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29話 脱出

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街はずれ、魔王の告白があった場所から森へ入った場所に大罪人は現れた。


「……おやおや」
「捕らえよ!!」


ゼルディンは兵士たちによってナナショク王国の地下牢に入れられた。
両手には重い枷がはめられ、牢の部屋には寝るための硬いベッドとトイレしか無く仮に誰かが見ても罪人への刑としては不信がる事は無いものだった。


「お前たち、入り口を見張れ」
「はい!」


本当に信用出来る兵士だけが、牢の周りを固めた。


「やれやれ、あとは勇者に倒されて終わりだと思っていたのですがね」
「……兄さま」

魔王は、罪人に抱き着いた。

「貴方にはもう仲間も嫁もいるでしょう?」
「う、ううっ……!!」

ボロボロと涙が零れ落ちてゆき、冷たい地面にしみ込んでいく。

「泣かない強い子だった筈なんですがね」
「ゼルディンさん、久しぶり」
「王妃様ではありませんか、このような罪人に何の用があるのです?」
「僕の部下になってほしい」

いくらゼルディンでも、意味が分からなかった

「はい?」
「この国を豊かにする為に、ゼルさんの協力は不可欠だ」
「……私が貴方に手を貸すとでも?」
「おねがい『お兄ちゃん』、僕には頼れる人が少なすぎる」

ゼルディンは言葉が急所に刺さった顔をして

「で、何をしてほしいのです?」
「こっちの世界に来て過酷さに驚かされた、道路もないし赤ん坊は産まれてからすぐどんどん死んでいく!『科学』が発達してない世界の方が遙かに命が繋げない!僕らには『科学者』がどうしても必要なんだ……何より僕はもう」
「もう?」
「ゼルさんに、こんなに辛いままでいてほしくない」
「辛く何てありませんよ、やりたい事をやりきりました」
「けれどっ―――」


王妃6024が何かを言いかけたが、慌てた声にかき消された


「何者だお前は!!」
「ここから先は現在立ち入り禁止です!!」

切り合いの金属がぶつかる音と何人もが歩いている足音


そして城内に響き渡る悲鳴は、あまりの異常事態と言えた


「6024っ私の後ろから絶対に離れないで下さい」
「でも『今日はまだ』戦えないでしょ!?」

声のにゼルディンが気付き、自分で呪文を唱えると己に付けられた手錠を砂に変えた。

「にい、さま?」
「まだ言って無かったことがひとつ、ありましたね」


牢の頑丈な扉が熱で赤く染まっていく、溶けだすまで時間の問題だった


「何をするつもりですか!?」
「お兄ちゃん……」
「結婚おめでとうございます、ミナト」

ゼルディンは隠し持っていた小瓶を6024に投げつけ、ミナトが防ぐように動いて


「これはっ!?」
「どうかお元気で」

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