上 下
119 / 152

118話 遊園地ダンジョン 1

しおりを挟む
 朝食の前にレイニーとこれからの打ち合わせをしにきた。

「カドマツ様に行きそびれた場所はございますか?」

 ハクアとの戦いで勝っても負けても俺たちはお別れしなければならない。
 つまり一緒にどこかに行けるチャンスはそろそろ終わる。
 後悔は残さないようにしたい。

「遊園地でもありゃ別だったけどな」
「ありますが?」
「あるの!?」
「グーチョキパーランド、行きますか?」

 遊園地の名称というよりはデパートのゲームコーナーに聞こえる。
 でも、思い出の旅行をするなら遊園地は相応しいだろう。
 修学旅行なんかでも候補としてよく入るよな。

「行きたい!」
「男二人で行くような場所ではないですね……」
「この世界の遊園地だと男だけで行くのは変かな?」

 男だけ、女だけのグループで遊園地はSNSなんかでもよく見かけた。
 ただここは異世界なので何か常識外れなところも多い。
 カップルで行くところだったらどうしよう?

「10人は連れていかないと脱落しますよ」
「俺の知ってる遊園地に脱落って単語は出てこないんだけど!?」
「とりあえず死ななそうな人を集めて行きますか」
「待て、おいレイニー!?」

――

「えっ」
「は?」
「何?」
「どういうことよ?」

 俺は気が付いたら見知らぬ土地でウェルカムと書かれたアーチの前にいた。
 明らかに遊園地の入り口で遠くに建物が見える、地面はアスファルトのような素材。
 レイニーに誘拐されてきた人々がこちらに注目している。

「ごめんなさい」

 俺はもう全力で巻き込まれた人物たちに土下座した。

「どういうこっちゃねん」

 エプロン姿のサカネさんは、右手にしゃもじを持っている。 
 何をしていたかここまで一目で分かるのも珍しい。
 レイニーを抱えて揺さぶりながら叫ぶ。

「朝ごはんの準備中に呼び出しちゃ駄目でしょ帰してきなさい!!」
「無理です」
「サカネさん困るだろ!?」
「できないんです」
「え?」
「連れてきてから思い出しました。ここのダンジョンはアトラクションを3つクリアするまで出られません」

 他にも人選は問題があった。
 ガゴリグさんはまだ分かるが、同時にホンイツまで連れてきちゃ駄目だろ。
 手も足も喰われてるし顔もかけていてグロテスク。喋れるような状態ではない。
 自業自得とは言え、見ていて痛々しくて目をそらした。

「他はいいが、何でコイツがいるんだよ!?」
「―――」
「【スキル:治療 ヒール】」

 サカネさんが治療したのであっという間に人間の形へ戻った。
 復活させてから知り合いだったらしくホンイツの顔を見て驚いている。
 起き上がって服の埃を手ではらうホンイツ。

「痛かった」
「自業自得ですよ」
「そうだね……で、ここ何処?」
「遊園地です」

 ティラノがいたのでテレポーターで帰れないかと質問。
 どうやら既にダンジョンには入ってしまっている、だから出られない。
 諦めて全員で円になって座った。

「とりあえず自己紹介しないと、シャックから頼む」
「僕はシャック、【スキル:ヒキヨセ】の使い手で元は盗賊。普段は教会で孤児の面倒をみてる」
「あたしはこのシャックって人の妹で名前はエレナ!【スキル:でんき】が使えるしこう見えてけっこうなだからね!」
「サカネや! 主婦で医者や! 【スキル:治療】は元々ウチのスキルやで!」
「私はティラノ、で【スキル:テレポーター】が使えるわ」
「ウルフだ……見ての通り【スキル:犬】鼻がいい」

 ここまでは本物のレイニーと数百年前に組んでたパーティー。

「私はパンジーと言います……【スキル:ツタ】で植物のツタを伸ばせます。炎が弱点なのと、あまり強くはないので期待しないでくださいね」

 ジーンズで大火傷をしていたので心配していたが、一応は無事なようだ。
 自身がなさそうに目を伏せて肩を落として座っている。
 強い異世界転生者に囲まれれば比べてしまうのは分からなくもない。

 で、知らない男性が座っているんだが?

「……初めましてカドマツ様、俺はボルトシメにて救助隊をしております隊長の〈ケロリンパ〉です。」
「ん?スキルは?」
「異世界転生者でも子孫でもないのでスキルなどは持っておりません――ティラノ様とは長い付き合いですね」
「他に知ってる人はいない感じ?」
「ボルトシメの危機を救って下さったカドマツ殿とレイニー殿には感謝しております」

 ボルトシメは雪の降る地方でポチがいたグレイスノウとは隣国だ。
 大規模な雪崩のせいで死傷者が出た時に手をかした。
 雪を炎でとかせば水は作れるが、今回は雪崩が家を押しつぶし汚い雪しかなかった。
 だからレイニーは連れていかれたのだと後から聞いた。

 で、問題の二人だ。ガゴリグとホンイツが自己紹介した。

「俺は海賊の船長をしているガゴリグ、【スキル:パワー】で力だけはある」
「……」
「次お前だろニカナの国王」
「僕はいいよ、寝る」
「……殴るぞまじで」
「どうぞ?」

 本当に拳骨したがホンイツには傷がついてない。
 手加減してはいなさそうで地面は叩き割られたが、まだホンイツは寝ていた。
 頑丈な身体なようだが、ワンズはどうやって食べているのだろうか。

「どなたか存じませんが、疲れて寝ているようですし……そのままでいいのでは!?」

 この扱いからしてパンジーはホンイツに捕まっていなかったようだ。
 そんなパンジーから見ればホンイツもここへ連れてこられた同じ被害者。
 やらかしたことを知らなければ俺もガゴリグさんの拳骨に驚いていただろう。
 頭を殴ったということはコアを狙ってない、だから殺すつもりはなさそうだ。

「パンジーさんは優しいですね……」

 レイニーはホンイツが庇われてちょっと嫌そう。

「実際のところ暴れられるとかよりは楽だしこのまま地面に寝かせておこう」
「ダンジョンの中に1人で置いていくのですか!?」
「あ、そうだ丁度いいの持ってる――【スキルカード:ドール】」

 ボワッ!!
 使用したドールのスキルカードがあっという間に燃えた。
 熱くて思わず手放したが、残ったのは黒い炭だけ。

「ここでスキルカードを使うと燃えますよ」
「説明ありがとう、先に言え」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

土下座で女神に頼まれて仕方なく転生してみた。

モンド
ファンタジー
ドジな女神が失敗を繰り返し、管理している世界がえらい事になって困っていた。 ここに来て女神は「ここまできたら最後の手段を使うしかないわ。」と言いながら、あるカードを切った。  そう、困ったら「日本人の異世界転生」と言うのが先輩女神から聞いていた、最後の手段なのだ。 しかし、どんな日本人を転生させれば良いかわからない女神は、クラスごと転生を先ず考えたが。 上司である神に許可をもらえなかった。 異世界転生は、上司である神の許可がなければ使えない手段なのだ。 そこで慌てた女神は、過去の転生記録を調べて自分の世界の環境が似ている世界の事案を探した。 「有ったこれだわ!・・何々・「引きこもりかオタクが狙い目」と言うことは・・30歳代か・・それから、・・「純粋な男か免疫のない男」・・どういうのかわからなくなったわ。」 と呟きながら最後は、 「フィーリングよね、やっぱり。」 と言い切ってカードを切ってしまった、上司の許可を得ずに。 強いのか弱いのかよく分からないその男は、女神も知らない過去があった。 そんな女神に呼ばれた男が、異世界で起こす珍道中。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~

冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。  俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。 そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・ 「俺、死んでるじゃん・・・」 目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。 新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。  元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

せっかく異世界に転生できたんだから、急いで生きる必要なんてないよね?ー明日も俺はスローなライフを謳歌したいー

ジミー凌我
ファンタジー
 日夜仕事に追われ続ける日常を毎日毎日繰り返していた。  仕事仕事の毎日、明日も明後日も仕事を積みたくないと生き急いでいた。  そんな俺はいつしか過労で倒れてしまった。  そのまま死んだ俺は、異世界に転生していた。  忙しすぎてうわさでしか聞いたことがないが、これが異世界転生というものなのだろう。  生き急いで死んでしまったんだ。俺はこの世界ではゆっくりと生きていきたいと思った。  ただ、この世界にはモンスターも魔王もいるみたい。 この世界で最初に出会ったクレハという女の子は、細かいことは気にしない自由奔放な可愛らしい子で、俺を助けてくれた。 冒険者としてゆったり生計を立てていこうと思ったら、以外と儲かる仕事だったからこれは楽な人生が始まると思った矢先。 なぜか2日目にして魔王軍の侵略に遭遇し…。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

処理中です...