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それは、梅雨の中休みのよく晴れた暑い日のことだった。どこかで気の早い蝉が鳴いていた。
『今日、5限の後話せる? 2人で』
机の上に置いてあったスマホが振動して、そんなメッセージを受信したことを知らせる。スマホのバイブは思っていた以上に教室に響き、教壇に立つ教授が軽くこちらを睨んだ。すみません、と思いつつそっと画面を見る。涼からの文面を見て心臓が跳ねた。
涼が、私と2人で?
胸の高鳴りは決して、恋をしたからではない。あのバランスの良い三角形を崩すのが、私は怖かったのだ。実際はバランスなんて取れていなかったのだけれど。私はまだそれに気づいていなかった。
『いいけど。なんで?』
素早く机の下で打ち込み、メッセージを送る。間髪入れずに既読がついて、返事が返ってきた。
『相談したいことがある。マルにしか相談できない』
それを見て、私は無意識に口角を上げていた。誰かに必要とされることなんて、今までなかったから。『マルにしか』なんてそんな言葉で私は簡単に動いてしまう。
涼が相談場所に指定したのは、人気のない階段だった。冷房もなく蒸し暑い。西向きの窓のせいで夕日が眩しかった。
冷えたカフェオレの缶を手渡され、私は受け取って階段に座った。
「で、相談って何?」
これを聞くのはもう三度目だ。涼はその度に話そうと口を開くが、すぐに困ったように口をつぐんでしまう。話にならない、と私はため息をついてカフェオレを開けた。
一口飲んで、隣に座る涼を見る。彼の首には一筋汗の流れた跡があり、それは浮き出た血管を伝って鎖骨へと繋がっていた。女とは違うその骨格に、なんとなく目を逸らす。
「俺さ、好きなんだ」
意を決したように涼が口を開いた。
「……は?」
思いがけない言葉に、私は目を見開く。まさか相談と称して、告白?
しかしそんな考えはすぐに打ち消された。
「好きなんだ、ユリが。ずっと」
『今日、5限の後話せる? 2人で』
机の上に置いてあったスマホが振動して、そんなメッセージを受信したことを知らせる。スマホのバイブは思っていた以上に教室に響き、教壇に立つ教授が軽くこちらを睨んだ。すみません、と思いつつそっと画面を見る。涼からの文面を見て心臓が跳ねた。
涼が、私と2人で?
胸の高鳴りは決して、恋をしたからではない。あのバランスの良い三角形を崩すのが、私は怖かったのだ。実際はバランスなんて取れていなかったのだけれど。私はまだそれに気づいていなかった。
『いいけど。なんで?』
素早く机の下で打ち込み、メッセージを送る。間髪入れずに既読がついて、返事が返ってきた。
『相談したいことがある。マルにしか相談できない』
それを見て、私は無意識に口角を上げていた。誰かに必要とされることなんて、今までなかったから。『マルにしか』なんてそんな言葉で私は簡単に動いてしまう。
涼が相談場所に指定したのは、人気のない階段だった。冷房もなく蒸し暑い。西向きの窓のせいで夕日が眩しかった。
冷えたカフェオレの缶を手渡され、私は受け取って階段に座った。
「で、相談って何?」
これを聞くのはもう三度目だ。涼はその度に話そうと口を開くが、すぐに困ったように口をつぐんでしまう。話にならない、と私はため息をついてカフェオレを開けた。
一口飲んで、隣に座る涼を見る。彼の首には一筋汗の流れた跡があり、それは浮き出た血管を伝って鎖骨へと繋がっていた。女とは違うその骨格に、なんとなく目を逸らす。
「俺さ、好きなんだ」
意を決したように涼が口を開いた。
「……は?」
思いがけない言葉に、私は目を見開く。まさか相談と称して、告白?
しかしそんな考えはすぐに打ち消された。
「好きなんだ、ユリが。ずっと」
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