」
なんて。満面の笑みのまま攻めの手を緩めて、甘やかすように、両手を恋人のように絡め合う。先刻まで捕まれていた手首には、真っ赤な手形の痣が残っていて。
「夢、叶ったよ♡」
にへ、と、幸色に緩み切った表情のまま、びくん♡びくん♡♡と震える身体を抱きしめた。
「けいいち、けいいち。また会えて嬉しい♡♡」
「~~~っ、♡♡ぁ、やだぁ!♡♡もう、やめ♡♡」
「うんうん、甘イキ、止まらないねぇ♡」
緩やかに腰をグラインドさせては、媚びるように吸い付いてくる内壁に、精液を擦り付ける。
「それで?」
僅かに声音を低く落として。狩野は、指先を絡め直しては耳元に唇を寄せた。
「さっき、言ってたよね。大事なお願いがあるって」
「ぇあ……?」
「誰が、何だっけ?」
熱に浮かされた目で、男の無機質な双眸を眺める。
「ぇ、お、れ……」
「うん、良いよ。ゆっくりで」
「お、れは、」
……………なんだっけ。自分は、なにをあそこまで必死になっていたんだっけ?
何も、思い出せなかった。
霞みがかった思考の向こう。顔面を黒く塗り潰された藍髪の男が、何かを叫んで。
焦点の定まらない視界が、不意に真っ暗に染まる。
圭一の視界は、狩野の手に塞がれていた。「圭一」と、神経毒のような甘い声が、直接耳から吹き込まれては思考を溶かすみたいだった。
「今忘れちゃうようなことなら、きっと大事なことじゃないんだよ」
「ぁ、でも、こんなこと、してる場合じゃ────」
「また悪いことを考えてる?」
低い、声だった。
覚えのある腰遣いに、圭一の肩が強張る。次に開けた視界に映り込んだのは、色が抜け落ちた端正な相貌だった。
「おさらいを、しようねぇ」
目を見開いたまま、くたくたの青年に詰め寄る。
頬を包み込んで、強引に視線を合わせる。黄金色に輝く色彩に、火照った相貌からは血の気が引いて行く。
その頃には、圭一は何もかもをはっきりと思い出していて。それこそ、今まで自分が、この目をした狩野に何をされてきたのかも。
「や、や゛ぁっ、それ、も、いや……」
「嘘つき♡ナカ締まったよ♡♡ねえ♡頭弄られるの、気持ちいいもんねぇ♡♡わかるよ♡」
「あ♡あ♡ぁ、や゛♡だめ、♡だめだ♡か…かの、」
「『狩野』?」
「あ♡ゆ、ゆきと♡♡」
よくできました、とばかりに、青年が甘い笑みを佩く。
こつん♡こつん♡と、甘やかすような抽挿に、燻る恐怖心に反して思考が蕩けていく。
いつも。いつもこうだった。
黄金色の目で、頭の中を覗かれて、
「ねえ、圭一の帰るところはどこ?」
真っ白な手で、こじ開けられて。
「欲しいものはなに?」
それで、それで。その指で、中身をぐちゃぐちゃにされて。
「いちばん大事な物はなぁに?」
こつん♡こつん♡こつん♡♡小刻みにゆすられて、快楽と一緒に刻みつけられる。
「ぁ゛♡♡あ゛♡あ……あ゛♡♡♡」
狩野、狩野、狩野、かのう、かの、狩野、ゆきと、幸人、ゆきと♡♡♡
記憶も、思考も、何もかも。頭の中いっぱいで、全部が目の前の男に塗り潰されていく。
首を横に振っても、目を瞑っても、脳内で明滅する金色から逃れられない。ぴかぴか、ぴかぴかと光っては、こちらが沈んでいく様をただ見下ろしていた。
波のように絶え間なく押し寄せる頭痛に、赤い手形の巻きついた手首で頭を抱える。シーツの上でもがいては、口端から涎を垂らして唸り声を上げて。
「ぁ、ゆきと……」
ここ十数分のうちで、初めて意味のある言葉が紡がれる。
「ゆきと、だけ、要らない、ほかは、なにも、」
途切れ途切れ、絞り出すような喘鳴をヒュウヒュウと漏らす。
乱れた前髪の隙間から覗く目は、どこまでもうつろな色彩をしていた。光の失せ切った黒目は、涙に濡れたまま壁の滲みをただ眺めていて。
憔悴しきった横顔を覆い隠す栗毛を、優しく避けては「あはは」と笑って。
「おれも!かわいいのも欲しいのも、圭一だけ!」
譫言のように、意味のない単語をただ繰り返す唇を、優しく喰んでは、水桃みたいに頬を染めた。
「…………好きどうしだね、圭一♡」
抱き上げられては、ぐるん、と人形みたいに仰け反って。閉じきった扉を、無感情に見つめるその鼻腔から、真っ赤な血がひとすじ流れた。
誇り臭くてこぢんまりとした部屋の隅には、木製のベッドが鎮座している。
そしてその上には、同様に小さく身体を丸めた青年が横たわっていた。引っ掛けただけのワイシャツの下には、情事を匂わせる、赤い鬱血痕や歯形があちらこちらに散らばっていた。
揺れるカーテンの隙間から、細い陽光が差し込む。唯一の光源であるそれは、青年の横顔に一筋の道を作って。眠るわけでもなく。半開きの黒目は、部屋の扉にただ向けられていた。
その表情に色はなく、青年は文字通り、がらんどうだった。
思い出したようにシーツを手繰り寄せては、瞬きする。秒針の音だけが鋭く響く空間の中で、植物のように時間を浪費して。
「…………」
ぴく、と。
わずかに赤らんだ青年の目元が、小さく痙攣する。そのころには、細い陽光すら完全に途絶えていた。
「け、圭一!」
騒がしい気配と共に、扉が開く。半泣きで部屋に転がり込んできた男は、そのまま転がりながらベッドの上の青年へと縋りつく。
そんな男の抱擁を、『圭一』と呼ばれた青年は無抵抗に受け入れる。圭一の目には、まるで、恋人にでも向けるような慈愛が籠っていた。
「おかえり、狩野」
ベッドに腰かけたまま、甘やかな声で男の名を呼ぶ。男──『狩野』は嗚咽を止め、涙に潤んだ金目で青年を見つめる。
「け、圭一…………」
圭一の腰にまきついたまま、ぐりぐり、ぐりぐりとその薄い腹へと相貌を押し付ける。その度に、柔らかな黒髪がふわふわ揺れる。「えんえん…………」と涙ぐみながら、頭を撫でる優しい手の感触を享受して。
「きいてよ!『怠惰』……あいつ鬼だよ、人使いが荒すぎるよ!俺が逆らえないのを良いことに、第一王子殺害の後始末を全部おれにおっかぶせてさぁ!いや、おれも当事者には違いないけれど、元凶は彼なわけで…………!」
自らを見下ろすの膝に、頬を押し付けたまま鼻を啜る。潤んだ目で、スラックスに涙がシミを作るさまを眺めた。
「圭一との時間も、全然取れてない」
拗ねたような口調でありながら、声音は囁くようなものだった。僅かに、部屋の空気が湿り気を帯びる。二人の間でだけ意味を持つ、特別な周波数があるみたいに。終始慈愛だけを湛えていた双眸に、蕩けるような欲火が灯る。
「ほったらかしにして、ごめんね」
「…………」
「おまえをこんなにしたのはおれなのに」
切なげな声音で言いながら、身体を起こしてはベッドに乗り上げた。ベッドのスプリングが、二人分の体重に悲鳴を上げる。
熱っぽい視線を絡め合いながら、狩野の右手は、青年の相貌を引き寄せて。左手は、ちょうど青年の、臍の下辺りを優しく撫でる。すり、すり、と。整えられた指先が、時々臍の穴をつついて。
空っぽの胎に、大きな手のひらの体温がじんわりと沁み込む。男から快楽を教え込まれた胎は、それだけで切なく疼いた。
「圭一?」
おもむろに立ち上がっては、床に膝をつく。怪訝な声には答えずに、代わりに圭一は、男の脚の間に陣取って。
「かの」
ぽってりと腫れた唇が、あどけなさすら残る口調で名前を呼ぶ。
「…………きて?」
内腿に頬を擦り付けながら、物欲しげな視線で男を見上げる。たわんだ双眸に光は無く、ただただ、燻るような欲があるだけだった。
先刻とは別人のように淫猥に微笑む青年に、狩野は唾を嚥下した。
狩野の股座に相貌を埋めたまま、ボクサーパンツの膨らみを食む。黒の布地は、先走りの染みにじっとりと濡れている。頭を優しく撫でられる感覚に、喉を鳴らしては愛おし気に見下ろしてくる男を熱っぽく見つめ返す。
やおらボクサーパンツの縁に掛けられた青白い指先が、スルスルと布切れを引き下ろして。
ブルンッ♡と現れたペニスに、青年のうつろな目がうっとりとたわむ。
太く、反り返った竿に、相手の弱点をこそぎ、責め立てることに特化した高い雁首。そして何よりその赤黒い色は、生白い身体とのギャップに、よりグロテスクに存在を主張する。
青年は潤んだ目のまま、ずっしりと重い陰嚢を持ち上げるように指を添わせる。桃色の唇が、ちぅ、とキスをするように鈴口を吸う。尿道から吸い上げた先走りの雄臭い香りに、酩酊したように頬を赤らめて。血管の浮き出た竿に薄い舌を這わせるその表情は、夢見ごこちに蕩けきったものだった。
「ん……♡はむ♡」
鼻から抜けるような甘い声で啼きながら、頬が膨らむまで夢中になって陰茎を加えこむ。舌先でカリ首の溝をほじっては、指先でふにふにと陰嚢の裏を揉み込んで。
「…………っ♡ん…圭一♡リスみたいで、かぁい♡……違う違う!♡♡苦しくなぁい?♡」
言葉で答える代わりに、その怒張をより深く咥え込む。喉奥を侵される感覚に、苦し気に歪められながらも、黒い目は幸福そうに潤んでいて。
なで♡なで♡と、青年の柔らかな栗毛の感触を楽しみながら、きゅう♡と締まる喉奥の感触に荒い息を漏らす。
「ぁ♡締ま……あったかい♡♡けーいち♡でる、はなして♡♡ナカに出しちゃ…♡♡♡」
小さく痙攣する目元が、凄艶に弧を描く。さらに、ぐ♡と増した締め付けに、「あ♡あ♡あ♡」と情けない声が漏れて。
長く赤黒い陰茎が、ぶわ、と体積を増す。
「あ♡でちゃ…………♡♡」
びゅ♡びゅるるるるるるる♡♡♡ドピュドピュドピュ♡♡♡♡♡
「~~~っ♡ん゛ぉぉぉ、お゛♡え♡♡え゛♡」
勢いよく口内に流れ込んできた粘っこい熱を、吐き出されたそばから、呑み下していく。幸色に満ちた涙目のまま、無防備にむき出された生白い首で喉仏が上下する。
ぶるん♡♡と引き抜かれた陰茎は、射精直後でもその硬さを失ってはいなかった。
「っ、げほ…………ッ♡♡ぇ゛……ッ♡げほげほげほ……っ♡」
激しく咳き込みながらも、ごっくん♡と全てを呑み干して。いやらしく弧を描いた口端から垂れた精液を、親指で拭っては、ちゅ♡と舐めとった。
一連の様子を熱ぽい瞳で見つめては、未だ酩酊したように蕩け切った小ぶりな頭に手を伸ばす。熱く、柔らかく緩んだ頬を両手で包み込んでは、相貌を近付けて。興奮と欲望をどろどろに煮詰めたようなアンバーが、熱っぽく青年を見つめた。
煙るような睫毛が、物鬱気に伏せられたまま音を立てて瞬く。「圭一」と切なげに名前を呼んで、行き場を失ったように唇を開閉させる。
「ごめん」
結局、か細く漏れ出たのは謝罪だった。
「ごめんね、圭一。壊しちゃってごめん。でもおれ、幸せで、幸せで堪らなくて───」
濁って、正気の失せ切った青年の目は、ぴかぴか光る男の双眸だけを反射していて。
「かの、だいすき」
「…………っ、」
「すき、だいすき。あいしてる」
「~~~っ、圭一、」
未だ床に膝をついたまま。自らの手に頬擦りする青年を、狩野は掻き抱いた。
ベッドに雪崩こむ二人分の体重に、スプリングが軋む。
細い身体を抱きしめた、その肩口に相貌を擦りつける。「圭一、圭一」と縋るような声音に、青年はうつろな目のまま「おれも」「ずっといっしょ」と繰り返して。
する、と。男の股ぐらを、物欲しげな手つきで撫でる。
欲に濡れた黒目が、男の物鬱気な様子にどこかあどけなく瞬く。どこか、稚気めいた所作で首を傾げては、「かの」ともう一度名前を呼んだ。
「圭一…………」
焦れたように自らのスラックスを下ろし始めた青年に、狩野の目にもまたどろりとした欲が渦巻く。
ストリップショーのように、衣服を脱ぎ去って。
「かの♡きて♡……はやく」
自ら脚を開いては、柔らかくて白い尻を明け渡す。以前は慎ましやかに閉じていた後孔は、今はふっくらと縦に割れていて。見る人間が見れば、そこで何度も何度も雄を咥え込んできたのだとすぐに分かるような有様だった。
ひくひくと物欲しげに震える後孔を、ぐぱ、と開いては「かの」とまた切ない声で啼いて。ぐるぐる、ぐるぐる、と目を回す男の口から、か細い悲鳴が漏れた。
ばちゅん…ッ♡♡どちゅん♡♡♡どちゅん…ッ!!♡♡♡ごちゅん…………ッ!!♡♡♡♡
「~~~ッ♡ぁ゛ッ♡あは♡♡狩野……ッ♡♡!!すき♡すきぃ゛♡♡」
「かわいい♡かわいい♡♡圭一♡♡おれも大好き♡♡♡」
「~~ッ♡♡♡♡ぁ゛♡深い゛……ッ♡♡♡♡奥゛♡ぅッ♡♡♡」
ぎしぎし、ぎしぎしとベッドが軋む。正常位で交わり合いながら、青年のアナルは、ぐっっぽり♡♡と凶悪な怒張を根元まで咥え込んでいた。
「ぁ゛♡♡か、の♡♡イ゛……っ♡イグ…ッ♡♡♡おれ、また…!♡♡」
「いいよ♡イって♡♡♡かわいいイキ顔見せて♡♡ね♡圭一の好きなとこ、いっぱい突いてあげるから、ねぇ♡♡♡」
言いながら、汗ばんだ腰へと手を掛ける。ひくひくと痙攣する首筋を喰みながら、新たに咲いた鬱血痕に頬を緩ませる。
「圭一の喜ぶところ……あ、くぽ♡くぽ♡って浅く出し入れして?おへその裏のおんなのこスイッチ、こねこね♡ってされるの、大好きだよね♡♡」
ぐちっ♡ぐちっ♡♡にちっ♡♡にちちっ♡♡♡♡
「~~ッ、♡♡ぉ゛ほぉ゛ッ♡♡♡ごり、ごりぃ…ッ♡」
「うんうん♡きもちぃねぇ♡♡あとは、とろとろの入口、先っぽで優しくキスするのも好きだよね?♡♡♡」
こつこつ♡♡こつん♡こちゅん♡こちゅんっ♡♡♡
「あっ、♡あっ、あっ、あっ、♡♡♡しきゅ、♡いじめないで♡♡ぁ、」
「い、いやだった?じゃあほら、ねちっぽいの、やめようね♡♡ちゃんとぐぽぐぽ♡ってしてたくさんイッて?♡」
ぐぽぐぽ、ぐぽぐぽ♡♡
奥まで嵌まりこんだ高い雁首が、ぐっぽん♡と結腸の弁を捲り上げるようにして引き抜かれる。キスをするように小突いては、また埋め込まれて、思い切り抜かれて。
何度も、
「あ゛っ♡ぎっ♡ぁンッ♡♡イ゛、ギィ……ッ♡♡♡」
何度も、
「っ、♡♡も、♡イってる゛♡♡♡ィ゛っでる゛がら゛ぁ゛~~~~!!♡♡♡」
何度も、何度も、何度も。
「ぐぽぐぽ、もう、や゛ぁ゛~~~~~♡♡」
上擦った悲鳴と共に、一際大きく内壁がうねる。
びゅるっ♡♡♡びゅるるるる~~~~~♡♡♡♡♡
「ひ、ン~~~~♡♡ぁ゛~~~~~~~……♡♡♡」
あへ♡あへ♡♡と舌を突き出し、胎を満たす温かさに感じ入る。
胎内に埋められたままのそれは、萎えることがなく、未だ存在を主張し続けていて。
「圭一、圭一かわいい♡♡圭一♡きもちいい?」
砂糖菓子みたいな甘ったるい声で尋ねられて、額に汗を浮かべたまま、にへら、と笑う。
「嬉しい♡♡♡おれで気持ちよくなってくれてありがとう♡♡」
「お、れも♡♡おれも、かのこときもちよくできて、嬉しい♡♡」
「~~~~っ、圭一!」
繋がったまま、細い肢体をぎゅうぎゅうと抱きしめる。湿ったまま吸い付いてくる肌の温度を堪能しながら、「圭一」とまた甘い声で囁く。
「ね、おれね。圭一にずっとお願いしたいことがあったんだ」
「お、願い?」
「『幸人』って」
ゼロ距離で耳に吹き込まれる湿った吐息に、青年の腹がひくと引き攣る。
「『幸人』って、名前で呼んでほしいな」
引き攣った胎は、埋め込まれた肉棒をきゅう、と締め付けて。
どくん、どくんと。
動きが無いぶん鮮明に感じとれる形が、さらに熱く、大きく膨らんで。
「ぁ、また♡♡もうちょっと、待っ……♡♡」
「おれ、まだ動いてないよ?」
「ぁ、でも…ッ♡♡かの……」
「『幸人』♡♡」
「~~~ッ!♡♡♡~~~~ッ、ン♡♡」
ビクン!♡ビクン!♡♡と、青年の身体が一際大きく跳ねた。
動かないまま達したという事実に思考が追いつかず、とろんとした目のまま疑問符を浮かべる。半開きの口からはだらしなく涎が垂れて、何も理解できないまま絶頂の余韻に浸って。
「かわいい♡」
そんな声音と共に、ぐるん、と青年の視界が裏返る。両膝を、折り畳まれるように相貌の位置にまで持ち上げられたかと思えば、ごっちゅん♡と腰を振り下ろすように穿たれて。
「お゛♡♡ひ、♡♡♡♡~~~~~ッあちゅ、♡♡♡深゛ッ、♡♡♡♡♡ぃ~~♡♡♡♡♡♡♡」
遅れて脳を焼いた快感に、青年の目が、ぐると裏返る。
涙と涎と、諸々の体液でぐちゃぐちゃになった青年を、熱っぽい目で眺める。
ちろ、と。赤い舌が、唇を濡らして。
「圭一♡」
どちゅん!!と。
名前を呼ぶのと同時に、また思い切り腰を振り下ろした。
ペニスの質量に押し出されるようにして、つい先ほど吐き出された白濁液が、泡立ったまま押し出される。
どちゅ♡どちゅ♡どちゅ♡どちゅ♡どちゅ、どちゅ♡♡どちゅ♡どちゅ♡
「ぁ゛っ、♡♡♡♡お゛♡♡ンん゛゛!♡♡♡♡♡お゛くまで……っ、♡♡♡♡いッ♡♡♡ギゅゥ……ッ!♡♡♡♡」
「圭一♡♡圭一♡かわいいね、圭一♡」
パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡パチュン♡♡♡♡
「あっ、あっ、あっ♡♡♡♡は、ひ、♡♡♡きも、ひ♡♡♡~~~、あ♡♡…ンっ♡♡♡」
「ねぇ、おれの名前、呼んで♡♡呼びながらイって♡♡」
にち♡♡にち♡にち♡にち♡にち♡にちちっ♡♡♡♡
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光の無い黒目が、狩野の視線を追うように、自らの小指へと吸い寄せられて。
「…………………」
指輪のように巻き付く赤い痣を、食い入るように見つめる。開き切った瞳孔のまま、瞬き一つなく。
「もう直ぐ、『強欲』を屈服させられる」
「…………強、欲。屈服…」
「うんそしたらね。圭一は今度こそ本当におれのだよ」
「………………」
「嬉しいよねぇ。ね、圭一。嬉しいって言って?」
横髪を摘んだ指を、そのまま頬に這わせる。甘くたわんだ蜂蜜色の瞳に、青年は逆らえない。ぴかぴかと瞬く光に、思考を灼かれるまま。
「あ、う、嬉し………幸人の物になれて、うれ…」
言葉は続かない。
赤い痣が、焼けるように熱を持ちはじめたから。先刻までは茹で上がっていた頬は蒼白で、額から脂汗が滲み出てくる。
見開かれた瞳は、ゆらゆら、ゆらゆらと定まらない焦点で虚空に幾何学を描いて。
「……っ、あ、ぐ、おれ、」
震える手で、顔を覆う。
ずきん、ずきん。ずきん、ずきん。頭が割れそうだった。小指の痛みが頭に伝播したような。指の隙間から覗いた黒目は見開かれ、ぐるぐる、とまだら色の混乱が渦巻いていた。
「………やっぱり、早く燃やさないとだ」
「燃、や……何、言って、」
「明日、レタンタの森は燃える。そしたら『強欲』は、核を失う」
青年の瞳に、正気の光が宿る。
そしてそれは、慄くような恐怖心と一緒に揺れて。
「狩、野」
「あれ、圭一♡おはよう♡」
「……おはよう、じゃな……だめ、だ、そんなこと、許されちゃ────」
「許されるよ?」
アンバーの瞳が、収縮する。目を見開いたまま、頬を包み込んだ指先が、青年の耳朶を擦った。
「『強欲』は、プライド殿下暗殺の主犯格。それでいてレタンタの森は、彼が率いるレジスタンスの拠点だった。──つまり、テロリストの根城だ」
「…………ぇ、う、違、」
「明日のそれは正式な掃討作戦だ。むしろ正義はこちら側にある」
何がいけないの、と。一般常識でもそらんじるような声音で諭されて、途端に、宙吊りになってしまったかのような不安定に陥る。
────異端なのは、自分の方なのか?
ちがう、と、頭の奥で誰かが叫んだ。その誰かは、自分によく似た声をしていた。
全てを覚えてはいないけれど、彼の話には嘘が混じっている。そう思った。
だって、第一に。第一に、『傲慢』である王族を殺したのは確か────、
「……グリードさんじゃ、な、」
「圭一」
「へ、……ぉ゛♡ひゅ……ッ!♡♡」
ぐぽん、と。
そんな衝撃と共に、視界が明滅する。甘く痺れる思考を懸命に働かせて、ようやく、自らが串刺しにされたのだと気付く。
先刻まで狩野を咥え込んでいた後孔は、容易く巨大な質量の侵入を許していて。
「ぁああ゛~~~ッ♡♡…カひュ……ッ!♡♡」
「ひどい、ひどいよ圭一。マナー違反だよ」
「へ♡ぉれ゛♡♡♡なん゛…ッ♡すぐ、イッて…♡♡♡♡ィ゛んッ♡♡ぁあ゛~~~♡♡♡」
「余計なことは、忘れようねぇ♡♡♡」
一際強く突き上げられて、輪郭を取り始めた違和感が霧散する。
ぴんと突き出された小さな舌に、狩野は喰らいつくようにキスをする。厚い舌が、歯列をなぞっては口内を掻き回す。奥に引っ込もうとする小さな舌を捕らえて。淫猥な音を立てながら、互いの唾液を混ぜ合うように絡める。
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「……か、の、やっぱり、こんなの、間違って──ぃ゛ン…ッ!♡♡」
「なぁに、圭一♡なに言ってるか全然聞こえない♡」
「だ、からぁッ♡♡燃、やすなって───ィッ!♡♡一旦、止ま、突くの、止め……ッ♡♡♡」
「やめない♡ねぇ、ほら。大事なことなんでしょう?頑張れ♡がんばれ♡♡」
「燃や、すな♡♡ぁ、あっ、あっ、♡♡燃……もや、さないでぇ、♡♡~~~~ッ♡♡」
「やだ♡」
ゴツン!と。腰を強く打ちつけられて、ドロドロの身体が弓形に反る。久しく役割を果たしていなかった男性器から、ぴゅ♡ぴゅ♡♡と薄い精を吐き出して。
「~~ッ、♡か、の……ォ!」
「『幸人』」
「あ゛ッ♡ぉ゛ッ!♡♡」
千切れそうな糸を手繰り寄せては男を睨みつけるも、また突き上げられては呆気なく屈服する。
「なん、おれ、♡♡ずっとからだおかじ……ッ♡♡♡やめて、かの、助け、やぁ゛……ッ!♡♡」
「ちがうよね。『幸人』って、呼んでって。言ったよね?」
「あ゛ッ♡ギッ♡♡知゛らな……♡ぉ゛へぇ゛ッ!♡わがった、♡♡わ゛がっ゛だがら゛!!♡♡♡」
ゴンゴン♡♡ドチュン♡♡ドチュドチュドチュンッ♡♡♡♡
両腕を引き寄せられながら、最奥をひたすらにガン突きされる。
逃げ場のない快感を、開発され切った身体は従順に拾っては貪って。
自らの身体の変化に、ただただ混乱する。何も理解できないまま、髪を振り乱してはイキ狂う圭一を、狩野は仄暗い笑みを浮かべたまま見ていた。
「ゆきとっ♡♡♡ゆぎと…ッ♡♡♡ぁ゛、か、ゆき、と♡♡♡♡」
半ば叫ばれるように連呼される自らの名前に、相貌からは邪気が消えていく。
「お願い、聞いてくれてありがとう♡」
なんて。満面の笑みのまま攻めの手を緩めて、甘やかすように、両手を恋人のように絡め合う。先刻まで捕まれていた手首には、真っ赤な手形の痣が残っていて。
「夢、叶ったよ♡」
にへ、と、幸色に緩み切った表情のまま、びくん♡びくん♡♡と震える身体を抱きしめた。
「けいいち、けいいち。また会えて嬉しい♡♡」
「~~~っ、♡♡ぁ、やだぁ!♡♡もう、やめ♡♡」
「うんうん、甘イキ、止まらないねぇ♡」
緩やかに腰をグラインドさせては、媚びるように吸い付いてくる内壁に、精液を擦り付ける。
「それで?」
僅かに声音を低く落として。狩野は、指先を絡め直しては耳元に唇を寄せた。
「さっき、言ってたよね。大事なお願いがあるって」
「ぇあ……?」
「誰が、何だっけ?」
熱に浮かされた目で、男の無機質な双眸を眺める。
「ぇ、お、れ……」
「うん、良いよ。ゆっくりで」
「お、れは、」
……………なんだっけ。自分は、なにをあそこまで必死になっていたんだっけ?
何も、思い出せなかった。
霞みがかった思考の向こう。顔面を黒く塗り潰された藍髪の男が、何かを叫んで。
焦点の定まらない視界が、不意に真っ暗に染まる。
圭一の視界は、狩野の手に塞がれていた。「圭一」と、神経毒のような甘い声が、直接耳から吹き込まれては思考を溶かすみたいだった。
「今忘れちゃうようなことなら、きっと大事なことじゃないんだよ」
「ぁ、でも、こんなこと、してる場合じゃ────」
「また悪いことを考えてる?」
低い、声だった。
覚えのある腰遣いに、圭一の肩が強張る。次に開けた視界に映り込んだのは、色が抜け落ちた端正な相貌だった。
「おさらいを、しようねぇ」
目を見開いたまま、くたくたの青年に詰め寄る。
頬を包み込んで、強引に視線を合わせる。黄金色に輝く色彩に、火照った相貌からは血の気が引いて行く。
その頃には、圭一は何もかもをはっきりと思い出していて。それこそ、今まで自分が、この目をした狩野に何をされてきたのかも。
「や、や゛ぁっ、それ、も、いや……」
「嘘つき♡ナカ締まったよ♡♡ねえ♡頭弄られるの、気持ちいいもんねぇ♡♡わかるよ♡」
「あ♡あ♡ぁ、や゛♡だめ、♡だめだ♡か…かの、」
「『狩野』?」
「あ♡ゆ、ゆきと♡♡」
よくできました、とばかりに、青年が甘い笑みを佩く。
こつん♡こつん♡と、甘やかすような抽挿に、燻る恐怖心に反して思考が蕩けていく。
いつも。いつもこうだった。
黄金色の目で、頭の中を覗かれて、
「ねえ、圭一の帰るところはどこ?」
真っ白な手で、こじ開けられて。
「欲しいものはなに?」
それで、それで。その指で、中身をぐちゃぐちゃにされて。
「いちばん大事な物はなぁに?」
こつん♡こつん♡こつん♡♡小刻みにゆすられて、快楽と一緒に刻みつけられる。
「ぁ゛♡♡あ゛♡あ……あ゛♡♡♡」
狩野、狩野、狩野、かのう、かの、狩野、ゆきと、幸人、ゆきと♡♡♡
記憶も、思考も、何もかも。頭の中いっぱいで、全部が目の前の男に塗り潰されていく。
首を横に振っても、目を瞑っても、脳内で明滅する金色から逃れられない。ぴかぴか、ぴかぴかと光っては、こちらが沈んでいく様をただ見下ろしていた。
波のように絶え間なく押し寄せる頭痛に、赤い手形の巻きついた手首で頭を抱える。シーツの上でもがいては、口端から涎を垂らして唸り声を上げて。
「ぁ、ゆきと……」
ここ十数分のうちで、初めて意味のある言葉が紡がれる。
「ゆきと、だけ、要らない、ほかは、なにも、」
途切れ途切れ、絞り出すような喘鳴をヒュウヒュウと漏らす。
乱れた前髪の隙間から覗く目は、どこまでもうつろな色彩をしていた。光の失せ切った黒目は、涙に濡れたまま壁の滲みをただ眺めていて。
憔悴しきった横顔を覆い隠す栗毛を、優しく避けては「あはは」と笑って。
「おれも!かわいいのも欲しいのも、圭一だけ!」
譫言のように、意味のない単語をただ繰り返す唇を、優しく喰んでは、水桃みたいに頬を染めた。
「…………好きどうしだね、圭一♡」
抱き上げられては、ぐるん、と人形みたいに仰け反って。閉じきった扉を、無感情に見つめるその鼻腔から、真っ赤な血がひとすじ流れた。
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