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110話 冷たい顔

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俺は今、カミノ城の会議室でウルフに顔を見せている。


 今まで見つけたスキルたちは不思議ではあったが納得はした。
 【スキル:かき氷】は何度も使ったし【スキル:ライト】は灯りとしてとても便利。【スキル:偽果実 メロンパンが安い店が分かる】メロンパンが一番安いのはドリ。

「100歩ほど譲ってメロンパンが安い店はパンが大好きな人なら選ぶかもしれない」
「うんうん」
「顔が便器になって得するのはどういう人間なんだ!?」

 魔物には、どういう理屈で生きているのか分からないのがいる。
 だからって顔が便器になった奴はさすがに出会わなかった。
 スキルが暴走して俺の顔が便器になってしまった。
 

「俺にも分からん」
「お腹が空いたしごはん食べたい……いけるかな?」

 パンを食べようとしたら食べることはできた。
 でも、トイレにパンを流しているようで最悪な絵面である。
 良い子の皆は真似しないでね。

「そういえばレイニーは?」
「ニカナの王宮」
「ホンイツと遊びたくて出かけたってことか?」
「異世界転生者と彼女――っていうのはまずいか、ワンズがパーティーを開くからそれに出席しろってことで行ってる」
「へぇ」
「俺の顔が便器になったので代わりに王子を行かせますってちゃんと言ったぞ」

すごい顔で「は?」って言われたけど真実なのだからしょうがない。


「……スキルを解除するスキルカードは使ったのか?」
「え?」
「ちょっと待ってろ」

 ウルフは荷物から【スキルカード:真実】を俺に使う。
 すると便器が剥がれ落ちて俺の顔が戻った。
 そういえば、こんなカードもあったな。

「珍しいカードだよな」
「そうだな、流通はしていないだろう」
「……危険だから流通してないって感じはしないし、カードを作った人が死んだとか?」
「このオーパーツカード10枚しか無かったからなぁ」
「ここにきて急に新しい用語でる?」
「簡単に言えば遺跡とかになぜか最初からカードとして宝箱に入っていたカード」
「へー」
「……ごほっ」

 ウルフが咳? 初めてみたぞ。

「大丈夫か?」
「今朝から少し風邪っぽくてな、熱も出てないし低いぐらいだったから平気だ」
「いや駄目、俺は今からウルフを即刻病院におくらなきゃならん」

サカネの病院へウルフをつれてきた。
 俺は元気だと言い張るがとりあえずサカネさんが問題ないと告げればそれでいいからとなだめて、国王命令でひっぱってきたのだ。

「次の患者さーん……え?」
「よ、よう」
「ウルフやんけ、カドマツもおるしどないしたん?」
「咳が出るし体温が『低い』らしい、慌てて連れてきた」
「はぁ!? 今日の暑さで体温が低くなるわけないやろ……ッ!!」

 異世界には異世界の常識や歴史がある。
 何人もの異世界転生者の自伝や語り継いでくれた歴史の本を読んで勉強した。
 日本だって医学は『社会』で出る、ペストとか。

「ドリ病……の症状かな、と」

 今から500年ほど前に流行した病気。
 どういう経緯で伝染するかも分からず多くの者が命を落とした。
 体温が下がっていき、どんどん免疫力が無くなり風邪に耐えきれなくなり死ぬ。

「あ、あんな病気500年は聞いてねぇぞ……!?」
「どう思う?」
「だとすれば、風呂やな」
「風呂ぉ!?」
「ドリ病なら感染せぇへん、それより風呂や!!」

 銭湯でウルフと―――サカネさんと入りながら状況を聞いた。

「男湯に入らないででください」
「言ってる場合ちゃうねん!! ほんまにドリ病やったら聞くことあんねん!!」
「お、おう?俺は元気なんだが……」
「ここ最近、珍しいもん食べへんかったか!?」
「昨日の朝なら城下町でジーンズの名産品を喰ったが、別にその日はなんとも……」
「やっぱりか!!」

 城下町で売ってるような食い物が原因って、かなりまずくね?
 ポチのおかげでスピーカーがあり伝達がスムーズな国でよかった。
 急いで声をはって国民に伝える。


「国王より継ぐ!! 普段より体温が低い人間は【毒】を食べた恐れがある!! 治療するので新しいカミノ城へ運べ!! メタモルフォーゼを許可!!」

 城を新しくもう一つ建てていたのだが、一階には巨大な浴場がある。
 空を飛べる魔物たちが次々と城に病人を乗せてきた。
 人数からいっておよそ50人程度。

「レイニー呼び戻しや!! 急ぎ!!」
「分かった」

レイニーを【スキルカード:フレンド】で呼び戻し、炎系の魔物と協力してプールをお湯にして何とか一命をとりとめさせて病気のほうは一件落着。

「あとは犯人の裁判だな」
「……毒をまいたのですし死刑でいいのでは?」
「レイニー……毒をまいたのがウルフかもしれなくてもそれ、言えるか?」

 レイニーの目が点になった。
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